第38回アリス教信者杯
共和国行きが決まった。
出発は二週間後と余裕がある。俺が目下に考えるべきは連れて行く人。姫様は元々一緒に行く事が確定しているから良しとして、他は誰と行こうかな。
真っ先に思い浮かんだのはやっぱりロコルお姉ちゃん。
巡礼の時も前回の教国旅行も都合上一緒に行けなかった。せっかくなら楽しい思い出を作りたい。
ディーナお姉様にも紹介したい。
ということでロコルお姉ちゃんは誘おう。
さて他には誰を誘おうかな。誰でも誘っていいと言っても良くてあと一人くらいだよね。………………ちょっと不安になるけどミーナちゃんを誘おうか。
ただ姫様とミーナちゃんの組み合わせは旅路中俺の貞操に危機が迫りそう。
最悪、その都度首を締めて眠っててもらえばいい。
うん、これで俺が誘う人は以上。そういえば護衛でノートンって来るのだろうか。
一方広場にて。
一人の男性を囲むように数百にも及ぶ
群衆もとい白装束軍団が集っていた。そして、囲まれた男エルドは深く息を吸って大きく宣言。
「お前らぁ!共和国に行きたいかー!!」
「「「うおおぉぉぉーー!!!」」」
「我らが女神様を陰から見守りたいかぁー!!」
「「「どぅおおぉぉぉー!!!」」」
「では第38回アリス教信者杯共和国陰から見守り隊編成トーナメントを開催する!!」
堂々と女神様張本人に気づかれないように始まったアリス杯。
今までも大なり小なりで催されていた大会。開催都度参加人数が増えていっている。これで拳を交え勝ち上がった数名が特等位置でアリス様を見守る事が出来る。由緒正しき大会である。
前回の教国行きでも密かに第36回大会で優勝したエルドと残り上位9名が見守っていた。ちなみにミーナちゃんは前回惜しくも11位、くじ運がその時ばかりは悪くエルドと当たってしまった。
そして、今回は共和国行きを決める為大規模となる。4日ほど掛けて精鋭のストーカーを厳選していく。信仰される本人様は栄誉顧問であるロコルやスフィア様達による誘導で気づく事はないだろう。
闘技大会に使われる会場は裏社会を牛耳る首領ことブラッドが提供してくれた。こうでも貢献しないと出番回数が増えないと考えたのだろう。
威勢良くブラッドの下っ端達が出場する信者達を会場へ案内する。
会場に到着したエルドと信者達の視界に入ったのは、設置された台上に立つアリス教の創立者達。
ミーナにスフィア様。
信者達は皆台の上の重鎮達に目と耳を傾けていく。
全員が注目したと判断したのかスフィア様が口を開く。
「どうも司会進行を務めさせて頂きます、お姉様の僕のスフィアです。」
「同じく司会進行のミーナです。私は暗部からの報告で共和国への同行が決定致しましたので今回はこちら側に居ます。」
「それでは最終確認です。この場に居る皆様は大会にご参加する者達で間違いないですね?」
スフィアの問いに全員が息を合わせたかのようにぴったりと頷き肯定する。
「今回はまた前回と比べて更に参加者が増えました。なのでトーナメント式ではなく10人になるまで戦い続ける大乱闘戦と致します。もちろん協力しても構いません、アリス教の教えで1対多戦は卑怯とはなりませんからね。あと、得物はご自由にどうぞ。但し殺してはいけません。気絶もしくは降参を訴えた時点でその者は敗北となります。以上です、何か質問はございますか?」
誰も質問をする事は無く、己を鼓舞することに集中している。
「では、開始の合図はミーナが担当します。みなさん、準備は良いですか?」
「「「おおぉう!!!」」」
「では、さーん、にー、いーち………始め!!」
ミーナの合図と共に始まった激闘。
世界中で最も熱い戦いが幕を開けた。
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