ドキッ不安だらけの交流会2



広いホール会場。

聖女と思しき女性達が色鮮やかなドレス姿で思い思いに食事や談笑を楽しんでいる。

近くにはそれぞれの護衛であろう騎士や共に教国へとやって来た貴族達も交流に励んでいる。



でも、俺が中へ入ったら一時的に視線が集まりヒソヒソっと何やら俺を見ながらお話を再開する。

もうずっと溜息。

聖女は聖女でも俺以外貴族出ばかりで相容れると思えない。挨拶周りを簡単に済ませて残りの時間は隅で潰しとこう。


「挨拶が済んだらご飯でも食べて時が過ぎるのを待つといい。外交は俺達に任せとけ。」


アルフが励ましを送ってくれた。久しぶりにかっこいいと思った。普段は妹に気圧されるお兄ちゃんもやる時はやるんだ。


「うん、どうにかこの交流会を乗り切りましょう!」


シェアローズ王国組は皆で小さく意気込む。

そして、始まった挨拶周り。


アルフを先陣に構えて一番近い所から順番に声を掛けていく。フォルクス公は顔馴染みの人達に声を掛けてくると別行動した。



アルフが先頭で良かった。

近づく俺へ不快そうに顔を向けていても、アルフが前に立てば彼の放つ圧倒的王子感が聖女をどんどん懐柔していく。


俺の存在を忘れたようにギラギラした目で王子様を捉えている。一緒に来た貴族達は相変わらず不躾な視線だけど減るだけ助かる。趣味や好きな女性像をグイグイ聞かれて徐々に引き攣っていくアルフ、心の平穏は彼の犠牲の上で成り立っている。


でも一人一人に時間掛かり過ぎ、無駄に笑みを振り撒くから女性達が狩人になっちゃうんだ。


俺は早く終わらせたいってことで次へ行こう。まだ物足りなさそうに指を咥える聖女方を放置して挨拶作業再開。



次に訪れたのは、親子くらいの年の差な男女と側で待機する騎士達一行の元へ。

近付いてくれば徐々に彼らがはっきりとしてきた。

アルフと同い年くらいで更にキラキラを周囲に帯びている青年、あれは多分王族系。金髪だし笑顔が爽やかだもん。カッコ良さ度合いも良い勝負しているぜ。



次いで女性の方。

この人は聖女かな。とても若く見えるけど目元辺りに少し皺がある。でも、俺には無い色気むんむんで黒いドレスが更に拍車をかけている。しかも、巨大な2つのお山様をお持ちだ。祈願したらその恩恵を貰えないだろうか。

それと珍しいことにやって来た俺を見てもどちらとも嫌そうな顔をしない。むしろ、笑顔で出迎えてくれた。


「ご歓談中失礼する。私はシェアローズ王国より使者として参ったアルフ・シェアローズと申します。」


キラキラな青年はそんな挨拶に対して気さくに返す。


「やぁ、アルフ殿お久しぶり。僕らは初めましてでも無いんだ固っ苦しい挨拶は抜きとしよう。」


おや?


「ふふ、そうよアルフ坊。今更そんな肩のこる挨拶は不要よ。」


おやおや?

この二人はアルフの知り合い?


「……はぁ、相変わらずだな二人共。一応、他の国も集まっているんだぞ。」


「まぁまぁ良いから良いから、それよりも新たな聖女殿とご挨拶させて頂きたい。」


そう言ってアルフへ向けてた目線を俺へと照準を変えてきた。

それに答えるように一歩前出てドレスの端をちょんと摘んで淑女の礼。


「初めまして、私はシェアローズ王国にて聖女の証を承りましたアリスと申します。どうぞ宜しくお願い致します。」


「これはどうもご丁寧に。私はアーランド共和国第2王子のセイルです。昨日の試合とても面白かったよ、是非とも御手合わせ願いたいね。」


あ、この人と気が合いそう。

ガルム団長同様に同じ匂いを感じる。

差し出してきた手を握る。やっぱり力を込めてきたから俺もちゃんと挨拶を返す。


軋み合う挨拶を先に降参したのはセイル王子。


「はは、これは参ったね。君は本当に聖女様かい?これでも僕は結構鍛えているんだけどなぁ。」


「いえいえ、セイル様もなかなかのものですよ。是非機会があれば御手合わせをしたふぎゅっ!?」



突如俺の顔を覆うムニムニ。

窒息しそうでも抗えない。離してやまない柔らかい弾力。


凄い。



もう凄い。



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