第38回アリス教信者杯3



出番が潰えた人は放っておいて次へと参ります。


お次は刃を向ける相手達に威嚇するように睨む裏社会を牛耳るBラッド(匿名希望)。得物は二本の剣、守りなんて要らない攻撃に特化した聖女様好みの戦法だ。


Bラッドを厄介な敵と判断した周囲の者達は共闘するようにジリジリと迫ってくる。


「お前達が何人掛かってこようが俺の敵ではない。」


痺れを切らした一人が剣を振りかざす。

しかし、彼には容易に避けれる。裏社会の頂きに立つためにくぐり抜けてきたいくつもの死線が経験となり力となる。

彼は智者でありながら武にも精通した男なのである。だからこそ、何十人もの人間を従えられるのだろう。力を持ち人望をも優れる人間などそうは居ないだろう。


「どうした、まだまだ戦いはこれからだ。幾らでも掛かってぐふっ!?」


突如として真上から訪れた衝撃に裏社会の首領は意識を放ってしまった。

またしても彼の出番はここで終了した。

どんなに凄かろうと所詮Bラッドなのだ。


「まだ奇襲には甘いようですね。祈りが足りませんよ祈りが。」


巨大なロザリオを肩に載せてどこ吹く風の如く淡々とするいつかのシスター。

気絶したBラッドを踏みつけて平然と次なる獲物を探すのであった。

唖然とする周りが恐怖に染まるのはそう遅くはない。






そして、最後に注目するのはもちろんこの人Eルド(匿名希望)。


彼は前々回優勝者として警戒すべき存在。開始直後から先手必勝とばかりに四方八方から斧やら剣やらナイフやらが彼目掛けて飛んでくる。


しかし、Eルドは怯まない。迫る投擲物を一切気にせず片膝をつきただ祈っている。とてもここが戦場とは思えないほど神聖にみえてしまう。


「我らが偉大なる女神様、どうか卑しき私めにお導きをお与え下さいませ。」


何の効果も無いはずの祈り。

それにも関わらず立ち上がったEルドはゆらゆらと投擲物を紙一重で躱していく。見る者によっては投擲物が避けているように見えるだろう。

信仰という名の思い込みは、ただの聖職者のおっさんを化け物へと昇華させてしまう。


「アリス様バンザーイ!」


「がはぁっ!?」


「アリス様バンザーイ!」


「ぐふぅっ!?」


「アリス様バンザーイィィィ!!」


「ぎゃあぁぁ!?」


狂った聖職者は一回一回女神様へ感謝を告げながら対戦相手の顔面へ思いっきり拳を打ち付けていく。一度で意識を女神様へ献上しなかった者にはもう一度顔面へ叩き込む。

なんて信仰心の高い人なんだろう。

これがアリス教の大司教様である。


慈愛と慈しみと血生臭い拳を織り交ぜた宗教、それがアリス教です。


素晴らしいですね。





そして、第38回アリス教信者杯は終了しました。


死屍累々の中で今回も勝ち上がったのは殆どが上位常連組。

けれど、唯一初めてのストーカー権を取得した者も居た。素直になれない彼女が共和国で少しでも女神様とお近付きになれる事を心より願っております。


最後に異界からやって来たTロー(匿名希望)はもちろんこの大会に参加しましたが、アリス教創始者の一角である妹を持つお兄さんにあっさりと意識を落とされました。


自分よりも何歳も年下の男の子に負かされたTローは同じく敗れた裏社会の首領と泣きながら飲み明かしたそうです。

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