帰ろ帰ろお家へ帰ろう



またしてもお預けをくらった。

さっきまでビビって隠れてたくせに最後だけ横取りとか戦士の風上にも置けないよ。

以前ノートン達でも対処出来た怪物達、当然ながら団長格がいればより簡単に処理が完了してしまう。


膝を崩し呆然とする俺を嘲笑うかのように次々と怪物達は倒されていく。



ハッと意識を取り戻した時には既に怪物達は全滅されてその死体はひと塊に積み重ねられていた。そして、生み出した張本人であるドワノフ爺さんは騎士達によって取り押さえ終わっていた。


「くぞぅ離せ…離せぃ!!儂は枢機卿であるぞ無礼であるぞ!!」


地面に組み伏せられても一向に態度を変えることはない。なんでこう豚司教系は無駄に精神力が高いのかな。

あ、寄ってきた姫様が手刀で気絶させた。


そして騎士にスゥ様がそっと鉄の鎖を渡す。あれで縛れってことだろうけど、お姫様の常備品が鉄鎖ってどうなんだろう。


アルフィンさんは後ろ手に縛られたドワノフと気絶してしまった勇者様を引き摺って何処かへ連れて行っていく。多分牢屋かな、でもその前にちょっと待って。


連行するアルフィンさんを引き止めて顔面ボロボロの勇者様と鼻血だらけの爺さんを治療する。


「ど、どうして貴方様の敵であるこの者たちを治療したのですか?」


いきなり治療した俺に驚いている。


「ん?えーと過程は酷いものですが、怪我した人が目の前に居たら助けるのが聖女ってものでしょう?」


驚きを通り越して唖然とした様子のアルフィンさん。


「貴方様は……いえ貴方様こそ聖女様と呼ぶに相応しい御方なのですね。」


「えっ?こんな拳で語る私が相応しいだなんてアルフィン様もお上手ですね。」


そんな俺の返しに苦笑したアルフィンさんは踵を返して会場から出て行った。

その後、駆け寄って来た教皇様が土下座をしようとする事件が起きたけど、それ以上の問題は無くこれにて交流会はお開きとなった。




それから2日後に聖都を発ちました。

あんな出来事が起きた以上長く居続けるのも不安が多い、それに一応交流会も終えた。

そういうことで一人また一人と聖女達は自身の国へと帰って行った。

俺はというと出発までの二日間は仲良くなったディーナ先輩とお茶会を楽しんだり、再度土下座しに来た教皇様を止めに入ったりと比較的のんびりと過ごせた。



そして、シェアローズ王国へと出発。

教皇様や名も無き教国の聖女様にお別れを告げる。

そういえば出発する時にはタローさんも戻って来ていた、エルドさんも居たけど…。

数日離れていたタローさんは妙に風格が歴戦の戦士感を漂わせていた。どんな特訓をしたのだろうか?


あの気弱そうだった青年がギンギンと血走った目つきで筋肉も輝いている。でも、身体も服装も何もかもボロボロ。急いで治療を施したら涙を流す始末。俺の呼び方も聖女様から女神様へと呼称が変化していた。

それを満足そうに見るエルドが憎い。


もうあの頃の彼は死んだ。

彼もまた重い病気となってしまった。

哀しい寂しい風を吹かせながら馬車が動き出した。



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