ドキッ不安だらけの交流会4
反省なんて何のその。
昨日の出来事は全て憎しみと怒りに変えてやって来ました勇者様。
標的はもちろん俺でしょう。
あの試合での教訓が自己鍛錬でなく復讐に向いたのは残念でならない。
キョロキョロと会場内を見渡すお馬鹿さん。見つかれば厄介事待ったなし。
どうか見つかりませんようにと祈りながらテーブルに並べられた肉料理に食らいつく。
うん、上品な味付けで美味しいあ…目が合った。
「そこに居やがったか…この卑怯者が!!」
ただでさえ豪快な入室で周囲の目を一身に集めているのに、更に大声で完全に脚光を浴びる形となった。
試合での禁止事項を無視して魔法を放ちまくった人間が何を言っている。俺だけでなく昨日の試合を観戦した者達は全員そう思うだろう。
卑怯だったのはどちらかと。
そんな思いも露知らず馬鹿勇者は顔を怒りに染めながら、この場に相応しくない足取りでズカズカとやって来ました。
そして、試合とは違って本物の剣を鞘から抜いて俺へと構える。
その様子を見ていた者達の悲鳴が響き、会場中がざわめきだす。
「な、なにをやっとるか勇者よ!」
挨拶を済ませたばかりとあって教皇様は比較的近くに居た。ご乱心の勇者がか弱い乙女聖女に刃を向けている、そんな状況を見過ごせるはずもなく困惑した表情で止めに入る。
「おっさんは黙ってろ!こいつは勇者である俺様に拳を向けた悪だ!この俺様が悪だと感じたんだ、こいつはいずれ災厄となり得ると言えるだろう?だから、今この場で正義の名のもとに成敗する。」
会場に広がる沈黙。
馬鹿勇者の域にまで達さねば理解出来ない理論、誰もが困惑を越えて呆れが勝る。
100人中98人が意味分からんと思う。
そんな意味不明と思う暴論に納得もとい賛同するのは勇者のみならずもう一人居た。
勇者の熱愛相手である枢機卿の爺。自分の私兵か知らんけど兵士達が俺らの周りに来れないよう配置させている。
「そうである。本来なら勇者様が負けるはずがない。災厄である小娘が何かしら卑怯な小細工をしたのだろう。」
「そうだ!だから、俺様は不覚にも負けてしまったんだ。卑怯者の悪魔め、すぐに殺してやる。」
今にも斬りかからんと殺気を放ってくる。
「お前達なにをおかしな事を言っている!気でも狂ったか?と、とにかく剣を収めるのだ!」
慌てたままの教皇様は周りの制止を振り切り、俺と勇者の間へ両手を広げて立ち塞がった。教皇様の意外な行動力にちょっと驚き。
「邪魔だ、おっさんはどいてろ!」
「きゃあっ!?」
流石に教皇様へ剣を振るう事は無かったものの、横へと乱暴に突き飛ばした。
教皇様のおじさんとは思えない可愛らしい悲鳴が上がる。教国聖女様が慌てたように介抱に向かう。
ちょびっとイラ。教皇様に対してじゃないよこの馬鹿勇者にだよ。
「ふん、ようやく自分の罪を認めて死ぬのが怖くなったか?」
俺が苛々で震える姿を得意の勘違いで勝手に解釈する馬鹿。
「ふはは、寛大な俺様は許してやらん事もないぞ。そうだなぁ、裸になって俺様の足をペロペロ舐めて許して下さい勇者様と言えば許してやろう。」
イライライライラ。
「どうした?ほら、裸になれよ。ほら、ほらほら。」
イライライライライライラブチッ。
暴論に暴言。
臨界点はとうに超えた。
聖女らしく優しい笑みを携えて俺はゆっくりと口を開く。
「良い加減その生ゴミみたいな臭い口を閉じて下さいませ糞粕豚勇者野郎様。」
ニッコリ笑顔で優しく指摘をした聖女様でした。
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