第7話 これから異世界で何をすればいいのかわからない
ああ、これもう無理だなって。
「ご主人様……?」
「あーごめんごめん、大丈夫だ」
何故、自分自身のステータスをチートで変更できないかは置いといて……とりあえず今分かっていることをまとめよう。
・異世界にいる
・チート能力を使える
・カンストしたLvが戻らない
すげぇ!
上一つはともかく下二つは糞みたいな要素じゃん!
まあもうこんなこと言ってもしょうがない、切り替えてこれからどうするかを考えよう。
俺の最終目標は『元の世界に戻る、もしくは静かに贅沢に暮らす』だ。
こっち側に来れたっていうことは絶対に帰る方法があるだろうし、それが無理なら異世界だろうが森だろうがどうだっていいから、とりあえず別荘を作って自分で育てた野菜や動物で食事を取ってゲームをする……つまり静かに暮らしたい。
だがそんな時に邪魔してくるのがこのカンストステータス。
こんな頭悪そうなステータスの力をこの世界の大衆の前で使ってみろ、
まず物件を購入したり土地を聞いたりするのにどうしても都会に出なければいけないだろう、その際にどうしても人目に付く場所へと出向かなければならない。
そしてその際、一回でも目立ってはいけないのだ。
『なんで? 変装でもすりゃあいいじゃん』
という声もあるだろう、けど俺の服、脱げないんだ。
体とピッタリとフィットしてるというか、モデルを作った際に中身まで作っていないのでこの服自体が体のようなものだ。
『チートあるんだったら家でも作って食料複製して暮らせばいいじゃん』
もし俺が一人で暮すのなら問題ないが、今はレフランがいる。
もし日本基準で20歳に家を出させるとすると、今は12歳だからあと8年はかかる。
その間に俺以外の人と接さないのは悪いことなんじゃないだろうか?
俺は今現在、レフランの保護者としてしっかりと面倒を見なければならない。
それに今の状態でどっかに置いてくるなんざそれこそレフランの糞義父と同じだ。
「よし、今後の方針が決まった。レフラン、近くの町へ行こ―――」
「どこへでも行きます、私はご主人様に一生付いていきます……!」
「……おう」
なんというか、檻の中にいた時に想像していた性格とは違ってめっちゃ笑ってめっちゃ元気だな。
それほどまでに暴力は人を変えるということか……
とりあえず目標は決まったし、マップ的なものがないのか確認してみるか。
△system
マップ表示
これがマップか。
周囲は森、森、森って感じであまりよさげな物はないな……ってかこれ表示されてる部分狭くね?
……いや違う、これマイク〇の地図と一緒で歩いた部分しか表示しか表示されないんだ。
最初っから全て分かってるわけではないんだな……じゃあどこが町かわから―――
バキバキッ!
「……ん?」
突然後ろから木が軋む音が響いてくる。
なんとなーく後ろを振り返ると、怯えたレフランと5mほどの大柄の豚面3体ほどがこちらを見ていた。
「グギギギ……」
「グガッグガッ!」
「グゲゲゲェ」
「……こ、この人たちサハタダ様のお知り合いですか?」
「いや武器振り回してるとしてるしどう見ても違うでしょ!」
不細工だなこいつら。
もしこれがただのVRゲームだとしてチートを使ってなかったら「やったぜ初戦闘だ」ってなっていたんだろうが、今の俺には滅茶苦茶どうでもいいそこらへんの石ころでしかない。
「おぃおぃ、何だテメぇら」
「え? 何だって何?」
全員おそらく同一種族だろうが、よく見ると体系が違ったりする。
一体は棍棒を持った筋肉ムキムキ、もう一人は腹が出て斧を持ってるデブ、そしてもう一人は他と比べて細いが一番背が高く大剣を持っていた。
「まさかよぉ! てメーは兄貴たちのこと知らねえっていうのか!?」
のっぽの奴が手を広げながら俺に向かってそう言ってくる。
……いや、俺会ったことねえな。
「知らん、誰だよ」
「ああン!? てめェナメてんの―――」
「まァまァ、そこらへんにしとけよ。相手を許してやるッつーのもまた強さだゼ」
「さすが兄貴! 大三山のリーダーっす!」
「は? だいさんざん?」
何それ? ボス名とか通称とか通り名とかそんなのか?
まーなんにせよ無駄な時間はさけたいし、適当に挨拶しとくか。
「へーすごいっすね。じゃあ俺達用事あるんで……」
「おぃ、誰が行っていいっつったァ?」
うっわーめんどくせ。
ウザ絡みしてくんじゃねーよ。
「どうじたんだ兄貴ィ? こいつらは関係ねーんじゃねェ?」
「ここらへん来るのは初めてだからよぉ、ここの冒険者の実力を知っておくにゃあ丁度良い機会じゃねぇか」
「さすが兄貴! 敵を甘く見ずにしっかりと情報収集する……なんてしっかりしたお方なんだ!」
「たしかになァ、時間潰しにゃあなりそうだ。ケツに棒でも刺してあぶりゃあよく嘆くだろうな」
「あぶるって……に、逃げましょうご主人様」
「えっ、今更すぎない!?」
レフランは俺の肩を引っ張ってくる。
そしてそんなことをしている間にも、オークっぽい奴らは不敵な笑みを浮かべながらこっちに近づいてきた。
もう勘弁してくれよ……今はそれどころじゃねえってのに。
「じゃあ死―――」
「うるせえ死ね」
ドガッ
棍棒を持ったオークは、言葉を最後まで言い切る前に上半身が消し飛びそのまま地面へと倒れこんだ。
ヒョロヒョロの方は何が起こったか理解できておらずただ茫然とその光景を見ていたが、デブの方はそいつよりはできるのか一瞬で俺に近寄ると、斧を力いっぱいに振り下ろす。
バギッ
だがそいつも斧が俺に当たる前に、体に大穴が空き内臓と血液のようなものをまき散らした。
「―――あっ」
止まっていたヒョロガリは下を向いてそこらへんに転がっている元先輩を見つめる。
しかしなかなか臭いな。
これちゃんと洗剤とかで落ちるかな?
「おっ……おまえッ―――」
「はい、そうだね」
バコッ
構えず腰も入れず、腕をポンっと突き出しただけで先ほどと同等騒音と共にオークの体には大きい穴が空き、その内臓や血液が後ろの木へと叩きつけられる。
適当に返事し風船が割れたような音の後、その場所は静寂に包まれた。
……と思っていたが、いや、そうであってほしかった。
何も考えずにただパンチしていただけだったが、周囲をよく見るとどうやらオークの体に穴が空くだけでは済まず、そこから後ろ100mほどの距離の木と地面がえぐれて宙へと舞っていた。
そして数秒後、宙に浮いていた木や砂が一斉に落ちてきたせいで木と木がぶつかり合う音が鳴り響き、あたり一面砂ぼこりまみれになった。
……いや、つーかこれ強くなりすぎじゃね?
全然達成感無いんだけど一発で吹き飛んだんだけど。
つーかなんでパンチ当たってない場所まで木とか地面えぐれてるんだよ……ってなんでこんなに焦げ臭いんだ?
これは……もしかして地面が焼けているからなのか!?
なんだよこれ……ベルトコンベアから流れてきた倒れた商品を立て直す仕事と同じくらい達成感がないんだが。
「ごほっ……ご主人様」
「ん?」
「凄い……凄いです! あんな大きな敵を一撃で倒すなんて!」
「あー……」
やっべえェ全然隠してなかった。
こ……ここからごまかすことってできるのか?
「敵のレベルが低かったんだよ。いやー糞雑魚だったなぁ」
「そうなんですか?」
「そうだよアッハッハッハ」
駄目だ棒読みすぎて隠し通す自身がねえ。
一応納得はしてくれたみたいだが、さっさと話題を切り替えた方がいいだろう。
「さーてと、オークから素材をハギトルカー! いいアイテムゲットシタイナー!」
オークの残骸に手が触れると、突然文章のようなものが表示された。
△system
スキル【剥ぎ取り】を習得していません
なるほど、専用のスキルが必要なのか。
どこまで取ればいいかわからんしとりあえず適当に。
△system
スキル【剥ぎ取り】Lv.MAXを習得しました
これでいいかな。
んで剝ぎ取りってどうやってやるんだ?
いや……初期装備によく見たら剥ぎ取りナイフとかがあるな。
おおー、ナイフを持っていると剥ぎ取ることができるのか。……いや、よく考えればそれは当たり前だな。
まだこの世界をゲームの中だと思い込んでいる自分がいるみたいだ。
とりあえずお金になりそうな角を貰っていくか。
△system
大型オークの鋭い角×3 取得
んでこの取得したアイテムはいずこに?
ユーザーインターフェースをぐるっと見つめると袋っぽいアイコンがあったので選択する。
すると先ほどの角のアイコンが三つ並んでいた。
どうやらちゃんと機能しているみたいだ。
ていうかいつも思うんだがゲームのキャラってアイテムをどこにしまってるんだ?
ブラッドボー〇でも思ったんだが、もしポケットにアイテムそのまま入れてるとしたら気が違った人だぞ。
いや、もう考えるのはよそう。
これでアイテムをゲットしたわけだし、さっさと死体の臭いが届かない場所に移動して寝よう。
……よし、ここらへんでいいか。
「ほい、はようさっさと睡眠取るぞ。明日起きたらすぐ町へGOだ」
テントの中に初めて入るが、ちゃんと下も布がしいてあるし、屋根もしっかりしてるしで意外といい出来だ。
火はつけっぱなしでいいか、これで動物は近寄ってこれないだろうからな。
「わかりました。おやすみなさい」
「……いやいや待て待て、なんで何もないとこで寝てるんだ?」
「? 奴隷は地面で寝ないと駄目なんじゃ……」
「そんなのいいから、ほらこっちこい」
今更だがこのテントが1人用だって気づいた。
遠慮するレフランの手を無理矢理引っ張って入れたのはいいがやっぱ狭いな……もう一つテントを作って別々に寝るか。
「なあレフラン、引き込んで悪いんだがもう一つテント立てるから別々に―――ってレフラン?」
「……」
「おい、何か返事を―――」
「―――サハタダ様……あったかい」
小さい声と同時に、やさしくぎゅっと体の腹あたりに触れられる感覚があり、レフランのゆっくりな鼓動が俺の体に伝わってくる。
どうやら離しそうでもないし……まあレフランがこれでいいならいいだろう。
……明日町でレフランを風呂に入れてあげた方がよさそうだな。
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