魔物を増やそう

 程無くして水に濡れたスライムは魔素へと分解され、迷宮核へと吸収されるべく紫の筋となって部屋を移動し始める。

 迷宮核へと辿り着いた、スライムだった魔素の塊は迷宮核へと自ら入り込んだ。

 迷宮核は周囲の魔素を取り込む能力は無い、だがこれはシステムにより補助された現象だ。これで、迷宮核は新たにスライムを創造できるようになった。

 部屋に満たされた魔素の量は十分。であれば、迷宮核がとる行動は一つ。


 では、新しい魔物を創造しましょう。

 ウォータースライムは休んでいてください。


 ウォータースライムは緩んでいるスライムの体の一部を持ち上げ、了解の意を示すようにフルフルと振り、迷宮核のある中央へと移動し始めた。

 魔素濃度の高い場所へ行き、戦闘で消費した体力を魔素の補充をもって行う為に。


 スキル魔物創造により新たにスライムが創造される。

 部屋に満たされた魔素が迷宮核の真下に集まり物質化していく。

 新たにスライムが一体生まれるころには、部屋の魔素は枯渇してしまっていた。


―――

スモールスライム

保有魔素量100


スキル

魔素吸収

触手

スライム融合

―――


 新たに生まれたスライムはスモールスライム。

 保有魔素量はスモールウォータースライムと同じ100だが、スキルが少ない分使用するスキルの攻撃性と、魔物としての単純な身体能力はウォータースライムより強くなっている魔物だ。

 ウォータースライムが後衛タイプで、スライムが前衛タイプといったところだろう。

 そんなスモールスライムは、


 プルン!


 やや力強さがあるプルンを迷宮核に披露して挨拶としていた。


 ふむ、スライムよよろしくな。

 今後はスライムが前衛として、ウォータースライムを後衛として行動するように。


 遠くの方で移動しているウォータースライムも、ここにいるスライムも了解の体の一部を持ち上げてからのフルフルを行った。


 さて、またいつ隣の部屋から魔物が訪れるかわからない、魔物をどんどん増やしていくぞ!


 プルン!

 プルン!


 部屋を魔素が満たし、スライムを創造できるだけの量を用意出来次第、スライムを生み出していく事5体目。

次のスライムを創造するべく魔素を精製しているとき木の扉は開いた。

 そこには、5体の茶色のスライムが土を身にまといながら部屋へと侵入してきていた。


 5体とも土を纏っているようだ、全て遠距離攻撃可能とみていいだろう。

 スライムたちよ気を付けるのだぞ!


 プルンプルンプルン!

 プルンプルン!


 前衛にスモールスライム3体。後衛にスモールウォータスライム2体で頂点が無い三角形の陣形で扉からこちらに向かってくる、土を纏うスライムへと移動を開始する、迷宮核側のスライム達。

 対して、侵入してきたスライムたちは横一列になり移動を開始し始めた。

 双方ともに相手へと打撃を与えるべく距離を詰めていく中、扉は静かに閉まっていった。


 双方ともに遠距離攻撃が届くようになってから行われたのは、遠距離攻撃の応酬だ。

 だが、これは単純な手数で迷宮核側の方が不利といえる。

 だが、ウォータスライムが打ち漏らした土の塊は前衛のスライムが触手により迎撃することにより対応する。

 また、この時触手で迎撃した土は出来うる限り遠方えと飛ばすように触手を振るっていた。

 これは、先の戦いでウォータースライムが行ったような、攻撃手段を警戒しての事だ。

 これにより、双方ともに被害なしの状態を維持している。

 迷宮側のスライムたちはその間も進軍を継続している。

 対して進行側のスライムたちは足を止めての遠距離攻撃をしつつ、放った土を操作して迷宮核側への次なる攻撃の布石になるように行動していた。

 これに対して迷宮側のスライムたちは、進軍速度をこれ以上落とさないため、無視の判断、周囲へと土が集まりだしている中、飛来する土の塊を迎撃しつつ出来うる限り早くスライムの触手が届く距離へとなるように、またダメージを負わないようににしながら慎重に前へ前へと進んでいる。

 この遠距離攻撃の迎撃戦に変化が訪れたのは、進行側の土が全て打ち出された時だった。

 それまで、土の射出による攻撃が、周囲へと集められた土を利用した攻撃手段へと代わる。

 この段階でウォータスライムたちの水にはまだ余裕があった。

 これは、事前に部屋の各所に水溜まりを用意していたためだ。

 途中の水溜まりで水を補給しながら移動していたウォータースライム達、水の残量は潤沢であったが、数の差には抗えないでいた。

 迷宮核側の攻撃へと動き始めた土へと水を纏わせ動きの阻害を試みるも、2体と5体では、操れる物質の総量は2倍強と違いが生まれてしまっていた。

 これで、その穴を埋めるべく触手による迎撃行動を取るものと考えていた進行側のスライムたちにとって予想外のことが起こった。

 迷宮側のスライムたちの捨て身の防御手段断行だ。

 前衛3体のスライムは周囲の土を出来る限り無視し移動に専念。

 水での妨害活動を潜り抜けた土の塊は、ウォータースライムがその身を盾にして防いだのだ。

 これは、迷宮核からの念話による命令を受けたウォータスライムたち決死の行動。

 2体分の水操作の妨害と、身体を使った妨害によって土の塊が前衛のスライムたちに届くのは極僅かとなったのだ。

 届いた土の塊に関しても、移動しつつの回避行動と触手による迎撃で、進軍の速度減少を最小にとどめるよう努める前衛スライムたち。

 そして、ウォータースライムたちは自らが妨害用に使った水と、それを跳ねのけて飛来した土にまみれてその身を削っていった。

 ウォータースライム2体は、前衛スライムが触手の攻撃範囲に進行側スライムを捉える直前に息絶える。

 だが、目標の敵はすぐ目前、前衛のスライムたちは構わず前進して、触手を振るう。

 進行側のスライムたちの体力は既に大半を使い果たしているようで、近づかれた後は実に呆気ないものだった。


 スライム同士の戦いの後に残ったのは、泥水に塗れたスライムの残骸と、叩きつぶされたスライムの残骸である。

 そして、勝利した迷宮側の前衛のスライムたちはスキルスライム融合を使用して、進行側のスライム一体を残しその身へと吸収していった。

 勝震えを行ったスライムたちはどことなく寂しさが滲むものだった。

 残された最後の一体は魔素に分解後迷宮核へと吸収され、迷宮核は新たにスモールソイルスライムを創造出来るようになった。


―――

スモールソイルスライム

保有魔素量100


スキル

魔素吸収

土精製

土操作

スライム融合

―――


 そして、残された前衛スライムたちは、スライム融合の結果新たな力を獲得した。


―――

スモールダブルエレメントスライム

保有魔素量300


スキル

魔素吸収

触手

水精製

水操作

土精製

土操作

スライム融合

―――


 ウォータースライムとソイルスライムの残骸をそれぞれ一体ずつと融合を果たし、スキルと保有魔素量を増やしていた。

 スライムはスキルスライム融合があるお陰で、またはその所為で死した後もその力は引く継がれていく。

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