その21 地雷パーティーという名通り 前編
~パーティー一行~
真っ暗な洞窟を松明一本を頼りに進んでいく。
どこも見えない、ふどこに続くかもわからない洞窟をパーティー一行は歩いているわけだが、レフランを除いた他3人はその状況に対し何の恐怖も抱いてはいなかった。
「ねえ、あとどれくらいだと思う?」
「わからない、どこまで行っても明かりが見えないからな。でもまあ道を真っすぐに歩いていけば絶対に巣に辿り着けるはずだ!」
「少し忙いでもいいんじゃないかな?」
「私も賛成、駆け足で行きまし——」
「急ぐのはは危険だと思います」
突然のレフランの発言に3人は視線を向ける。
彼女が自ら意見を言うのは予想外だったからだ。
「ここは洞窟で音が響きます、そんな中走っていくのはゴブリンに場所を教えているのと同じです。それに私たちはこの洞窟がどういう構造なのかよくわかりません、その途中に重要な何かがあったとしたら見逃してしまうことになります」
「大丈夫大丈夫!ゴブリンに場所がばれた所で弱いモンスターに変わりはねーよ」
「そ、そんな……でも……」
レフランは心配だった。
このパーティーの無茶苦茶さ、そして行き当たりばったりな計画に。
だからこそどうにかしようと提案した、どうやらそれは受け入れてもらえそうにもない。
だから彼女は「どうすればみんな納得してくれるんだろう」と考え始めた。
その時だった。
突然暗闇の中からゴブリンが騎士に向かって飛び掛かった。
「ギギッ!」
「うわっ!」
騎士は突然飛びついてきた一匹のゴブリンに驚き、持っていた松明でそれを殴り落とす。
だがその間にもまた別のもう一体のゴブリンが追撃を仕掛けていた。
「おらっ!」
ボッ
それも問題なく叩き落すが、やはり松明ではゴブリンにあまりダメージを与えられず、火傷はしているもののゆっくりと起き上がる。
「くそっ! 早く剣に持ち替えないと——」
ボコボコッ
騎士が松明を地面に投げ捨て、剣に持ち替えようとしたその時だった。
自分の後ろ……その上、天井らへんから土が崩れ落ちるような音が2回聞こえた。
格闘家も魔道士もレフランもハッとして上を見た。
するとそこには、穴からにやけ顔のゴブリンがこちらを見下しているかのように覗いていたのだ。
「なっ……!!」
「「ギィィィィッ!!」」
攻撃の合図かはわからないがどこかのゴブリンがそう叫んだ瞬間、天井から数匹の武器を持ったゴブリンが落ちてくる。
ここにいる誰も、まさか天井から降り注いでくるなんて思いもしなかった
そしてゴブリンの方がさらに一枚上手だった。
穴があった場所は、パーティーが二手に分かれるように丁度列のど真ん中だ。
「なっ、なんでそんな所から……!!」
「レフランさん! 一旦下がろう!」
魔道士はゴブリンから距離を取るためにレフランに指示を出した。
たしかにこの距離は魔道士にとっては大分マズい、それに真面な防具もつけていないから短剣で刺されでもしたら致命傷だ。
けど、そこからだけじゃない。
「ギッギギッ!」
「こ、こちらからもゴブリンが!」
今まで通ってきた道からゴブリン数匹の声がこだまして聞こえた。
足音が沢山鳴っているのを見るとかなりの量がいそうだが、レフランも魔道士も正確な数も、場所も全く分からない。
暗すぎて何も見えないのだ。
「あれ……ご主人様……?」
サハタダがいない。
レフランは信じがたい事実に心を揺らされながらも真っ暗な闇を必死に覗く。
だが、鳥のマスクは一向に見える気配はない。
「あっ……ああっあああ」
「落ち着いてください! こっちは……こっちは私がなんとかします!」
レフランはサハタダから受け取った短剣を取り出した。
短刀など握ったことはないし、モンスター相手に戦ったこともない、けどやらなければならない。
……もしかして捨てられた?
ご主人様はなんで私を置いていったんだろう。
私は何か悪いことでもしただろうか、何か嫌われるようなことをしただろうか、本当は私のことが嫌いだったのだろうか、汚いと思っていたのだろうか。
いえ、もしかしたら気がつかなかっただけでとっくにゴブリンに——
けど、だからといってレフランは諦めはしない。
あの日から願っていた微かな光が、視界いっぱいに広がったことを思い出していた。
「ハアッ……ハアッ……ッ! ファイアーボール!!」
ボシュゥ!
「ギィィィッ!」
「ファイアーアロー!」
ヒュンッ!
「ギィィッ! ギッ……」
魔道士が放った魔法はどちらも命中。
当たったゴブリンは体を燃やしながら、または頭を打ちぬかれて倒れていく。
「や、やった! この調子で……」
自信が出てきたのかちょっと嬉しそうにする魔道士。
「私は死なない、まだいける」と確信して次の標的を見据える。
魔道士から見て一番近い盾を持ったゴブリン、あいつにしようと狙いを定めた。
盾を持っているとしても所詮は木、焼き切って貫こうとでも考えているんだろう。
「ファイアーアローッ!!」
赤い矢は線を描くように真っすぐに飛び、そのままゴブリンの持っている盾へと命中する。
濁った色の木の盾は徐々に焦がしていく……と、思っていたその時。
パキィィィィィンッ
「えっ——」
何かが砕けるような音と同時に、放ったはずの矢が方向を変えて魔導士の横腹に突き刺さった。
それと同時に焦げ臭い臭いが洞窟内に広がっていく。
「……ああっあぁぁぁあッ!! 痛いッ痛いッ痛いッ!!」
ジュゥゥウ
放ったはずの矢が跳ね返ってきたという現実を見ていたレフランは立ち止まってしまう。
「……ッ! ううッ……あぁぁぁああ」
何が起こったのかわからない、そしてあの人を助けなければならない。
だが押し寄せてくるゴブリン相手にどうすることもできず、ただそれを見つめることしかできなかった。
「先に全員倒さないと」と考え目の前のゴブリン目掛けて足を強く踏み出した、その時。
ズボッ
「へっ」
レフランの足元が突然崩れ落ち、人一人通れる穴が開く。
そこから彼女はどうすることもできず、ただ重力に引っ張られるだけだ。
スポン
「きゃぁぁぁぁぁあ!」
レフランは穴に落ちていった。
「フンッ!」
グシャッ!!
「ギギッ!!」
「フンッ!!」
ベギィッ!!
「ギギッギギッ!」
「はぁ、はぁ……こいつら一体あと何匹いるのよ!」
穴という穴から止まることなく出続けるゴブリン。
いくら潰しても、いくら蹴り飛ばしても、次から次へと襲いかかってくる。
「……くっ!」
バキッ!!
「くっ、クソッ!」
ブンッ
ザシュン!
「ギギッ!」
「うォォォ!!」
バキイッ!
「ギィィィ!」
ザクッ
「ぐがアッ!」
まともに振り回すことができずに体制を崩し、ゴブリンの攻撃に反応できなかった騎士の足に、短刀が根元までグッサリと刺さる。
「こ、このッ……!!」
慌てて足に捕まったゴブリンを振り飛ばし、短刀を抜こうと足に力を入れるが、そんなことをしている間にもゴリンは近づいていき、それを隙だと認識して飛び掛かる。
「クッソォォォおおお!!」
騎士は死を覚悟した。
だけど、それでも、できるだけ多くのゴブリンを殺してやると。
強い殺意に身を任せ、ロングソードを強く握り、宙を飛ぶゴブリンに向けて振りかざそうとした。
ザシュッ
「……えっ」
「うッ……うげエッ!!」
ドサッ
「あっ」
振りかざしたロングソードは赤色に染まる。
武闘家の腹に突き刺さったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます