第3話 魔法体系よ

 説明はこうだ。


 俺達は各々のトラブルに巻き込まれ、トラックに轢かれて死んだ。

 本来、死んだ人間は天国に行くか地獄に落ちるかを決めなければならないのが世界の理らしい。

 目の前の自称大天使サナエルや他の天使達やらで、裁判みたいことを本当はしないといけないようだ。

 だが今回裁判は行うわず、特例を受けるそうだ。


「今、凄く我々天使は困っています。貴方達の居た世界と違う場所、更に先の……えーっと異世界とも言うべき所で、圧力や恐怖で全てを支配しようとする者が現れたのです。世界は混沌に包まれました」


 某RPGゲームのあらすじを読み上げられているようだ。

 魔王が現れて秩序が乱れたている。

 どうしようって所だろう。


「話を信じろと言われると難しい話だが、君の言いたいことはわかった」

「それは良かったです!」

「それで俺達に魔王を倒してこいと?」

「そういうことです!」

「俺達に頼まないで君達、天使がソイツを倒せば良いんじゃないのか?」

「それは無理です!」


 話によると、天使やら女神やら神やらは、この天国意外の世界に降り立つと世界の理に沿って力が作用してしまうそうだ。

 なので、天使が降りて魔王を即殺! みたいな奇跡を起こすことが出来ず、逆に天使側の防衛手段も薄れてしまい、魔王から返り討ちに遭う危険性があるようだ。

 つまり天使が異世界に行くと弱体化して、魔王が率いる魔王軍に捉えられた挙げ句、あんなことやこんなことをされるかもしれないとのことだ。

 その為、基本的に天使による下界への干渉は禁止とされているそうだ。ちょっと気になるので、サナエルに質問しよう。


「ちなみに、あんなことやこんなことって、具体的にどういうことなんだ?」

「えーと、うーん……何でしょ? くすぐりの刑とかかなー?」

「HAHAHA……」


 ロイスの乾いた笑いが虚しく響いた。

 このゆるふわ大天使様を異世界へ連れて行くと、とても可愛そうなことになりそうなのは理解した。

 このサナエル以外の天使を向かわしても、逆に天使達に被害が出てしまうという判断なのだろう。

 リアルな仕事の話で例えるなら、派遣社員より正社員を大切にするのは会社として至極当然のこと。

 安直だが、天国の住人達を守りつつ問題を解決させる為に雇われた代行者……いや、身代わりを作って派遣させ、あわよくば解決を目論んでいるのだろう。

 ついでだが、この子は時々ポケットに潜めたカンペを覗いているのを見る限り、場馴れはしていないらしい。配属がどうのと言っていたし、なのかもしれない。

 確実に言えるのは、この子よりも上の奴らがいるということ……と、天使の正体を疑りながら俺は様子を窺う。


「あの……僕からも質問良いですか?」

「はい! 良いですよ!」


 ロイスが手を上げると、サナエルは頷く。


「えーっと……何で僕達が、その世界を救う勇者に選ばれたのですか?」


 そうだ。

 しかも、何で俺とロイス君の

 こういう話って、大抵一人の選ばれし勇者がどうのこうのする展開をイメージさせる。

 ロイス君なら、世界記録保持者である称号を持つ将来有望だったはずの人材だ。

 選ばれる理由はいくつかあるだろう。

 でも、俺が選ばれたの何でだ?

 俺はマジで誇れるような技能なんてない、ただの社畜だ。

 その疑問にサナエルちゃんは答える。


「それは良い質問ですね! お二人は、これから転生する世界に適性を持っているからですよ!」

「適正……ですか?」


 ロイス君の言葉にサナエルは頷く。


「どういう意味なのかご説明します! それではお二人共、手を前に出してみて下さい!」

「片手ですか? それとも両手で?」

「どちらでも良いですよ!」


 ロイスは恐る恐る何もない空間に両手を前に出した。

 俺も言われるがまま、何となく片手を出してみる。

 それを確認したサナエルは、よろしいと言わんばかりの笑みを浮かべ頷いた。


「それではお二人共、手に力を入れてみて下さい」


 どういう意味かちょっと分かりづらかったが、とりあえず手の平に意識を集中し力んでみる。

 すると突然、突きだした手の平の先が発光した。


「「うわ!?」」


 当然ながら俺達は驚きの声を上げた。

 光はすぐに縮小し、金色に発光しながらも片手で掴める程の正方形に固形化されていく。

 そして、その物体にものすごーく見覚えがあった。


「こ、これって……」

「六面の立体パズル……だよな?」

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