第6話 異世界に行った男の叫び
サハタダはリアルの名前である『サハラタダノリ』から適当に取って作り、イネプトは適当に思いついた単語だった。
日本語訳は確か『不適切な』とかだったような気がする。
「お前の名前は何なんだ?」
一応知ってはいたが、今初めて会ったばかりの顔隠してる知らないおっさんに名前が知られていたら普通にこわいだろうし聞いておこう。
「私の名前は……サハタダ様が決めてください」
「俺が? 元の名前はねえの?」
「私はあなたの奴隷ですから。もし面倒ならば奴隷で構いませんが……」
「そうだな……じゃあレフランでどうだ?」
元ネタは俺が好きなゲームのキャラ、ルフラ〇から来ている。
ㇽをレに変えただけだが、まあ呼びにくかったりはしないしこれでいいだろう。
「レフラン……レフランです。ご主人様、よろしくお願いします」
「ああ、よろしくな」
自分の名前ができたのか少女……もといレフランは少し嬉しそうだ。
気に入ってくれたみたいでよかったよ。
周囲を見渡すが、見える範囲は明かりが届く所までそこから外は真っ暗だ。
ファンタジーということもあって敵mobも出てくるだろうし、さっさと寝て時間を朝まで飛ばすか。
「じゃあそろそろ寝るか」
「……わ、わかりました」
そういうと奴隷はしばらく下を見つめたのち、ゆっくりと俺の目の前に来てから両手で俺の右手を握られる。
……めっちゃ熱いっつーか顔がめっちゃ赤いような?
「初めてなので……よろしくお願いします」
え、寝るの初めて?
この世界では全世界の人間に寝れない呪いがかかってるとかいうダークソウ〇的な設定があるのか?
「あー……うんわかった、よろしくな……って―――」
少女は体に巻いてる布を支えていたベルトのようなものを外していました。
いや……いや!
「おいおいおいストップ!」
「?」
「いや『?』じゃないよ! 少女が男と二人きりの場所でなんで服なんか脱ごうとしてんだ! ここはエロゲか何かか!?」
「奴隷はみんなこれをするっておじさんが言ってたのですが……」
「それは知らんけど自分自身の歳を考えてみろ! 少なくとも俺は未成年に興奮するような変質者じゃねえ」
「けどおじさんが『女性はお礼として服を脱いで男と一緒に寝るんだ』って言ってました」
「……あのさレフラン、そのおじさんに股に何かつっこまされたりはしたか?」
「……? いえ、火であぶられたり鞭で打たれたりはしましたけど……」
性的暴行は受けていなかったみたいだが、それでも自らの過去をよくそんな簡単に他人に言えるな。
「そういえばなのですが、なんで私を助けてくれたんですか?」
「あー……俺がお前を助けたのはさ、お前のことが好きだったからだよ」
「好き……?」
「……えっ?」
えっ、首傾げてるってことは好きっていう感情を理解していないのか?
こういうこと言っとけば大体ゲームの主人公は好かれると思っていたが、それ以前に本当に家から出たことなかったせいか知らないのか。
「んまぁ……いつか分かる時が来るさ」
さっき言った通りゲームのストーリーに絡んでくるだろうし、恐らくこのゲームのヒロインだろうしな。
もういい今日は疲れたし、キリの良いところまで進んだわけだし寝ずにそのままログアウトするか。
まずVRを外してと……
「……ん?」
……あれ?
いくら頭を触ってもシルクハットの帽子と尖ったマスクがあるなあという感覚しか伝わってこない。
「……んん?」
「どうしました?」
……VR無くね?
いやそれどころか俺の部屋の机も椅子も棚も……何もなくね?
「……いやいやいやいやいや」
じゃあ俺の見てる景色は何なんだ?
真っ暗な森を照らすランプの光、さっきまで服を脱ごうとしてた美少女、現実世界の日本ではめったに見れないであろう檻、手から出た黒い炎。
……もしかして、もしかしてかもしれないが、ここは最初からVRの世界じゃなかった?
思い当たる節は沢山あった。
今思えば温度や匂い、NPCだと思ってた奴らの挙動や反応まで何もかもがリアルすぎる。
じゃあ……ここは……今話題の異世界ってやつなのか!?
「……」
いやでも待て、待つんだ。
俺には夢があった。
10億までお金を稼げた暁には田舎に土地と家を買って目立たずゆっくり暮らそうと。
結婚せず、自分の趣味に没頭できると。
もしかしたら……もしかしたら、それがこちらでも可能なのでは……!?
そういや俺のステータスってどんなだっけ?
表示させてみっか。
△ステータス
名:サハタダ 苗字:イネェプト
冒険者ランク:無し
性別:???
種族:???
年齢:???
生まれ:???
素性:ヤブ医師
〇ステータス
生命力:SSS
体力:SSS
耐久力:SSS
魔法耐性:SSS
筋力:SSS
技量:SSS
俊敏性:SSS
知力:SSS
魔力:SSS
精神力:SSS
運:E
〇スキル
【チートツール】
うっわあああああああ! 能力値全部カンストとかヌルゲーすぎじゃねえかなろう小説か……いや違え、運だけEじゃん!
確かにこの状況ではあながち間違ってはないけどこれで称号のカンスト入手ってどういうことだよ! 今の俺は運以外必要ねーんだが!
クソめが……俺はオフラインゲームでも何でもズルをするのは嫌いだし、こんなの嫌でも目立つじゃ……いや、待てよ。
チートで下げればいいじゃん!
早速ウィンドウを表示させて、俺のデータが乗ってるところを見つけて……あった! ここを変えれば―――
「……」
「ご主人様……? 大丈夫ですか……?」
「……ぁあああ」
「サハタダ―――」
「ああああああああああああああああああああああ!」
「ええぇ!? しっかりしてください!?」
いくら選んでも反応しねぇ。
―――レベルが下げれませんでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます