World 2 date.12.24 楠 美奈

 12/24に戻ってきた私は、ひたすらベンチに座り続けた。

 少しでも動いたら、あの日のように飛び込んでしまいそうだったから。私が飛び込むはずの電車が通り過ぎるのを確認してから、私は一つ息をついた。


「これで……よかったんだよね」


 黒ずくめスーツの男は隣のベンチで相変わらず不敵な笑みを浮かべている。


「私、死ぬんだよね」

「そうだ、今日明日には死ぬ。運命が変わるんだ」


 男はいやらしい表情を浮かべながら、


「どうだ、やっぱり惜しくなったか? 命が」


 私は首を横に振った。


「ふん、相変わらず命を大事にしないやつだ。まあ残りの人生楽しむんだな」


 そう言って男は立ち上がり、歩き出した。


「ちょっと待って。これで最後なんだよね?」


 黒スーツの男が立ち止まった。


「もう、明日には死ぬんだよね?」

「だからなんだ」

「だったらしておきたいことがあるの。あの人に……」


 そのときだった。

 ホームに一人、立ち尽くす人に私の目は釘付けになった。

 その人には見覚えがある。高校生の制服だったけど、私にはわかる。あのとき、ずっと前から私を助けてくれた、そして私の命を救ってくれたあの人だ。

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