第一章 チートツール製作者はギルドでも目立ちたくない
その9 ~始まりの町とかいう主人公のためだけにある町~
「……よし、着いたぞ」
泉からなんとなーく真っすぐ歩むと1時間ほどで町につくことができた。
まあ正確にはまだ町の中へは入ってはおらず5mほど高さがある外壁の前で立っているんだが、MAPにデカデカと「パートン」と名前が表示されているから間違いないだろう。
つーか壁の威圧感がすごいな、なんというか進撃の巨〇みたいな。
しかしさっきの泉での出来事はヤバかったな……レフランは体を洗ってる時ずっととアンアン喘いでたし、その後に俺の膝の上に乗って体を密着させてきたからな。
もしレフランの親父が生きていて、そのことを知ったら殺されるにきまってる。
……奴隷を育てるって大変なんだな。
いやそんなことどうでもいい、さっさと忘れよう。
つーか入口っていうか検問所とかはどこにあるんだ?
これもしかして壁沿って探さないといけないやつかようわーめんどくせ。
「ここに入口はないみたいですし、壁に沿って……ご主人様、何をしてるんですか?」
「……ん?」
あっぶねェ! 無意識に拳握って壁に穴開けようとしてたわ!
レフランがいてくれてよかった。
いなかったらそのまま壁に穴開けて間違いなく大さわぎになっていただろうしな……いかんせんこの世界の色々な物やことをまだゲームだと思い込んでいる自分がいる。
目立ったら終わりだって改めてしっかりと認識しねーと。
「い、いやちょっと手こってるなーってな! アッハッハッハ」
「もし私が触れていいのならマッサージしますよ……?」
良い子すぎかよこの子。
いや、俺がちょろすぎる気がするな……
「それはこの町の宿でやってもらおうかな、とりま今は壁に沿って中に入る方法を探そう」
「あそこにあります」
「おうふ……めっちゃ近くやん」
壁に穴開けなくて本当に良かった。
レフランが教えてくれた場所は確かに出入口だった。
馬車2台ほどが並べられるほどの幅の穴が空いており、その上には鎖で固定された木と鉄でできた門のようなものがある。
それを潜った先にあったのは、レンガで整備された道路に、日本ではなかなか見れないレンガ造りの街並みだった。
「すげぇ」
「……」
噴水があり、その周囲を子供達が走り回っていたり、その様子を見守っているのだろうか母親3人がベンチで座って楽しそうにおしゃべりしている。
その光景を見たレフランは興奮しているのだろうか、黙ったままだが噴水の近くまでダッシュで駆け寄り、輝いた目でじっと水の中を覗くように見つめていた。しかしここは本当の本当に異世界なんだな……こういうのを見れば見るほど実感するぜ。
「ねぇ、見てよあの人」
……ん?
ベンチに座ってる女達の会話か?
「あの噴水の近くにいる布一枚の女の子の保護者よきっと」
「あんな格好で町を歩かせるなんて酷いわね。自分だけ立派なコートとトップハットを身につけて」
「虐待よねあれ。 憲兵軍に通報する?」
いやいやいや!?
ちょっとまって俺犯罪者扱いされてないか!?
……いや、でもそりゃあそうだよな。
12歳の女の子をタオル一枚しか巻いてない状態で人前歩かせてるってそうとうヤバい奴じゃん!
これ以上目立たないためにも早くレフランの服を買っておかないとな。
とりあえず通報される前にさっさとマップ開いて服屋さんを調べねーと。
△system
マップを表示
……ふむ、ドレスのアイコンを見る限りどうやらここが洋服屋かもな。
この広場の近く……いや、ここから見える場所にあるしレフラン誘って行かねーと!
「レフラン! ちょっとダッシュでこっちこーい!」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「うむ、似合ってるじゃあないか」
「……そう、でしょうか」
服の種類はよくわからなったというのもあるし、この世界でのオシャレな目立たない服装がわからなかったので、店員のチョイスで着させてみた。
そしてそこの店員のセンスが良かったのかかなり似合っているように見える。
確かワンピースっていう服の種類だったか、水色の服にリボンが付いている可愛らしい服だ。
それとレフランという素材の良さも合わさり最強に見え、とてつもなく美少女ってカンジになったと思う。
さっきのボロ雑巾よりもよっぽどマシだな。
しっかしさっきは危なかったぜ。
店員が俺を見た直後、店から全速力飛び出した時は説得するのが大変だった……もしあれを取り逃がしてたら、俺は今頃犯罪者として牢屋に突っ込まれてただろうな。
「もっと自信持てよ。今のお前は美少女だぜ?」
「……あ、ありがとうございます」
レフランは少し照れると下を向いてしまった。
……しかしレフランが可愛いければ可愛いほど体の痛々しい傷が目立つな。
これはこれで需要があるのかもしれねえが……俺はできたら治してやりたいな。
……チート使うか。
いや、これはしょうがない! なんせ人のためだからな!
自身の甘えに使うためではなく他人の幸せのため! つまり正当なる―――
「そこの貴方、もしかして冒険者ですか!?」
「……ん?」
突然声をかけられたので後ろを振り向くと、そこには制服のようなものを着た金色の髪の胸が大きい女性が立っていた。
女はニッコニコのジャンプでおっぱいを上下に激しく揺らしながらこっちに近寄ってくる。
つーか変わったマスク被ってる俺に初見でよく話しかけてきたな。
「いや冒険者ですね間違いない! 遠くからはるばる来てくれたのね!」
「は? いやいや間違いだらけなんだ―――」
「ギルドはこっちですよ! ささ早く早く!」
「待て待て待て待て! 俺は冒険者じゃねぇ!」
えっ、めっちゃ力強くないか!?
いくら引っ張っても引っ張っても引きずられるんだが!?
「ご、ご主人様!」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「着きましたよ! ここが貴方が探し求めていたギルド『パートン支部』!」
この女に頭掴まれているせいでおっぱいが顔に滅茶苦茶当た……いや違う、こいつワザと顔に当てて当ててきてる。
つーかこれ俺これ誘拐だと思うんだけど。
探し求めてたっていうか連れてこられたんだけど。
その建物の中は広かった。
天井にはシャンデリアがあり、テーブルが並べられていたり、カウンターがあったりする。
なるほどな……マジでギルドに連れてこられたのか。
「それでは早速クエストおなしゃす!」
「まーてまてまて、俺達は登録しにきたんじゃねーよ。ここまで宿を探しに―――」
「これがそのクエストの詳細です!」
「いや聞いてる!? 俺達は冒険者になりに来たんじゃ―――」
「冒険者じゃなかったんですか!?」
「ちょっとまて話聞いてた!?」
「それじゃあ早速登録しましょうよここに手を突っ込むだけ! 奥まで届くように勢いよく!」
「うわあヨダレ垂らすのヤメロきたねえ! つーか機械を顔に押し付けんな!」
「んひッ!」
「喘ぎ声出すな!」
「……」
「ねぇレフランなんで赤くなってんの!? ちょっとコイツ止めるの手伝え!」
なんだよこいつマジやべぇ。
顔赤くしながらおっぱいを上下に揺らし、なおかつ息遣い荒くしながら変な機械片手に手を無理矢理突っ込ませてこようとしやがる。
そして一番嫌なことがレフランがその光景を見ながら顔を赤くして左右にモジモジしていることだ。
これはレフランの教育にも悪いし、さっさとこの変態どかせないと……いややっぱ力強っ!
これはどうなってんだ!?
いやまて、もしかして……
△system
スキル:威圧 を受けました
威圧!? もしかしてこれのせいで本来の力が出せてなかったのか!?
これに対抗できるスキルか何か……あった!
△system
スキル:精神耐性 Lv.MAX 取得
これでこの女の力は普通になったハズ!
怪我させねえようにゆっくり力を入れて……!
「クエストから帰ってきたぞー! いやー今回は流石の私でもキツかった―――」
……ん? 入口に知らない女が立って……って顔めっちゃ凍り付いてる!
い、いや、そんなことよりゆっくりこの女をどけないと!
「……」
「フーッ……フーッ……んっ」
「ゆっくり……ゆっくり……そう、ゆっくり―――」
「……何やってんだあいつら」
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