聖女VS勇者2
待ちに待った勇者様との対決。
煽り合戦は俺の勝利。
簡単にキレてくれて戦いやすくなる。相手は仮にも勇者決して弱くくはない、多少は前もって挑発で動きが単調になってくれると有り難い。
どんな相手でも油断せずに相手取る、それが俺の戦士としての矜持だ。
「小娘よ、女神様が遣わされた勇者様に対して何たる言い草か。立場を弁えよ。」
「あら申し訳ございません。つい戦いを前にしたら挑戦的になってしまいました。」
ドワノフは俺にだけ注意してくる。立場を口にするなら聖女である人間を小娘って言ったら駄目でしょうが。
「ふん、小癪な餓鬼よ。ユータ殿この者にしっかりと躾をして下さいませ。」
「あぁ、俺様に任せな。世間を知らないお子ちゃまに俺様が直々に調教してやろうではないか。」
またジロジロニタニタと舐め回すように見やがる。こんな気持ち悪い勇者なんかに躾られてたまるかっての。
ようやく始まる。
「これより神が遣わした勇者様ユータ殿と聖女アリスによる親善試合を行なう。審判はこの私枢機卿であるドワノフが務める。両者前へ!」
お互いに一定の距離を保ち向き合う。
「始め!!」
ドワノフの合図で試合開始。
「よし、まずはお前から攻撃をさせてやふぉんっ!?」
この勇者は戦闘の素人か?
何処の世界に試合中全くの警戒も無しで悠長に話しかける馬鹿がいる。しかも、戦士に対して先を譲るだのなんだの相談って馬鹿だね。
こんな隙だらけの無防備状態、大人しく殴られたいとしか見えないよ。
だから、遠慮なく殴らせて頂きます。
この距離ならほんの一歩ですぐ目の前。驚いているところ申し訳ないけど、とりあえず一発いきますよ。
右拳をギュッと握って思いっきり振りかぶる。
狙いはニタニタと気持ち悪い視線を送ってくれたその顔面。
残念ながら振り終わってもその顔面を潰すには至らなかった。勇者の名は一応伊達ではないようだ。咄嗟に木剣で顔をギリギリ守りやがった。
まぁ面白い鳴き声が聞けたから良しとします。
それに鳴き声以外にも面白いものが見れました。
「き、貴様ぁ…。」
憎々しそうに俺を睨む偉大なる勇者様のお鼻の両穴からポタポタと滴る赤い線。
幾ら勇者様でも油断しきってた状態からの俺の一撃を全て防ぐのは到底無理だったようだ。
まぁ死なない程度に潰す予定の攻撃を鼻血で抑えたんだから凄いよ勇者様。
「ぐう…この卑怯者がぁ!」
「ふふ、そのお顔の方が愛嬌があって親しみやすいですよ。」
俺の助言は勇者だけでなく観客の人達にも聞こえてたようで、クスクスと笑う声がちらほらと。
勇者はジロリと観客席を睨みつける。それだけでまた静けさが戻ってくる。
おー怖い怖い。
試合なんだから楽しまないと。
ひとしきり観客を黙らせた勇者の視線はもう一度俺へと帰ってきた。おかえりなさい。
「この卑怯者め、よくも勇者である俺様に対して無礼を働いたな。もう許さん、ぶっ殺してやる!」
「まぁ、ぶっ殺すだなんてこれは試合ですよ試合。それよりも楽しみましょうよ、ね?」
「うるさいうるさいうるさーい!甚振るだけ甚振って殺してやる!」
勇者様が癇癪を起こすお子様へと成長しました。
ほら本気でかかってこい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます