第112話 強姦よ
コハルが唖然とし、それにシャルが泣きながら嗚咽を漏らしながらそれに答える。
「シャルは、イット様に小言を少々言っておりましたが、それで傷つけてしまったのかもしれないと思い、今までの無礼を詫びようとして訪れたのです……そしたら、イット様が鍵をかけて身体を使って詫びろと強要を!」
「違う!!」
俺は怒りを抑えきれず、鼻を押さえながらゆっくりと立ち上がる。
「お前は……ロイスと仲良くする俺に嫉妬して、このパーティーから抜けろって脅して来たんだろうが! 俺とソマリが
コハルとソマリへ聞かせるように叫んだ。
コハルは思考がパンクしている様子で「え? え?」と俺等を見比べているが、ソマリの目は据わっており、泣きじゃくるシャルを見ていた。
そこへ、また面倒くさくなるであろう人物が近づいてきた。
「シャル!? 大丈夫かい! 何があった!」
ロイス、そして落ち着いた様子のルドも現れた。彼が現れた途端、シャルはコハルから乗り換える様に抱きつく。
「ロイス様……」
「シャル!? 服が破けて……いったいどうしたって言うんだ!」
ロイスの問いかけに、大粒の涙を浮かべながらシャルは答える。
「また……シャルは、男に汚されてしまいました……ゴメンなさいロイス様……」
それを聞くと、彼は驚きつつ徐々に俺を睨み付けていき、女性陣の前に立った。
「イット君……これはどういうことなんだ」
俺を疑うロイスの言葉。
俺の心は怒りを超えた何かで心が掻きむしられる。
冷静になって、ロイスを説得しなければならいと思考が働くが、一瞬でも弱気な態度を見せてこれ以上疑いの目を向けられるが許せなかった。
奥歯を噛みしめ、全ての気持ちを抑えて言葉に出した。
「……俺はやってない」
「じゃあ、何故シャルの服が破けているんだ。どうして彼女が泣いているんだ!」
ロイスは声を荒らげる※。
俺を疑い敵意を向けている。
彼が、俺に敵意を向けている。
憧れて、尊敬していた彼に、敵意を――
「そいつが……」
怒りや悲しみが込み上げ強く拳を握りしめてしまう。
声も震え始めた。
「そいつが……シャルが自分で服を破いたんだよ」
「……」
「今のそいつは嘘泣きだ。俺のことをハメる為の自作自演をしているんだよ」
「……」
「そいつが嫉妬して、今までソイツは散々俺に嫌がらせをしてきたんだよ!」
最後は思わず声を荒らげる。
沸いてくる感情を何かに投げつけないと自分を保てなくなっていた。
「具体性も信憑性もありませんわね」
聞き覚えのあるフレーズをルドの口から放たれた。
見ると、ロイスが抱きついていたシャルがルドに守られるように抱きついていた。位置的に二人は抱き合っている様な構図だが耳打ちを出来る体制になっている。
ルドが続ける。
「現場証拠がこんなにも揃っていて、往生際が悪いですわよ、この強姦魔!」
何となくだがわかる。
ルドもわかった上で、俺を追い込みにきている。いっそう憎しみが自分の中で立ちこめてくる。
彼女はまだ一方的に続く。
「ロイス様、だから付き合う友人は選んだ方が良いと言ったのですわ。もう暴行するような犯罪者をパーティーに置いておくわけにはいけませんわ!」
「……」
ロイスは押し黙る。
しばらくの沈黙の後、宿舎の店主が騒ぎを聞きつけ廊下を走ってきた。
「お客様!? 何かトラブルでも!?」
そう訪ねられると、ルドが店主に大声で話す。どうやら他の宿泊者の野次馬もいるらしく、ソイツらに聞こえるように……
「ええそうよ! この男がワタクシ達の仲間に強か――」
「ルド!!」
彼女が言いかけた途端、ロイスがそれを大声で制止した。
その声で静まりかえった後に彼がゆっくりと店主に説明する。
「……すみません、内輪もめがあり騒がしくしてしまいました。申し訳ございません。迷惑料でしたら払います」
「え……ああいや、そんな結構ですよ! ただ、他のお客様もいらっしゃるので静かにお願いしますね」
「はい……すみませんでした」
ロイスが頭を下げると、店主も戻っていった。彼が女性陣達に指示を出す。
「ソマリちゃんやコハルちゃんはルドの部屋に集まっててくれ、シャルは僕の部屋に」
各々複雑な表情をしながらも頷く。
そんな中コハルは声を出す。
「わ、私は、イットと話したいこと……」
内容はわからないが、ロイスに一生懸命懇願するが……
「いや、今はダメだ」
と、首を横に振られていた。
そして最後にロイスは俺を見て、
「……君も、自室で待っててくれ」
そう言って各々は解散していった。
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