その22 ゴブリンの巣を探検しよう

「うおっほーい、やっと着いたか」


 しっかしかなり長かった気がするな。

 「もしかしてこれゴールないんじゃない?」って思ったりもしたけど、なんやかんやで洞窟の外に出れてよかったぜ。

 後ろを振り返ると、そこには俺が出てきた洞窟のほかにも沢山の小さめの穴が開いていた。

 おそらくそれぞれの場所に繋がっているのだろうが、それにしてもこんなもんワザワザ作ってるとは。 

 そして……よし、周囲にゴブリンはいないみたいだ。

 ただ灯があるのを見るとまたここに来るだろうし、その時に会わないようにしないとだな。

 あんな雑魚一々相手にしてる暇はねえ。


 さーってと、これからどこに行けばいいのかが問題なわけだが……ってなんだあの穴?

 俺が通った穴とは明らかに違い、縦横1.5mほどの大きさがありそうな穴があった。

 それ以外にほかに目がつく所はないし、とりあえずそのまま進んでみる――


「ギギッ! ギギッ!」

「!?」


ササッ


「ギギギッ! ギーッ!」

「ギギッ! ギーギギギッ!」

「ギギッ! ギギッ!」


ゾロゾロゾロ


 あっぶねェェェェ!

 言ったそばから見つかるところだったわ!

 見られる前に天井に張り付いたわけだが……ど、どうやらバレてないっぽいな。

 それにしてもこのゴブリンどもは武器もって洞窟入って何をしようとしているんだ? それになんかめっちゃ数多いな……30、40いや、70匹くらいはいるんじゃね? 

 そんな大人数でどこに行こうとして……あっ、もじかしてあのパーティーか。

 ……まぁすぐに戻るから頑張ってね!

 レフランは大丈夫でしょ、だってあいつ運Sだもん。


「ギギッ!」

「……」


ゾロゾロゾロ


「ギギーッ! ギギーッ!」

「……」


ゾロゾロゾロ


「ギギッギー!」

「……」


 長えよどんだけいるんだよこいつらゴキブリかなんかか!?

 ゾロゾロゾロキーキーキーうっとおしいな……もういいやチート使お。

 


▽system

 魔法見えない体/ヒドゥンボディ Lv.MAX 取得



▽system

 魔法見えない体/ヒドゥンボディ 発動



 これでよし。

 後は忍び足と一緒に使って行こう。


「……」

「ギーッ!」


ブンブンブン


 おお、ゴブリンの前で腕振り回しても全然バレてねえ。

 めっちゃ便利だなこれ、殆どの敵mobスルーできるじゃん。

 この調子でさっさと奥の方まで行ってみるか。


 大きな穴を潜り抜けると、そこはかなり大きめの大人100人が入れそうなドームのような場所と繋がっていた。

 しっかしなんだこの場所……いまだ見たことないほどかなり豪華だな。

 天井からはキラキラ光るシャンデリア、壁際には岩を削って作られたかのような像、赤いじゅうたんに、ただの照明にしてはやけに光る宝石などで装飾が施されているものなど俺でもパッと見で分かる場違い感がハンパないものばっかり置かれている。

 もしかしてどこからか取ってきたものなのか……?

 とりあえず目星でも振ってみるか。



△system

 魔法見えない体/ヒドゥンボディ発動中はコマンドを選択できません



 えっなにそれそんなのあるの!?

 ゲームでこんな使用見たことあるけど今更感ハンパないわ!!

 まあしゃーない、一旦魔法を解除するか。



▽system

 魔法見えない体/ヒドゥンボディ 解除



「オイ貴様、ココデ何ヲヤッテイル?」

「えっ」


 後ろから声が聞こえたので振り返ってみると、そこにはゴブリンが立っていた……が、見た目からして普通のゴブリンではない。

 やけにでかいマントを羽織り、首や手首に宝石を巻き、右手にはワイングラスを持っていた。

 なんか金持ちの悪いイメージを凝縮したような奴だな。

 ……あっ、今更だけど俺見つかってんじゃん!!

 いや、よくよく考えたらまあ殺すからいいや。


「『エッ』ジャナイ、カッパー級ガドウヤッテココニ辿リ着イタカヲ聞イテイルンダ」

「えぇっと、その……そこの穴通ってきたんだよ」

「バカナ、アソコニハ人間ニシカ効カナイ無見無臭ノ毒ガスヲマイテイルンダゾ」


 マジかよそんなのあったのか。

 全力で人間殺しに来てんな。


「早ク言エ、俺ハオ前カラ聞キ出シタ情報デココヲヨリ強固ナモノニスル。ソシテ俺達ダケノ楽園ヲ作リタイ。モシ言エバオ前ノ命ダケハ助ケテヤルゾ」

「なーんで敵に情報言わねーといけねーんだ。お前頭おかしいんじゃないの?」

「……ホウ、オ前ハ俺カラ慈悲ヲ与エラレテイルトイウコトヲ理解シテナイミタイダナ」


 そう言うとゴブリンはワインが入ったグラスを宙へと投げる。

 だが、そのグラスは地面に落ちることも中身をぶち撒けることもなく、空中で青白い光を放ちながらとどまった。

 おおうすげえな……もしかして糸かなんかでぶら下げてんのか?


「コレハ【新人類ノ子供達No.10】デアル俺ノ能力、アイツハコレヲ『サイコキネシス』トヨンデイタ」


 さいこきね……しす?

 あーどっかで聞いたことあると思ったら斉木楠雄のΨ難でだわ。


「ココ最近使ッテナカッタカラナァ……オレ慈悲ヲ受ケ取ラナイオ前デ練習サセテモラオウ」

「お、おうっ……てうおっ!」

 

 おぉぉぉ! なんか体が宙に浮いてる!

 俺の語彙力のなさがわかるかもしれないけどすげー楽し——


クイッ


ドゴォォォォオオオン!!


パラパラパラ


「ドウヤラ腕ハ衰エテイナイヨウダナ。サテ、カッパー級ノ死体ト岩ノ破片ヲカタヅケサセルトスルカ。ソレニ後デアイツラデ兵士ヲ増ヤサナイトイケナイカラナ」

「いやーすごいな今の。ジェットコースターの急降下の尻が浮いてる感覚がずっと続く感じというか、なんというか新体験だったわ」

「……ハ?」

「えっ」

「ナニッテ……ナンデオ前生キテルンダ!!」

「いやそれはお前が俺より弱いからでしょ——」


ヒュッンッ!!


 えっちょ何々!?

 俺もしかして洞窟の壁に叩きつけられて——


ドガガガガッガガガッ!!


ヒュンッ


ズドォォォォン!!


ブウォン


バキャッ!!


シュゥゥゥゥ……


「……ハッ、ココマデヤレバ骨ガノコラナイホド削レテ——」

「あーくっそ……服が汚れるだろ」

「……ナッ!?」


 えっなにその顔は。

 ちょっと、マジで俺置いて話し進めようとするのやめロッテ!

 お前が驚く理由を俺はまだ理解できてねーんだよ!


「バカナ……バカナバカナバカナ!! ナゼタカガ人間ガアレヲ喰ラッテ生キテ……オ前モシカシテアダマンタイト級カ!?」

「いや違うけ——」

「ドウヤッテ俺ガココニ潜ンデイルト知ッタノカハシラナイガ……コレハネガッテモナイ機会ダ。ナンセ一度モ試シタコトガナカッタ俺ノ本気ヲ存分ニダセルンダカラナァァァ!!」


 駄目だ完全に自分の世界に入ってるわ。

 あーもうめんどくせ。

 

「グォォォ……フンッ!!」


 えっ、なにその半透明な元気玉みたいなやつ。


「コレハ俺ノ【サイコキネシス】ヲ球状ニシテ固メタモノダ! 俺ノ意思デ止メヨウトシナイ限リ、触レタ物ヲ砕イテハ潰シ永遠ニ進ミ続ケル‼ サア鉄壁ノ戦車ヨ、今コソココデ前ヘト進撃スル時、ソシテ過去ノ自信ヲモ叩キ潰ス時!! グチャグチャニ潰サレテ死——」

「セリフ長いわ」


バゴォォォォォンッ!!


ドゴシャァァァァァァァ!!


パラパラパラ……


ゴゴゴゴ……


 やっべー……威力強すぎて風圧が暴れまくっちゃったな。

 色んな所の壁がミサイルが当たったかのように吹き飛んでるが……まあいいか。


「……さて、問題は行方不明者がどこにいるかだな」

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