その14 冒険者狩りのディーゴン
~ランタン視点~
「ふッ!」
「オンナ! オンゲウェブッ!」
「コロス! コロス! コロシテオずべらっ!」
次は後ろから。
ドスッ
「グエぇぇぇぇえ!」
「次は……?」
足が動かない?
もしかして―――
「グヘヘヘ……ツカマエダ―――」
ベシャッ
「私に触るな」
体が小さいわりに体液がかなり多いな。
「イケッ! イケッ! ゼンインデカコメ!」
「ハヤイケドオナジ! マエトオナジ!」
「……へえ、私が戦っている隙を狙って一瞬で囲むなんて、それなりの知識はあるようだね」
「モウムリ! ニゲルノアキラメロ!」
「モウムリ! アキラメロ! アキラメロ!」
……コブリンの数は中小全部合わせて50匹ってところか。
「オマエ! キレイ! ヤリタイ!」
「オカシタイ! オカシタイ! ダカラオカス!」
「褒めてくれてありがとう……けど、相手はできないな」
シュッ
「……アレ?」
「カラダガ? ウゴカナイ? ドウシテ?」
「ナニカオカシイ? ケド、ナニモ……お? ぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼」
ぱしゅん
バラバラバラ
「……はぁっ……げほっ。これでもダマスカス級のはしくれ……君達ぐらいなら一瞬だ」
周りに集まってくれたおかげで時間をかけずにまとめて倒すことができてよかった。
それにしてもこんなに大量のゴブリンを連れてくるなんて……自分勝手で自己中心的なこいつらをまとめれるということは親玉はそれを圧倒できるかなりの強さがあるはずだ。
それこそ、私を一瞬で潰せるような相手が……
「……これでよかったんだ」
持っていた帰還の結晶は2つ、それを全て手放した私はもうギルドには帰れないだろう。
……嬲り殺される前に間に合ってよかったけど、かといって安心しきってはいけない。
私の目的はあの二人を助けるのともう一つ、アダマンタイト級冒険者がこっちに来るまでアイツを足止めすること。
……私にできるかどうか……いや、違う。
勝てる負けるなんて関係ない、私は冒険者としてここであいつと闘わなければならないんだ。
覚悟はできて―――
「みつけたぜぇ」
バギィッ!
「ゴブリン共を全員殺ったっつーことは、それなりにできるみてぇだな」
「―――っ!」
私が持たれかかっていた木ごと棍棒で叩きつぶしたのか!?
くそッ! 土が宙に舞って視界が―――一瞬で目の前に!
ブンッ
「……っはぁ……はぁっ……」
「今のはよく避けれたなぁ……さすがダマスカスだぜ」
棍棒が見えなかった……!?
あの巨体でどうやってあの速度で棍棒を振り回したり動いたりできているんだ!?
もしこれが何の魔法も使っていない素の状態だとしたら……!
まだ出会って間もないのにこんな……息苦しいなんて……けど、まだ慣れてないけど、また使うしかない!
「……アクセル」
シュッ
「あぁ? 急に早くなりやがって、何やってんだテメぇ」
自身の動きを強化して見えないほどの速度で動けるようになる、けど生まれつき魔力をそこまで持ってないせいで一日に30秒が限界だ。
それにここまで来るのにスキルを使った時間は15秒、ゴブリンとの戦闘で5秒、つまり残り使える時間は10秒……!
ついさっき使ったばかりで体の負担は大きいが……これで少しでも時間を稼がないと!
「……」
隙がどこかにあるはずだ。
何かしらの動きをこいつがとった隙に首元に飛び込んで、ナイフで力いっぱいにかききってやる。
私の姿が少しは見えてるみたいだけど、1秒間で350m走れるこの速度ならばハッキリとはわからないはずだ。
「……おいテメぇ! さっきから俺の周りを虫みてーに飛び回りやがってよぉ! ぶっ殺して―――」
今だっ!
腕を上げた瞬間、後ろに回り込んでここから首へ――
べきゃ
――? 私は、なんで草、の上、に寝転ん、で。
「調子にのんじゃねぇよ。早く動けば当たらねえとでも思ってたのか?」
魔力、が切れ、た? 早く離れない、と体を、潰さ、れて……あれ?
足が、動か、ない?
「期待ハズれだぜ。オモチャはもうめんどくせーからいいや」
私の、体、あぁ、潰れて、、、
「死ね」
あ
「遅……てす……え。……生きては………意………いみた……な、とりあ………はこれで持…………てくれ」
――だ――れ
「待っ……よ。ゴ……付けた…………ってくる…ら」
――と――り――?
~ディーゴン視点~
こいつ糞雑魚だったな、ちょっとこいつで殴っただけでノビちまってる。そこらの雑魚とは違うと思ってたのによぉ、つまらなすぎてあくびが出てくるぜ。
「期待ハズれだぜ。オモチャはもうめんどくせーからいいや」
こんな奴がダマスカス級ってんならその次に上のやつらなんざ大したことはないだろうよ。それに思いっきり叩き潰して内臓がどこまで飛び散るかも見てぇしな。
「死ね」
ドゴッ
……あ? 血が全く飛び散ってねえ。
どういうこった? しっかりと叩き潰したハズだ―――
「遅れてすまねえ。……生きてはいるが意識がないみたいだな、とりあえず今はこれで持ちこたえてくれ」
こいつはさっきの鳥野郎……? つーかいつの間にあんな場所に移動してんだ?
……まあいい、どっちみち俺に殺されるただの雑魚だろうしな。
「おいおいおい鳥頭野郎! そいつがこのディーゴンからわざわざ逃げさせたくせに助けに来たのか!? ばっかじゃねえ!? お笑いだぜ!」
「待っとけよ。ゴミ片付けたら戻ってくるから」
………あ?
今、こいつ俺に喧嘩売ったのか?
「……おい、さっき俺のことなんつった?」
「えっ、何が?」
「何つったかって聞いてんだよカッパーの虫ケラッ‼」
「ゴミって言ったんだよ。『待っとけよ。ゴミ片付けたら戻ってくるから』ってな」
「雑魚が……イキがるんじゃねェ」
バゴッ!
「……なんだ、なかなかやるじゃあねぇか。てっきり英雄気取りの雑魚かと思ってたが……こいつはとんでもねぇ上玉に出会っちまった」
そこの女を殴った時と同じ力で頭を殴ってみたがこいつはびくともしねぇな……もしかしてSランクの冒険者ってやつか!? そりゃあいいぜ! ここで俺がこいつを殺して、見せしめに人間どもの町の中に投げ込んでやりゃあ俺の名は世間に広がりまくる。
そうすればもっと強いやつが俺を倒しに……完璧じゃねえか!
「……あれ? 今俺の肩叩いてくれた? いやちょーきもちよかったわ」
……あぁ? コイツは人をいらつかせんのが得意だなぁああ!?
「……本気で殺されてぇのか?」
「え? ただ気持ちいいって言っただけじゃねーか。何か怒らせたか?」
「……このディーゴンをなめやがって……許さねえ! 手足を引きちぎって、町の中まで引きずったあと泣きわめいて助けを求めるマヌケズラを見たがったがもういい! 叩き潰してやる!」
「そうか、がんばれ」
「ッ! ぶっ潰れ―――」
バシュンッ
「――ぇぇぇぇぇぇえええろ」
ドタンッ
「今攻撃し、そして触れた目の前の当たり判定はお前自身のものだ……ってもう死んでるな。いやーしかし……ホント達成感ねーな。攻撃の10倍の数値が出るようにしてたのが悪かったのか」
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