第38回アリス教信者杯2
聖女様が知らぬ存ぜぬで始まってしまった大会。
ミーナの年相応な可愛らしい合図とほぼ同時に会場中の戦士達が見守る権を獲得する為に動き出した。
この場において元の職業など関係ない。騎士も農民も聖職者も老人も子供も全てが狂った戦士へと変貌していく。
何人かピックアップして行こう。
まずは王都でシスターを務めるAンジェリカ(匿名希望)。彼女は普段から聖女様とお近付き出来る立ち位置であるにも関わらず素直でない性格から同僚よりもどうしても一歩もニ歩も退いてしまう。
そんな自分はもう嫌だ。
そう決意したからここに居る。ギラリと高圧的な瞳には譲れられない炎が灯っていた。
「お嬢さん、ボーッとしてたら終わりだぜ!」
意気込む彼女に容赦なく迫る男。相手が女性とか関係なく棍棒を振り回して来た。
「ふん、べ、別にその程度大したことないんだからね。」
寸での所で横へと躱してそのまま流れるように腹部へシスター業で身につくはずのない強烈な蹴りを放つ。男がその威力に耐え切れるはずもなく呻きと共に崩れ落ちた。
それを見た周りの人達はAンジェリカ(匿名希望)を強敵と判断して共闘しようと目配せする。
シスターである女性相手に複数人戦、卑怯と呼ばれようとも勝てば良い。ここでは、勝利こそ正義である。
だから、Aンジェリカも何も文句は言わない。
「「貰ったぁ!!」」
四方から彼女目掛けて剣や斧が迫りくる。
でも、傍から見れば絶望的な状況でも彼女は涼しい顔。
「ふん、無駄ですわ。くらいなさい『高圧』!!」
ギンと目つきがより一層吊り上がる。彼女の周りを高圧なオーラが蔓延していく。
そして、高威圧を浴びてしまった周りの者達は恐慌に陥り固まったように動けなくなる。
「ごめんあそばせ。」
優雅に微笑みながら動けなくなった者達を一人ずつ一人ずつ見惚れるほど鮮やかに意識を奪っていく。
この様子から彼女は勝ち残る事が出来るだろう。
そして、次に参ります。
お次はこちらも聖職者であるにも関わらず参加したTーラス(匿名希望)。
幼きながらも真の聖女様としての高貴な立ち振る舞いをする御方に崇拝してしまった哀れな人、更には自身の出番の無さに嘆きここらで一つとやる気満々で参加を決めた哀れな人。
今日は聖堂からこっそりと拝借して来た長椅子を武器に参加している。
Tーラスは開始の合図と共に自分を軸に回転して長椅子をぶん回していく。自分へ近付く者達は皆長椅子の餌食となっていく。
「フッハハハ!誰も私には近付けませんよ。勝利します、勝利してみせます!」
自身の戦法に勝ちを確信して不敵に笑いながら回転し続ける。
そんな若者にほほほと笑うお婆ちゃん。
「おうおう若いのう。ほれ、これをやろう。」
ポイッと回転するTーラスの顔面目指して投擲された小瓶。
中身は蒼く綺麗。
瓶の蓋は緩くTーラスの顔に当たった途端に中身が溢れ出てくる。
バタン
液体を浴びたTーラスは呆気なく倒れた。
そう彼の出番はこれにて終了してしまったのでした。
そして、Tーラスの次に出番が訪れる日までのお祈りが始まるのでした。
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