その11 ギルドに登録
「本当か!? ありがとうサハタダ!」
「お、おう」
俺の両手を握って上下に揺らすほど嬉しいのか。
まー人めっちゃ必要だっただろうしな。
「わ、私もですか!? でも私、戦闘経験なんて―――」
「それは大丈夫だ、俺がついてる」
こう言っちゃなんだがわりとマジで俺がいれば大丈夫だ。
「では早速登録の儀を行おうか、ちょっと待っててね」
ランタンはスキップしながらカウンターのような場所まで行くと、そこ何やら変な機械のようなものを取り出してテーブルの上に2つ並べた。
なにやら握れるサイズほどのガラス玉のようなものがはめ込まれており、そこから微かにだが青い光が出ている。
……あれさっき女が俺の右手に突っ込もうとしてたやつだ。
「ここに手を入ると機械が体を読み取ってその人専用の認識票を作ってくれるんだ」
「契約書か何かにサインとか書かなくてもいいのか?」
「入れるという行動自体が契約したってことだから、そういうのは必要ないよ」
「おいまてじゃあさっきのアレはつまり……俺は無理矢理契約されるところだったのか!?」
「……そういうことになるね」
「……犯罪にはならないんですかね?」
「……」
おいおいおい黙り込むなよ! 本当にここのギルドに所属して大丈夫なんだよな!?
人に同意求めず契約させるって完全にヤクザの手口じゃねーか!
「ったくもういいさっさと登録するぞレフラン、お前はそっち使え」
「これでいいんでしょうか?」
機械に右手を突っ込むと、同時に青く光り始め煙を吹き出してゴウンゴウンと音を出し始めた。
なんか妙に温かい気がするし……なんというか奇妙な感覚だ。
その光は10秒ほど続いただろうか、それぐらいたってからゆっくりと光が消えていき……あれ?
レフランのは消えてるけど俺のは消えない……
「……? おかしいな、これだけ時間がかかるなんて」
えぇ!? ちょっとまてよ不安になるようなこと言うな怖くなってきた。
「おいおい大丈夫か!? 爆発とかしないだろうな!?」
「大丈夫さ。今までそんなことは一度も―――」
ドゴォーン
今まで一度もなかったからといって、それがこれからも起こらないと決めつけるのは間違っている。
実際ランタンが最後まで言い切ろうとする最中、周囲に青い光をまき散らして爆発した。
―――数秒後―――
「みなさんお怪我はありませんか!?」
心配そうに叫ぶレフラン。
いやまあそれ全然問題ない。
「ああ、大丈夫だ……だが」
それは問題ないんだが……
「いや全然大丈夫じゃねーじゃねーか!」
「ははは……本当に爆発するとはね」
「はははじゃねーよ! つかお前あの一瞬でよく天井にくっついてられんな!」
「確かに間違ったことを言ったのは悪かったよ。だけどこんなことは初めてだ……」
テーブルの上には先程使った機械が転がっているが、さっきまではあった青い光が消えていた。
……真っ二つに割れたりとか部品が壊れていないところを見ると爆発したっていうより光が飛び散ったの方が正しいのかもしれないな。
「ただの故障じゃねえのか?」
「それでもあんな壊れ方は見たことがないし聞いたこともないよ。光が突然消えたりカードがでてこなかったりっていうのはあるけど……途中までは大丈夫だったんだけどな」
「……ん? 途中?」
「手を差し込んで読み込むまではね、その直後からおかしくなったような」
「……つまり読み込んでいる最中に何かあったってことか?」
「そういうことになるね」
「……」
『読み込んでいる最中に何かがあった』って……もしかしてだが……この体のせいじゃね?
いや、正直言うと多分そう、俺が原因だ。
機械はおそらく正常だった。
だが異世界から来た異物のような俺が手を入れたことにより、バグって光が飛び散ったのだろう。
……ああああああ! そういえばスキル使うの忘れてたぁ!
怪しまれないように次はスキル使ってもう1回やらねーと!
「な、なあランタン、こっこれもう一度やってもいいか……? 次はいけそうな気がするんだ!」
「予備の機械があるからそれを使ってもらって構わないよ、はい」
△system
スキル【偽造技術】 を発動しました
……これで次は大丈夫なハズだ。
右手を機械に差し込んで……と。
チーン
「……ん? なんだ今の音」
「登録完了の合図だよ。しかし今回は上手くいけてるのを見るとやっぱりさっきのは機械が壊れていただけだな」
「ソウダナ」
よっしゃあああああ!
原因が機械だと思わせることもできたしひとまずこれで大丈夫だな。
「2人とも、少し待ってくれ……よし」
ランタンは自身の顔が見えないように後ろを振り向き、しばらくしてからこちらを振り返ると―――
「おめでとう! これから君たちも冒険者だ!」
笑顔で取って付けたような言葉を話すランタン、そして機械の細長い穴からは茶色く角が丸みを帯びた長方形……いわゆるドッグタグのようなものが出てきた。
「ありがとうございます」
「これがさっき言ってた認識票か?」
「そうだよ。これを持って少しだけ魔力を送ると持ち主の詳細が青い文字で浮かび上がるんだ。クエストを受注するのにも必要だし、何かあった時の確認のためにも使えるからちゃんと首からかけて大切にしてね」
認識票を手に取ってみる。
大きさも見た目も戦争映画で出てきそうなぐらいにドッグタグと同じくらいで、肌触りはツルツルしており材質も銅だと思う。
しかしこれどうやって青い光を出させるんだ? 俺そんな魔力とか出せないんだが、まあそれっぽいこと色々考えて……って今俺ちょっと気張ったら浮かび上がってきたんだけど。
えっ、魔力ってウ○コ気張る感じで出てくんの⁉
しっかしなんだよこの文字、初めて見たぞ……って何故か読める。
――――――――――――――――――――――
ギルド『パートン支部』 番号:393099180
冒険者ランク:カッパー級
名前:イネェプト 苗字:サハタダ
性別:男
種族:人間
年齢:25
職業:医者
〇ステータス
生命力:E
体力:C
耐久力:D
魔法耐性:E
筋力:D
技量:B
俊敏性:C
知力:C
魔力:E
精神力:C
運:E
〇スキル
無し
――――――――――――――――――――――
やっぱりRPGっぽく職業なんてあるのか。
これってステータスとかを読み取ってそれに一番近い職業を表示してんのかね?
「ふむ……比較的高い方じゃないかな? それにさすが医者ってことはあるね、技量がBもある」
「Bっつーのは高い方なのか? あんまりよくわからねぇ」
「日常的にステータスに関係することをしてなかった人はE、していた人はCだから中より上ってとこだね。悪くはないとは思う……けど運が一番低いのが気になるね」
偽造スキルで偽造したハズだが上手くいっていないあたりこの数値だけは本当に変えれないんだな……そういえばレフランのステータスカードはどうなってるんだ?
「レフランちゃん、君のステータスを見せてくれないか?」
「は、はい。どうぞ」
「ふむ……これは……ってえっえぇぇぇぇぇ!?」
「えっ何何?」
「ど、どうしました……?」
突然叫びだしたランタンを前に困惑するレフラン。
一体何が理由でそんなに驚いているんだ?
「えっ……Sだ……」
「S……? 性癖の話か?」
「違うよ! とりあえずこれを見て!」
……凄い興奮してるが一体何がそんなに凄いんだ?
とりあえず手元のカードを見てみる―――
――――――――――――――――――――――
ギルド『パートン支部』 番号:393099181
冒険者ランク:カッパー級
名前:レフラン
性別:女
種族:人間
年齢:12
職業:見習い医者
〇ステータス
生命力:D
体力:E
耐久力:E
魔法耐性:E
筋力:E
技量:C
俊敏性:D
知力:B
魔力:E
精神力:E
運:S
〇スキル
無し
――――――――――――――――――――――
「うっ……運S!?」
運S……嘘だろ?
あんな壮絶な人生送ってきたレフランがS!?
つーかチート使ってもEな俺よりも上ってどうなってんだよ!?
「これは凄いよレフランちゃん! 強運の持ち主だよ!」
「そ……そんなに凄いのか? Sの凄さがよくわからねぇんだが」
「これは100年に1人の逸材だ! 戦闘や技能との相性もいいし……これだけあれば何にでも使えるよ!」
うわっ……凄い熱気だ!
つーか運ってそんなに利便性があるのか……いや、結構あるな。
カジノがあればじゃんじゃん当てて金策できるし、攻撃も全部当たるようになるだろうし……マジでやばいな。
こんな才能があったとは思いもしなかったっていうか、ステータスをそこまでしっかり見ていなかった。
「レフランちゃん、あなたのことを憲兵軍に教えてあげようか?」
「憲兵軍? なんじゃそりゃ」
「憲兵軍っていうのは国のために働く人たちだよ。罰則を破った人を捕まえたり、裁判を行う人達だね」
俺が住んでた日本で言う公務員みたいな奴なのか?
あんまりよくわからねえな。
「そんなとても凄い所に私は……」
「運ばかりに目を取られがちだけど知力もBで吸収が早いと思うし、収入もかなりもらえるよ。これならすぐにでも採用されるだろう」
……そういえば今更だが、これはレフランを引き取ってくれるナイスチャンスじゃないか!?
本人の収入も高いらしいし、能力も活かせるなんて最高じゃないか!
これなら俺と来るよりはマシな人生を歩めるだろうし、いい話なんじゃないかね。
「勿論無理にとは言わない。けど、君のこの状況は恵まれていると思うよ」
「……」
ん? なんかレフランがめっちゃこっち見つめてくるんだが。
何か考え事でもしているのか……?
「良い話だと思うぜ。運Sを求めている人がいるのならそっちに行ってもいいんじゃあないかな」
「……そう、なんでしょうか」
……理由はわからないがまだ悩んでるみたいだな。
よし、ここは俺が背中を後押ししてやらねーとな!
「レフラン、俺が『大切な決断をする時の考え方』を教えてあげよう」
「考え……方?」
「うむ。いいか? まず選択っつーのは後悔が無いように選べ。だが未来で起こることなんざ誰にもわからねぇ。良いことがあるかもしれないし、悪いことがあるかもしれない。そうやってどっちを選べばいいか分からない時は『今、本当にやりたいこと』を選べ。その後に良いこともしくは悪いことが起きたとしても、選択した時の覚悟があれば大丈夫だ」
「……わかりました」
……よし! これでレフランの憲兵軍へ行く覚悟が決まったハズだ。
予定より早かったが、これでこれから異世界スロ-ライフってやつを送るとする―――
「憲兵軍の件はお断りさせていただきます」
「うんうん……ってえっ!?」
……ま、マジ?
……マジで言ってるのか?
「……なるほどね、それなら問題ないさ」
なんで「そういうことか」みたいにニヤつきながら頷いてんの!?
「サハタダ、この子は君を選んだんだ。そんな子をイジメるようなことしたら、私が許さないからな」
「あっはい」
レフランと俺の目線が重なると、レフランはペコリと頭を下げた。
……理解できていないのは俺だけなのか?
「それじゃあ冒険者になった二人に早速クエストがある。記念すべき第一回目のクエストは……これだ」
いつの間ににか持っていた蒔かれた紙をテーブルの上で広げた。
そこにはイラストでデカデカと……草?の絵が描かれていた。
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