その18 ゴブリンゴブリン&ゴブリン
ゴブリンだらけのせいの理由がディーゴンが死んだから? どういう意味だ?
「なああトムサ、ディーゴンって誰なんだ?」
「昨日ランタンさんに倒されたオークのことです」
……ん?
「……な、なんでそいつがゴブリンのクエストと関係あるんですかねえ」
「ディーゴンは各地を歩き回りながらゴブリンをしもべとして集めていたんです。ですがディーゴンさんがやられてしまったせいで主がいなくなり、その結果分散して様々な場所で悪事を働いているんですよね」
「へ、へぇ……そうなんだぁ」
「でも変なんですよ、ディーゴンさんがやられても兄弟と言われている『大三山』がいます。なのにここまで各地に広がって行動するのはとてもおかしいですし、まず彼らの目撃情報もありませんからね」
「だい……さんざん……」
……それ俺が初日にやった奴らじゃね?
「……ということです。なのでクエストボードはしばらくゴブリンで埋まっちゃいますね~」
「そうかぁ」
これ自分で自分の首絞めてんじゃねーかぁぁぁああ!!
マジかよあの時あった三兄弟みたいな奴らがディーゴンの仲間だったとか知らねーよ!
クソッ! 殺さなければこんな色んな場所で被害はなかったし、クエストボードがゴブリンオンリーとかなかっただろ!
つーかなんで俺に出くわしたんだっ……! 悪すぎるだろ……! 運がっ……!
「なあなあ、君もしかして今一人かい?」
「ん?」
ふとクエストボードの方を見るとレフランが鎧を身に着けた剣士みたいな奴に声を掛けられていた。
その剣士の髪はオレンジ色で、横から見ても分かるぐらいにはイケメンだ。
「えっ、えっと……」
「もしよければ職業を教えてほしいんだけど!」
「そいつの職業は『見習い医者』だぜ」
レフラン困ってるみたいだし会話に無理やり入り込んでみるか。
「ご主人様!」
「あんたは誰だ?」
「俺はここのギルドに所属したばっかりであるカッパー級のサハタダ・イネプト。んでこいつは俺のパーティー仲間のレフランだ」
「レフランさんのご主人ー……なあ、もしかしてサハタダさんって医者か?」
「えっ……うんそうだけ……」
「なら話が早い! 俺達とパーティーを組まないか!?」
えっなにそれ唐突すぎてこわい。
「ねえどうしたのよ、急に走り出したりなんかして」
男の後ろから声が聞こえたので見てみると、軽装で動きやすそうな服装の黒髪女と、杖を持ったピンク色の髪の女が二人一緒に歩いてきた。
「なあ聞いてくれよ、この人達職業が医者らしいぞ!」
「じゃあポーション作ったりとかできるの⁉」
「えっ……あっ、ま、まあ……」
多分作れるでしょ(適当
「いやさ、実は俺のパーティー味方を回復できる職業がないんだよね。それでクエストを受けようとしてたけど困ってたんだよ」
あーつまりヒーラーがいないってわけね。
まだカッパー級の始めだからどうでもよくね? ってなるかもしれないが、この世界では死んだら復活できないだろうからな。
石橋を叩いて渡る精神は良いと思う。
「今の君のパーティーは何の職業持ちがいるんだ?」
「俺は『騎士』で、紫髪の女の子が『武闘家』、その隣の女の子が『魔道士』」
「魔道士の子が使える魔法は?」
「《ファイアーボール》と《ファイアーアロー》だよ」
バフもまだかけれない魔法使いか。
まあしゃーない、まだカッパー級の初心者だからなぁ……。
「頼む! 君たちがいれば俺達はとても心強いんだ!」
頭を深々と下げるイケメンには悪いが……う~ん、どうしよっかね~。
正直、演技や力のをまだ上手くコントロールできていない状態であんまよく知らない奴らと組んだ結果、俺の実力が認知されてそこから広まっちゃいましたとか笑えないからなぁ。
でも今のうちから人脈作っとけば楽っちゃ楽だし……いや、けどまあいいか。
よくよく考えるとカッパー級の受けるクエストなんざたかが知れてる難易度だろうし、そんな状況で実力なんて出すこともないだろうしな。
「……レフラン、お前は問題ないのか?」
「私はご主人様と一緒にいたいです」
「じゃあ決まりだな、俺達もそのクエスト手伝ってやるよ」
「本当!? サンキュー、よろしくな!」
「回復は任せたわよ」
「よろしくね~!」
なんかめっちゃ個性あふれるパーティーだな。
こいつら将来世界救ったりするんじゃね?
「で、早速どんなクエストを受けるわけ?」
「医者がパーティーにいるから多少ランクが上のクエストを取ってもい——」
ジリリリリッ‼
「えっ、何この音」
「緊急クエストよ、知らないの?」
……ん? あれはトムサか。
クエストボードに新しいクエストを貼っているのか?
ザワザワ
それになんか人が集まってきたし……。
「あー……またか……」
「今日はこればっかだなぁ」
「他クエスト行くか……」
って思ったら解散しはじめたぞ。
緊急クエストって……モンハンとかpso2とかである不定期のクエストのことかね?
この世界でもそんな制度みたいなのがあるんだな。
「……なあ! みんなこれ受けようぜ!」
男はそう言いうと紙を掴みながらパーティー全員によく見える位置に突き出した。
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~~緊急クエスト~~
難易度:牙獣
内容:ゴブリン×複数対の討伐 & 行方不明者の捜索
依頼人:ギルド
報酬:討伐数×200ロット & 行方不明者×10000ロット
備考:ある地区で行方不明者がゴブリンに連れ去られたという情報が多く入り、そこから逆探知を試みた結果大まかな地区を特定しました。そこでゴブリンをできるだけ多く討伐&行方不明者を救出してください。なお、危険だと判断した場合はクエストを中断して帰還してください。
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「へー、討伐した分だけもらえるならお得じゃない!」
「これいいね、私もこれでいいよ」
「じゃあこれで決まりで——」
「おいまてまてまて、お前らカッパー級のくせにゴブリン倒せんの?」
「「「えっ……」」」
……えっ、なんでこいつら止まってんの?
なんで俺のことめっちゃ見てくんの?
「……ははっ、あはははっは! 倒せるに決まってるじゃないか!」
「ゴブリンは子供でも倒せる相手だぞ。弱気になってどうする」
「怖いのなら私の後ろにすぐ隠れて。《ファイアーアロー》で守ってあげる!」
「そ……そうかぁ! まあそうだよな!」
いや本当に大丈夫かよ。
というのもこの三人の装備を見ていると、とてもモンスターを退治しにいくものではないような気がする。
剣士は鉄のプレートで守られてはいるが胴体の前だけでこのパーティーでの盾役であるにもかかわらず盾を持っていない、武闘家は動きやすさを意識しているせいか騎士よりも身軽、魔道士なんかどう見てもただのオシャレな服だ。
……なあ、これフラグにならないよな?
なんかアニメ見てるときに露骨な死亡フラグ見て「あっ……」ってなった時の気分と一緒なんだけど。
「じゃあお姉さん、このクエストお願いしま……あれ? お姉さんは?」
剣士は周囲を見渡すように首を振っている。
どうやらトムサが受付にいないようだ。
「しょうがないな……じゃあ受けてることにするか」
「えっ」
「ちょっと、それはまずいんじゃないかしら?」
「そうだよ! ちゃんと受付のお姉さんにやってもらわないと……」
「大丈夫大丈夫! 所詮ゴブリンが相手だから問題ないし、それにこうしている間にも連れ去られた人達が苦しんでいるんだ! それにそもそもここにいないお姉さんが悪いんだって!」
「はぁ……まあでも、確かにそうね」
「しょうがないね……今回だけだよ?」
ちょっ、おま受付の何漁ってんの?
いや、そんな「目当ての物見つけた」みたいな嬉しそうな顔しなくていいから。
えっそれ何で書いてんのペン?
「サハタダさんとレフランさんの番号も見せてくれない?」
「あっはい……どうぞ」
「えっーと、393099180と……うん、これでよし」
そう言いながら受付を色々と弄っていると、突然パーティー全員のタグが青く光りだした。
「これでクエスト承認完了っできたぞー!」
「えぇ……なんでそんなことできんだよ」
「あの子の親が受付嬢やってるみたいでさ、それを見て覚えたらしいわよ」
いやそういう意味じゃねーよ! なんでそんな勝手に人の机漁れるのか神経のことについて聞いてんだよ‼
……これやばくない?
「よっしゃ! 連れ去られた人たちを助けに行くぞおぉぉぉ!」
「「おー!」」
「お、おー!」
「……」
……これやばくない?
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