共和国のお姉様より2
泣き止んだ国王は一枚の手紙を取り出した。
そして、俺の前に置く。
「ズビビビまぁ読んでみてくれ。私は別の手紙を貰ったからそれはアリス殿とスゥへと宛てられた手紙だ。」
国王に促されるまま封を切って何やら書かれた便箋を取り出す。
そして、スゥ様と仲良く一緒に内容を覗き込む。
送ってきてくれたのは、アーランド共和国の大人の色気ムンムンお姉様ことディーナさんからだ。
手紙の内容は以下の通り。
・今日から一月半後にアーランド共和国の王様の誕生祭が開かれる。
・その誕生祭を一緒に祝わないかってのを建前に遊びましょうのお誘い。
・他にも誘いたい人がいたら誘ってもいい。
こんな感じの内容をディーナさん口調で書かれていた。力強く書かれた筆跡から必ず来てねという激しい熱意を感じる。
「王様の誕生祭ですか…。」
「そうだ、ちなみに私の誕生祭はそれのニ月後だ。別に深い意味は無いからな。別に祝って貰いたいなんて思ってないからな。」
泣き虫の国王へ俺と姫様はジト目を送る。
その視線から逃れるように咳払いをする。
「ん、こほん…さて隣国からの招待だが受けるかな?」
交流会で唯一といって言いほど親しくしてくれたディーナお姉様からのお誘い。
でも、一つ懸念がある。
「とても行きたいですけど、ついこの前他国へ出掛けたばかりです。他国へと出向いてばかりではこの国の聖女としての務めが疎かになるのではないですか?」
相次ぐ旅行で自国の人達への治療を怠るなんてあってはいけない。
姫様が隣でうっとりと涎を垂らし始めた。
「お姉様…素敵です。ちょっと私を抱きませんか?」
抱きません。
実の娘の雌の顔にドン引きする父親が俺の懸念に対して答えてくれる。
「確かにその心配は分かる。しかし、実はある報告をもらっている。」
「ある報告?」
「あぁ、実はこの国の死亡率がかなり減っている事が分かったのだ。原因究明のため調査官を各地に派遣してその理由が判明した。」
死亡する人が全体的に減ったなんて只事ではない。
ゴクリと唾を飲む。
「その原因はズバリ…」
「そなたを崇め讃えるアリス教信者達のお陰だと判明した。」
出たアリス教。
本人に断りもなく勝手に発足された忌まわしき宗教。
国王は続ける。
「彼等達が各領地で人々にアリス教を布教する傍ら人命救助にも率先して動いているらしい。また冒険者の中にもアリス教を信仰する者が居るようで新人冒険者達へ徹底した気配りや手助けをしているそうだ。そして、助けられた者達がまた新たな信者と成ってまた新たな信者を増やす為動いている。そう報告された、いつか我が国が乗っ取られそうで怖い。乗っ取らないよね?」
乗っ取りません。
頭を抱えたい。いやもう抱えた。くそ、どうしてこうなった。
「ふふ、お姉様が王様で私が王妃…ぐふふふ。」
隣のお姫様が妄想で気持ち悪くなっている。
「と言う訳で聖女殿が他国へ少しの間旅行しても問題無い。アリス教大司教の男性からも「女神様の素晴らしさを共和国にも教えられる良い機会です。この国は女神様の僕である我々がしっかりと守ってみせましょう。」と頼もしい言葉を頂いた。だから、とても大丈夫だと思う。」
その大司教を名乗る野郎をすこぶる殴りたい。絶対頭文字がエで最後がドの奴だ。
でも、共和国に行っても大丈夫と国王がはっきりと告げた。もう信者の事は諦めて行こうかな。
「はぁ…分かりました。問題が無いなら行こうと思います。」
こうして、共和国行きが決定しました。
出発は二週間後。
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