第19話 滅びの門へ

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 シルクロードのゲーム実況チャンネル

 「【クリスタル・パレスⅥ】 ネタバレ注意! 初見! 滅びの門に突入!」




 はいっ、皆さんこんにちはー。シルクロードでーすっ。

 今日も一緒に、ゲームの世界に旅立ちましょーう!


 今日は、いよいよ<滅びの門>に突入です! の、はずです。

 わー、ぱちぱちぱち!

 初めてここに来たときには、先に進めないのがお約束になってたんだよね。

 ともかくここに来ないと、何が必要とか教えてもらえないわけだから、まあ攻略見てない限り、一発突破とか、不可能なんですよ。


 さて、ポーチを開けて、装備の確認です。

 これ! 何と言っても、この<滅びの水薬>が無いと、話にならないんですよ。これ作るの、結構きつかったー。ね、時間縛りって、結構きついよね。そうでもない?

 あとは、お約束の<復活のメダイ>と、回復薬でしょ。もちろん、上限の10個ね。あとは、はい、これ、一覧見てくださいね。

 装備のほうも、確認しておきますか。

 はい、上は賢者のマントね。レベルは三です。下は、防御力を考えて、土塁のブーツ。いや、見た目はねー。ちょっとあれなんですけど、防御力重視ですんで。

 そして、武器。<滅びの門>を突破できたら、まず間違いなく戦闘ですからねー。せっかくマジックポイント上げたんで、杖にしました。はい、<流星のロッド>でーす。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 絵本の赤ずきんちゃんが着ているような、フード付きのマント姿の幼い姉弟。弟のノーチェは麻のような見た目の白っぽい色で、姉のアマレーナはこげ茶色のマントだ。

 二人の体つきや顔の感じは、普通に人間らしい。

 ノーチェは裾がぎざぎざになった同色のズボンに茶色い短靴を履いていて、アマレーナはやけにぼってりした先の丸いブーツをのぞかせている。はっきり言ってバランスが悪いし、かわいくない。

 フードからのぞくアマレーナの髪はピンクがかった赤で、ノーチェは草のような緑色。服装は替えられるようなのでたまたまだろうが、色の取り合わせはちょうどいい。


 手をつないだ二人は、森の中の一本道を歩いて行く。木の根元にきらりと光るサインがあると、採取行動もしながら。薬草らしい名前の草やら、木の実、石などだ。

 たまに、ウサギのような水色の生き物が走ってくることがあるが、無視している。

 

 やがて、森が開けたところに、真黒な門と城壁が見えてくる。二人がとても小さく見えるほど、高々とそびえ立っている。

 城壁や門のアーチはレンガか石積みのような形や筋、窪みなどが見えるし、門扉はてらてらとしているが、どちらも同じ材質の金属のようだ。そして、二枚の門扉の合わせ目や上部には、まったくすき間が見えない。すべてが一枚の金属で、そこに彫られた模様のようなのだ。

 門扉に至る石段らしきもの、これも同様の真黒な金属様のものなのだが、二人はそれを上らない。

 門扉には、ごてごてした装飾をほどこした錠前のようなものがついている。もちろんこれも、金属様で一体化したものだ。

 小さな二人には、そのままでは届かない位置にあるのだが、アマレーナは城壁近くから大きな木箱を集めてくる。そして、錠前に届く高さまで、積み上げるのだ。

 そもそも大きな木箱を積み上げるには、何らかのテクニックが必要らしいのだが、それはごく初歩的なもののようである。

 ともかく、プレイヤーが操作しているのはアマレーナだけなので、彼女がすべての作業をこなし、木箱の上に立つ。


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 はい、これが<滅びの水薬>です。

 村で集めた書物の断片、学者や長老の話、法外な金額をふっかけられましたけど、占いをしてもらった結果から考えて、これをぶっかけちゃダメだって考えます、はい。

 だからね、飲むんです、アマレーナが。

 うわあ、何が起こるのかな。起こらなかったらごめんなさい。

 じゃ、行きます!


◇◇◇◇◇◇◇◇


 水銀のような銀色の液体が入った瓶を手にしたアマレーナが、飲むという行動をとる。


◆◆◆◆◆◆◆◆


「おねえちゃん、のんじゃだめだー!」


 木箱をばんばん叩いて、ノーチェが叫ぶ。勢いでフードがはずれ、緑色の髪がすっかり見えている。大粒の涙が風に飛ばされる。


「やめて、おねえちゃん、やめてー!」


「いきなさい、ノーチェ。ここからは、あなたがひとりでいくのよ」


『結び目を解いて、中に入れ』

 どこからともなく響く声。おそらくは老年の、男性の声。


 仰向いて瓶の中味を飲み干すアマレーナの顔が大写しになる。

 彼女のフードもはずれ、赤い髪の毛が風にさらさらとなびく。


 と、苦し気にゆがんだ彼女の表情が早回しのフィルムのように変化する。

 幼子から少女へ、そして大人の女性へ。

 がくんと膝をつく大人になったアマレーナ。

 立ち上がれなくても、よろよろと上げた右手は錠前に届きそうだ。

 流れていた物悲しいメロディーが、荘厳なものへと変化してゆく。

 

 胸を押えてうずくまったアマレーナは、気力を振り絞って膝立ちになる。

 長かったマントは、かろうじて腰を隠すほどしかないので、ブーツを失った白い脚が見えている。

 大写しになる錠前と、わなわなと震えるアマレーナの両手。

 その両手が押し当てられると、錠前を中心として変化が起こり始める。

 赤銅色の錠前、木製の門扉、石積みのアーチと城壁へと、波紋が広がるように色が広がってゆく。

 錠前には布のリボンのようなものが巻き付けられており、そこに更に植物の蔓が絡みついている。

 蔓のあちらこちらに野ばらのような赤い花が咲き、花弁が開き切り、枯れて散る。緑の葉が茶色に枯れ、散ってゆく。残った蔓が、霧散するように消失する。

 年老いた皺だらけの手が、白いリボンをゆっくりとつかむ。

 固く固く縛られていたように見えるそれが、するするとほどけて落ちた。

 

 そしてまた、アマレーナの姿も、しゅんっと光る霧となる。

 着ていたその人を失ったマントが、木箱の上に残される。


「おねえちゃーん!」

 

 叫び声を上げたノーチェのところへ、光る霧状のものが真っ直ぐにやってくる。


「うわあーっ!!」


 光に包まれたノーチェの姿もまた、早回しのように成長する。

 小さな体を包んでいた服がはじけるように破れ、光が消えた後に呆然と立ち尽くしているのは、裸の青年だ。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 城壁の前に、素っ裸の青年が立っている。

 傍らには、中身が散乱したポーチ。


※※※※※※※※


 うっわー!

 これは、想定外! 想定外じゃないですかあ!

 ここまで育ててきたキャラが、キャラが消えるとか、何なんだー!

 え、え、アマレーナの装備品って、残ってる? 残ってる?


 わっ、マジか! 無い! 無いし!

 ポーチ、どこ行ったあ!

 残ってるの、賢者のマントだけじゃねえか!

 あ、杖あった。マントと杖。

 えーっ、それだけー?


 えー、皆さん、今日はなかなかにショッキングなシーンをお届けしました。

 どうも、ここから強制的に、ノーチェでプレイすることになるんですね。

 つうか、ノーチェ、この体で子ども用のマント、着れねえじゃん!

 村の防具屋で、大人用と子ども用があるの、なんでかなーって思ったんだよね。

こういうことだったんだね。


 ここから村に戻れないってことは、このまま中に入るはめになったんでしょうか。

 はい、この先は別の動画でお届けしたいと思います。

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