ぶらりほのぼの殴り旅


頭痛が絶えない信者達の道を進み、ようやくスゥ様達が待つ門の前まで到着した。

降りて一度軽く挨拶をしておこう。


馬車から降りた途端に腹へやって来るお姫様な衝撃。

抵抗せず受け入れているけど、日に日に突撃の威力が高まっている気がする。


「おはようございます、スゥ様。」


「はぁはぁはぁお姉様お姉様お姉様。」


挨拶が成り立たない変態さん。さり気なく背後からももう一人の変態さんが抱きつく。何度でも顔を埋めて匂い嗅いでるけど汗の匂いくらいしかしないでしょ。


「「お姉様の香りはとてもけしからんえぇ香りです!!」」


………………。

恍惚とした表情に何も言えない。


フォルクスさん達に挨拶を簡単に済ませて馬車に戻る。もちろんスゥ様は当然の如くこちらに乗り込む。

女性4人で和気あいあい。


まぁ内二人は涎を端々に滲ませて時々気持ち悪いけど…。





ここからは共和国までいくつかの町を経由しつつ向かう。

町に寄っても食料の補給の為だけなので次の日にはすぐに移動する予定。


本番は共和国の首都に着いてからだ。

だから、あまり事細かく一日一日を描写するつもりはない。決して面倒くさいからではないのである。




誰かの言い訳が彷徨う中、共和国移動生活三日目。

今晩には町に着くってところでばったりと出会してしまったウルフちゃん達。


欲塗れの獣達が馬車内で度々襲ってくるのにうんざりと心労が溜まってきた俺にぴったりのお相手。

戦闘好きのガルム団長や堅物ノートンが居ないからあわよくば戦えるかもしれない。俺は駄目元で降りて構えを取る兵士達の傍まで駆け寄る。


「聖女様よくぞいらっしゃいました。我々は下がりますのでどうぞお好きに戦い下さいませ。」


「え…良いのですか?」


「はい、フォルクス様から聖女様の好きにさせるよう指示が出されておりますので。」


「そう?じゃあ、遠慮なくやらせて頂きます。」


拍子抜けするほど譲ってくれた優しい兵士達。

フォルクスさん俺の事を分かってくれている。よし、頑張っちゃうぞ。


微笑むフォルクスさんには気付いても後ろで怪訝な顔をするスゥ様達には気付かなかった。

俺は馬車生活での鬱憤を晴らすかのようにウルフちゃん達に突撃していく。

小さくか弱そうと判断してしまったウルフ達は余裕な面持ちでその場から動くことなく待ち構えていた。


愚かな選択を選んだウルフちゃん達。


可哀想だけどこれは食うか食われるかの戦いだ。動く気が無いならそのまま逝くといい。

一匹に一拳で首を殴り折っていく。

途中で俺を危険認定しても既に遅し。

さようならウルフちゃん達、君達の事は晩御飯のおかずに出るまで忘れない。



遭遇した獲物の殲滅を終えて馬車へ戻る。

そこには何か考え込むスゥ様達が居た。



「どうしたの?もう魔物は倒したよ。」


「いえ…なんでもございません。」


「大丈夫?皆眉間に皺が寄っているけど。」


「はい、大丈夫です。ちょっと私達考え事をしていただけですので。」


俺が三人を心配するも大丈夫だと言う。

顔色が悪い訳では無さそうだしどうしたんだろう。俺と同じで繊細な年頃だから何かしら悩みでもあるのかな。

もし相談されたら親身になって相談に乗ってあげよう。



結局、今晩はぐーすか眠りに落ちるまでに相談される事はありませんでした。





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