共和国のお姉様より



教国から帰還してもう一月と少し経過した。

ここ毎日は聖女活動としての治療やこそこそっと冒険者としての活動ばかりになっている。

偶にスゥ様に誘われてお城でお茶会なんかもする。そういえば、最近はそのお茶会にぐるぐる巻き髪の加工令嬢が参加するようになっていた。

確か名前はレーネアだったかな。


以前、初めて会った時はツンケンどころか敵愾心丸出しで接して来たけどもうその面影はない。大分反省したのかあの時のことをしきりに謝罪をしてくれた。

それからというものはお茶会に平民のミーナちゃんを連れて来ても何も言わずむしろ普通に年下の子供を相手するように優しく接している。


何があったんだろう?

あと、どうして毎回俺の顔を見て頬を赤らめるんだろう?


「ふふふ、どんな相手だろうがお姉様とお会いすれば誰でもああなります。それだけお姉様は魅力的で私の未来の嫁様です。」


うん違うよ。


「スゥ様が正妻なら私は側室ですね。」


うん違うよ。

ミーナちゃんそんな当たり前みたいな顔は止めよう。


そんなお茶会な日々。



そして、今日もお城へ行く。けれど残念ながら姫様からのお誘いではない、国王からのお誘いだ。いつもの使者がやって来て馬車へ乗り込む。

どこからか嗅ぎつけたアリス教なんて勝手な宗教を名乗る人達が道を作っていく。


祈りを捧げる体勢で道を作る。

最初は一緒に戸惑ってくれた使者も今では平然とした表情。

あの頃の彼はもう居ない。



お城に到着すれば新たな道が完成していた。もちろん執事とメイド達の織りなす道。

そして、ここでも使者は落ち着いた様子。


もうこれが彼にとっての想定の範囲内になっちゃったんだろう。



遠い目になる俺に死角から抱き着いてくるいつものスゥ様。


「へへ、お姉様お姉様お姉様。」


「こんにちわスゥ様。まさか馬車の上から抱き飛んでくるとは思いませんでした。」


そんな俺を気にした様子も無くひたすら顔を擦りつけてくる。ミーナちゃんもそうだけどこの年代の子は皆顔を擦り付ける習性でもあるのだろうか?


ひたすら擦り倒したスゥ様は俺の手を取りテカテカと満足気な顔で国王の元まで案内してくれる。

お姫様の手がやたらネチャアとしているけど手汗だよね?手汗だよね?



案内の元やって来たのは以前教国からのお知らせを聞いた客間。

中の面子は国王とアルフ、申し訳ない程度に宰相も居る。


国王と対面する形でスゥ様と一緒に座る。座った途端に顔を俺のお腹へ埋めるスゥ様、最近躊躇いがない。君のお父さん顔が引き攣っているよ。


「あースゥ?今からお話があるからちゃんと聞こうな。聞いてるか?ねぇ聞いてる?お父さん悲しいなぁ…。」


「スーハースーハースーハースーハー。」


「む、無視…。良いのかなぁ、お父さんは王様だぞ。よし、王様として怒っちゃうぞ。良いのかなぁ良いのかなぁ。」


「スーハースーハースー……うるさい。」


「………はい。」


あーあ王様を泣かしちゃった。

年甲斐もなく威厳もなく泣いちゃった。両隣にいるアルフと宰相が懸命に慰めている。


これは私が注意しないと駄目か。


「スゥ様、王様を泣かしちゃ駄目でしょ。ちゃんとお話を聞こうね。」


「お姉様…スーハースーハースーハースーハースーハースーハー。」


「スゥ様ちゃんと聞こうね。じゃないとその首をへし折りますよ。」


「…………はい!」


何段階か声音を下げて囁く。

すると、ピタッと動きを止めたかと思えば真っ青にした顔を急いで上げてくれた。


どうせ折ってもすぐに回復させるから俺は躊躇わず折る気概だ。

お姫様に対してへし折る心配が無くなって良かった。



ようやく本題に入ります。


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