システムに支配された世界
小さな世界で試練を受ける
部屋が二つ
縦・横・高さがそれぞれ100メートルで創られた、真っ白な傷一つない壁・床・天井の部屋。その部屋の中央に微かに反対側が見える透明度の球体が浮かんでいた。
壁の一片には簡素な両開きで引き戸の木の扉が、天井から床、両隣の壁まで満遍なく覆っている。
木の扉の向こう側は、ここと同じように部屋があったが中央に球体は浮かんでいない。
球体の名称は迷宮核。
この二つの部屋を創造したものによって配されたものだ。
この迷宮核と部屋が用意された理由は単純明快。
エネルギーを生み出すためだ。
ここで生み出された魂は、創造主の下に送られる仕組みとなっている。
さて、まずは魔素を精製していかなければな。
この世界でエネルギーとは思う事によって発生する。故にこの世界でエネルギーを生み出す存在は須らく意志を有している。
迷宮核は効率よくエネルギーを生み出すために考えを巡らせていく。
まずは基本3原子の生成だ。
これは、この世界で生きるあらゆる意識体がもつ基礎能、特に意識しなくとも考えるだけで発生するもの。
そして、その3原子を使用して魔素を作り出す。
これは、私が与えられたスキル魔素精製を使用し作り出せばいい。
なに、簡単なことだ、スキル自体はシステムで管理されているものだから、私は使用することを意識するだけでいい。
後は勝手に魔素が作り出されていくだけだ。
ここは小さな小さな世界。
たった二つの部屋からなる閉鎖された世界。
新米の創造主により生み出された、エネルギーを回収するための場である、虚無崩壊の場から隔絶された空間だ。
そんな小さな世界で、迷宮核は自らの意志から発生した3原子、念粒・聖子・魔子をスキル魔素精製の使用許可を出し魔素を精製する。
そして、それを受けてこの世界に適用されている理、システムはスキルを発動させる。
魔素が迷宮核に満たされていくにつれ、白色だった迷宮核が徐々に紫色へと変じて行った。
微かにだが反対側が見通せるほどだった透明度は、今は反対が見えなくなっている。
ふー、取り合えずこの程度あればこの体の維持は問題ないだろう。
では、部屋にも魔素を満たしていくか。
やがて自らの身体に魔素が行き渡ると、迷宮核はその表面から魔素を放出し始める。もちろん、魔素の精製は継続して行いつつである。
迷宮核の表面から紫色の何かがあふれてくる。
それは、徐々に部屋へと行き渡っていった。
部屋の中は迷宮核からあふれた魔素によって徐々に紫色へとなっていく。
暫くの時間が経過し、部屋全体が薄く紫色へと変じる。
迷宮核の周囲は、魔素の発生場所ということで、やや濃い紫色となっていた。
ふむ、ではそろそろ迷宮らしいことをしていこう。
スキルスライム創造!
空間中に漂う魔素はスキル発動と共に凝縮していった。
部屋に気体のように漂っていた、魔素は迷宮核の真下へと何かに吸い込まれるように凝縮していく。
気体のような密度で空間を満たしていた魔素は、凝縮され徐々に個体となっていく。そこには青色の物体がつるんとした質感を伴ない大きくなっていっていた。
ポヨン、フルフルフル。
―――
スモールウォータースライム
保有魔素量100
スキル
魔素吸収
水精製
水操作
スライム融合
―――
この小さな世界で初めて生まれた魔物はスライムだった。
部屋を満たしていた魔素を使用して一体のスライムが生れ落ちた。
このスライムは周囲の魔素を吸収し、それを分解して、念粒介して魔子を水へと変換、その後聖子を定着させ水という状態を維持できるようにしたあと、体外に排出能力を持ったスライムだ。
ついでになってしまうが迷宮核の能力も紹介しよう。
―――
迷宮核
スキル
浮遊
魔素精製
魔素蓄積
魔物創造
念話
―――
迷宮核の能力を以上の通り。
スライムは魔物創造により生み出されたものだ。
ウォータースライムよ、私から生み出された魔素を物質化してくのだぞ。
プルン、フルフルフル。
ウォータースライムは迷宮核の言葉を受けて格の下へと陣取った。
プルン!
バッチコーイ的な動きを見せるウォータースライム。
ふむ、ヤル気は十分なようだな。
では、始めて行こう。
迷宮核は引き続き魔素を生成していった。
それを受けてウォータースライムは水を生み出していく。
そして、当然ながらこのウォータースライムも3原子を生み出しているのだが、この3原子はこの部屋へと拡散していくだけだ。
これは、迷宮核に周囲の3原子を集める能力が無い為だった。
時間が流れていく。
迷宮核の真下は水溜まりが出来ていた。
ウォータースライムは自身の身体に触れた魔素しか吸収出来ない為、空間には魔素と3原子が存在している。
3原子は無色透明であるため、空間は再び魔素のもつ色である紫へと変じている。
木の扉が徐に開く。
僅かに開かれた扉の隙間から一体のスライムが這ってきていた。
来たか。
ウォータースライムよ、敵を排除せよ。
プルン!(バッチコーイ)
用意していた水を操作しつつ自身の周りに水を纏いつつ、木の扉から現れたスライムへと近づいていく。
扉は新たに表れたスライムが部屋の中へと入ると、静かにしまった。
迷宮核は近づいていく2体のスライムを見ながら、魔素を輩出している。
両スライムの大きさは球体の形を取ったときに、半径10センチメートル程だ。
そんな小さなスライムが方や部屋の中央から、方や扉から移動していってるのだが、この部屋は1辺は100メートル。
つまり、約50メートル弱の距離を這って移動していた。
幾許かの時間が過ぎた・・・。
先に仕掛けたのはウォータースライムだ。
周囲に身にまとっていた水の一部を操作して、スライムへとぶつけるために球体の塊にして射出する。
対する敵のスライムはそんな水球を自身から触手を伸ばし鞭のようにしならせ迎撃する。
水球は鞭により飛沫と化しスライムの周囲へと散った。
ウォータースライムはそんなことはお構いなしに、次々と水球を投げていく。
スライムは次々と飛来する水球を触手でもって迎撃をしていく。
遠距離から一方的に攻撃が出来るウォータースライムだったが、触手の迎撃行動をぬけてスライム本体へ攻撃が出来ないでいた。
やがて、ウォータースライムの周囲にあった水は無くなっていた。
プルン!
まるで勝ちほかったように敵のスライムは一震えすると、触手で攻撃できる距離まで近づこうと移動を開始する。
プルン!
しかし、そんな姿をみたウォータースライムは勝ちほかった震えを一つ。
スライムによって迎撃された、相手の周囲にある水を操作して相手のスライムへと纏わりつかせた。
勝利を確信していたのか、水の動きに対応できずに水に飲まれるスライム。
ウォータースライムは、その水を使ってスライムへと圧力をかけていく。
スライムは先ほどと同じように、触手により水を散らせようとするが、触手は僅かに伸びるのみ。
水の圧力によって触手が伸ばせないでいた。
そして、圧力がある点を突破したとき。パン!
相手のスライムは水の中で弾けた。
スライムが弾けた衝撃で、僅かに膨張をしたもののそれは一瞬。
水の中には無残にも破裂したスライムの残骸が漂っていた。
ばしゃん。
圧力を加えるために、集まっていた水は水溜まりとなっていた。
そして、ウォータースライムは、綺麗だった鏡餅型の形をやや崩していた。
どうやら、あの水の圧縮にかなりの体力を使用していたようだ。
だが、勝利は勝利。
プルン・・・!。
弱々しいながらも勝振るえを行い勝利を宣言した。
この世界は小さい、たった二つの部屋しかなかった。
一つは迷宮核のある部屋。
もう一つは迷宮核へと試練を与える為に用意された。準備部屋だ。
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