第222話 不制止ドラゴンズ

 コハルが俺から離れるのは危ないため、風の道ウィンド・ロードで決まったルートを作りだし俺達は上空へ昇っていく。

 上に昇れば昇るほど寒くなっていき、ドラゴンスケイルで隕石の熱に耐えられるか少し不安だったが、接触すれば丁度良くなるのでは、自分でも驚くほど楽観的な気持ちだった。


「空を飛ぶって、今までの冒険でもなくて斬新だね!」


 俺の後ろからコハルが声を掛けてくる。

 ここまで落ち着いて居られるのは、恐らく彼女のお陰ではないかと思う。


「ああ、しかも今までに無い魔法との対決になる。しかも真っ向勝負でぶつからないといけない」


 目の前に大きな雲が見える。


「今までの冒険でも経験したこともない。誰も成し得なかったことを……これから俺達はやるんだ」


 雲へ突っ込み白い霧の中を突き抜け、光と共に紺色に近い空へ到達した。


「うわぁ……きれい……」


 コハルが思わず呟く。

 白い雲が足下に広がり、太陽以外何も無い青いドームみたいな空。

 見たこと無い単純だけどこの世界のスケールを感じさせる圧巻の光景が広がっていた。

 そんな光景に浸るのも束の間だった。


「見ろ、コハル!」


 俺は指さす。

 群青色の空に光の穴が空いたような異様な瞬きが見える。徐々にその光が強く大きくなる。

 間違いなく、あれが魔法の隕石。


「行こうイット!」

「ああ!」


 俺達が重心を倒し、隕石へ向かうその時だった。



 ウオオオオオオオオォォォォォォ!!


 

 俺達の足下から鯨の様な響く音が木霊した。


「うわっ!?」

「な、なんだ!?」


 俺達が下を向くと赤く巨大な何かが雲を突き抜け、俺達よりも圧倒的に速く大きな翼による飛ばされそうな程の風圧が吹き荒れる。


「コハル大丈夫か!?」

「あ、あれって、もしかして……ドラゴン!?」


 驚く彼女の言うとおり、後ろ姿しか見えないが、赤い鱗に大きな翼と尻尾。

 初めて見たし、話でしか聞いたことのなかったドラゴンに違いない。

 でも、どうしてこんなタイミングで?



・伝承じゃが、ドラゴンは岩喰らいとも言われていてな。


・飛来した隕石などを好んで食すと言い伝えられておる。


・一説に自身の未知の物質で作られた鱗を成長させる為と言われておる。



 まさか……ガンテツさんが言っていた通り、隕石を喰らいに来た?

 それにドラゴンも隕石の方へ向かっている?


「コハル! ドラゴンの後ろに着こう! 最高の好機だ!」

「わかった!」


 俺達は急いでドラゴンの後を追う。

 ドラゴンの飛行速度に着いていけないが、目的地がわかるので見失う事は無い。徐々にドラゴンを覆うように光も強くなっていく。

 白い光がやがて黄色く、そして赤黒く燃える巨大な岩が見えた。


「……意外と小さい?」


 大きな光を放ってはいるが、本体の岩自体はまだ距離があるもののさほど大きくないように見えた。

 前を飛んでるドラゴンと遠近的に考えてももしかたらドラゴンの方が大きいまである。


「イット見て!」


 コハルが指さすと、遠く先に飛んでいたドラゴンが制止しガチンと金属音のような音が聞こえてくる。


「ドラゴンが接触した!」


 徐々に近づいていくと、寧ろあちらからもこちらに近づいてくる。

 赤いドラゴンの背中が近づき、どうやら隕石に食らいついているようだった。

 恐らくドラゴンの大きさは全長20メートルほど、そしてドラゴンが身体で覆う隕石は……直径10メートルと予測する。


 ガチャンッ!


 っと大きな大きな音が木霊すと、隕石が二つに割れた。


「凄い!」


 コハルは喜ぶ。

 俺達が何もしてない間に、もしかたらドラゴンが何とかしてくれるのでは淡い期待をしたが、


「あ……」


 そんな甘いことは無くドラゴンは割れた小さい岩を追って降下していく。

 隕石は八割ほど残っており、10メートルほどの大きさがこちらに近づく。


「来るよ!」

「減速させる! 身体解析魔法ステータス・オープン!」


 すぐさま魔法を展開する。


身体の情報拡張ステータス・エクステンド!」


 躊躇わずに禁術を発動し世界が減速する。隕石の動きもゆっくりになったとはいえ音速の世界ですら隕石の動きは速かった。このまま触れればそもそも身体がバラバラになる。

 やはりまずは攻撃するしか無い。


混沌螺旋撃カオス・ドリル!」


 音速展開した魔法が手に集約し先ほどのドラゴンよりも大きい超巨大なドリルとなった。本来近距離の魔法だが、その大きさ故に離れた隕石にも先端を当てることが出来る。

 俺はドリルを前に突き出し隕石にぶち当てる。音速世界でも強大なエネルギー同士のぶつかり合いに大きな火花を散らす。

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