また少女は抵抗出来ず



馬車は進みお城へと到着。

門を守る兵士達が俺らになんの問いただしなく通したってことはもうちゃんと連絡をしてあるんだね、偉い偉い。

無駄に大きなお城を窓から見上げる。今晩からのお宿は随分と居心地悪そう。



止まった。

どうやらここで降りるようだ。扉の前で佇む護衛の手を借りて馬車から降りた。こういう淑女的なレディー的な扱いされるとこそばゆいけど嬉しい。女の子してる気がする。



全員が降りたのを確認した教国の騎士っぽい人が注目されるように声を上げた。


「シェアローズ王国の方々、ようこそお出でくださいました。私はオーロラル教国聖騎士団総団長を務めております、アルフィンと申します。どうぞお見知りおきを。」


手入れがしっかりと施された真っ白な甲冑に身を包む爽やかなお兄さん。ニコリと見せた歯がキラリと眩しいぜ。俺が見定めた感じガルム団長と良い勝負だな。

ぜひお手合わせを願いたいですわ。


俺を含めてそれぞれアルフィンさんに挨拶をしていく。

うん、俺に対して偏見もなくまともに接してくれる、やりやすくて助かります。



アルフィンさんを先導にアルフ、フォルクスさん、聖女、変態の順に王城の中へと入っていく。

どうやらこのまま教皇とご対面するみたい。

ローブ姿のままで良いのかな?良いのかな?



ガシッと肩を掴まれた。ギギギと振り向けばシーナさんと姫様。二人とも人差し指を立てて左右に揺らしながらチッチッチと音を鳴らす。


このままで良くない?

聖女として出向くんだし良くない?


「せっかくのお姉様の晴れ舞台ですから世界一可愛い姿で謁見しましょう。」


駄目みたいです。


俺は両腕をそれぞれ掴まれ半ば強引に引き摺られていく。

連行されて着いた先は知らない部屋。まぁ初めての場所だから当たり前か。

ギラリと目を光らすメイド達が待ち構えていた。お互い初対面のはずなのにシーナさん達はどうして息の合ったように目をギラギラさせてそっち側にいるの。


若くて可愛い女の子若くて可愛い女の子と繰り返しボソリとメイド達から呟かれた。ぞわりと鳥肌が立つ。



そこからは惨劇。

暴漢に暴漢を重ねられた。このままで良いからの叫びは彼女達には一切響かず、上も下もひん剥かれ無理矢理ヒラヒラでフリフリなドレスを着せられた。

咽び泣く俺を嘲笑うかのように姫様が脱ぎたてローブを嗅いでいた。

家宝にしますと満面の笑みで言うので頭を握り締めて奪い取りました。



今回のドレスは水色主体。

どうしてもこんなフリフリでキラキラな女の子っぽい姿になるのは慣れない。

左右から可愛いですたまんねぇですと送ってくれる褒め言葉に照れつつ、アルフ達が待機している部屋に行く。

俺らの衣装替えを待っててくれたようだ。



アルフが俺のドレス姿を見てほんの少し目を見開く。

どう、似合ってる?


「驚いた…お前も女の子なんだな。」


とてもしみじみ言われた。これは殴って良いよね?いいだろ。

これから教皇への挨拶があるし顔は止めといてあげる。

お腹から芯へと染み渡るように掌底。



ありがとう、私女の子なんだ。



苦笑を浮かべるアルフィンさんを先頭にいよいよ教皇のいる部屋の前までやって来た。謁見に使われるような大部屋みたい。アルフィンさんが大きな扉をゆっくりと開けていく。


ほらアルフ、いつまでもノートンの肩を借りてないでしゃきっとしなさい。




さて教皇様とご対面だ。


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