第11話 立ち向かう勇気よ
「たとえ無理だとわかっていても、貴方の気持ちは分かるわ。同じぐらいの年の子を助けたいと思うのは当然よね……」
「い、いや……ずっと思ってたよ! 他の皆とも一緒に外へ出したいって。でも……オレの力じゃ無理だったから……」
俺は手を前に出し、光り輝く
すると、マチルダ以外の魔物達は驚きざわつき始める。
彼女以外に俺が魔法を使えるようになったことをまだ教えていなかったからな。
俺は続ける。
「でも、魔法を使えるようになったんだ! マチルダが、ここから抜け出す魔法を教えてくれれば……」
「イット!」
言葉を遮るようにマチルダは大きな声を出す。だが大きな声はそれきりで、彼女は真剣な表情で落ち着いた口調で話し始めた。
「……確かに、貴方に教えた
彼女の顔には徐々に、悲しそうな表情が浮かんでくる。
「この牢から上手く脱出出来たとしても、外は人間の傭兵達が沢山いるのよ。たぶん武器も持ってるはず。見つかれば……ただでは済まないわ」
その通りだった。
マチルダの言い分は痛いほど分かる。
俺の中身は35のおっさんのままだとしても身体は4、5歳の少年。訓練を受けた訳でもないただの雑用奴隷だ。
この年で魔法を使えるからと言って、大人数の武装した大人を相手になんか出来るとは現実的に思えない。
「……」
たとえ俺が勇者としてここにきたからといって、何もかもが上手く行くわけがない。
俺なら出来る!
それでも皆を助ける!
何て無責任なことを言えない。
言っても……意味の無いことぐらい分かってはいるんだ。
「……」
「ごめんなさいイット……貴方のことを否定したい訳じゃないの。ただ……」
俯く俺に、マチルダは近づく。
目線を俺に合わせた彼女は問いかける。
「貴方に、"勇気"があるのかを知りたかったのよ」
「……勇気?」
「そう、自分がたとえ無力だと分かっていても、この先を切り開いて行く為の勇気」
俺と目を合わせると彼女は優しく微笑む。
「イット、貴方はとても頭が良いわ。まるで、大人のようにしっかりしている」
「そ、それは……」
「お世辞じゃなくて本当よ。だから、貴方はこの勇気の意味が分かると思う」
俺の中身がおっさんであることに気付いたのか?
いや、そんなはずはないと思う。
彼女はそれだけ俺のこと信用し、見てくれているということなんだと思う。
「オ、オレは……」
例の女の子に目を向けると、キョトンした様子で俺を見ている。
周りを見ると、俺達の様子を魔物の子達は見ていた。
皆、俺に注目している。
俺に……期待しているのか?
「……オレは!」
手が震えてくる。
自意識過剰なのかもしれない。
俺の力に、皆が期待しているような、そんなプレッシャーに俺は……
俺は……
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