番外編 こうして狂信者は造られる



僕はタロー、勇者召喚に巻き込まれたらしいただの青年。

でも、ある御方との出会いで生まれ変わることが出来ました。


そして、僕はそんな偉大で崇高なる御方の肉壁及び剣となる為立ち上がります。



アリス様への決意を表明した日、僕はエルドさんに連れられて聖都の路地裏までやって来た。治安の悪そうな薄暗い雰囲気に内心はびくびく。

ある程度奥まで進んで行くと、顔から足までを白装束で覆った怪しい集団が待っていました。一人は成人男性くらいの背丈のロザリオを背中に背負ってたり、また一人は鍬や鎌を暗器のように装備していたりと不気味さが目立つ。


彼等は何者だろう?


不安が表情にはっきり出ていたのかエルドさんが安心させるような笑みで紹介してくれる。


「タロー殿、心配はございませんよ。彼等彼女等は私達と同じ同志です。偉大であられる御方に全てを魂すらも捧げる忠実なる僕でございます。ね、仲間でしょう?」


エルドさんの瞳は冗談ではなくマジな目だ。

周りにいる彼等も暗がりの中妖しく光る目は我らは女神の為にあると物語っている。

本物の覚悟を目の当たりにして改めて決意する。これくらいの本気でなければあの御方の隣には立てないのだと。

彼らに負けていられない、僕は力強く返事をしました。



「は、はい!」


僕の覚悟を認めるかのようにエルドさん達は息の合った聖女様コールをする。


「「「聖女様バンザーイ!聖女様バンザーイ!」」」


「ば、バンザーイ!」


ちょっと怖いけど郷には郷に従わないといけない。

しばらくの間、聖女様コールは路地裏で鳴り響いた。




「それではタロー殿始めましょうか。」


バンザーイを続けていた僕にエルドさんが優しく声をかけて来た。


「は、始める?」


「はい、貴方が女神様の隣に立つに相応しい者となれるよう不肖ながら鍛えさせて頂きます。よろしいですか?」


にこやかな口調なのに背筋が凍るのは何故?

でも、今更断るなんて選択肢は無い。落ちこぼれの僕なんかに天使の振る舞いをしてくれた少女を護りたい。


僕は震えそうな気持ちを抑えてエルドさんを強く見る。


「はい、宜しくお願いします!」


「…………ふふ、良い目になりましたね。では、女神様の為に一度地獄へと参りましょう。」


あれちょっと後悔が湧きそう。

でももう遅いとでも言うようにエルドさんを先導に白装束集団が僕の周りを囲う。

そして、歩き始めたエルドさんについて行く。エルドさんの案内で訪れたのは聖都の何処かの建物、エルドさん曰くアリス教聖都支部らしい。ちゃんと受付もあり聖堂も設けられている。


こんな所でトレーニング?


てっきり外で魔物を倒したり白装束の誰かと組手かと思っていた。

首を傾げる僕をよそにエルドさんは構わず進んでいく。


ここが聖堂。

祭壇や長椅子が並べられた中で一際目立つのがアリス様をかたどられた大きな像。それを拝むように他の白装束の人達がお祈りを捧げている。


「こちらです、付いて来てください。」


ポケーと眺めてしまった僕を促してエルドさんは聖堂の入口付近の壁を数回叩いた。

すると、ガゴっと何かが作動すると共に大人一人が通れるくらいの空間が出現、そこを覗けば下へと続く階段があった。



「では、行きましょう。」


ニコリと微笑んだエルドさんはその階段を降りていく。僕も生唾を飲み込んでその背中を追い掛ける。



そして、辿り着いた先で目にしたのは沢山の謎の器具で汗水血反吐を流す白装束の方々でした。


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