面倒そうでも淑女ですから
現在、教国聖都にあるお城の中。
アルフィンさんによって教皇さんが待っている扉が開かれた。
開かれた扉の先で待っていたのは沢山のお偉いさんっぽい人達がずらりと並び、その先にはめちゃくちゃ玉座な椅子に座る目尻がやや下がった優しそうなおじさん。国王と同い年くらいかな。
その隣には目付きが鋭く威圧的なお爺さん。
多分、椅子のおじさんが教皇様で隣のお爺さんは誰だろう?
「良くぞ参られた。シェアローズ王国の聖女様御一行よ。私はオーロラル教の教皇を務めておるオーランドである。隣にいるのは枢機卿のドワノフだ。」
無言で一礼したドワノフさん。
この人明らかに歓迎してなさそうに見えるけど気のせい?
俺の目の前では今回の旅の代表であるアルフが挨拶をしていく。
さっきまで腹を押さえて苦しんでいた姿は無く、キリッと俺は王子ですとちゃんと挨拶をしている。
アルフの切り替えの早さに感心しているとスゥ様が促す。
次は俺の挨拶の番だ。
水色ドレスの端をちょこんとつまんで、はい淑女の礼。
「初めましてオーランド教皇様。私はシェアローズ王国にて聖女の証を承りましたアリスと申します。どうぞ宜しくお願い致します。」
ふふ、久々な挨拶。俺も慣れたもんだぜ。
「おぉ、そなたが聖女様であったか。シェアローズ王国で何十年ぶりかの誕生だったのう。色々と噂は伝わっておる。幼いながら聖女様という立場は大変な面もあるだろうがしっかりと励むのじゃぞ。」
教皇の俺を見る目が優しい。良かったこの人は良い人そう。
ただどんな噂が伝わっているのか超気になる。
「はい、お気遣いありがとうございます。頑張ります!」
さて挨拶も一通り終わって教皇様が優しい人ってのはなんとなく分かったけど、俺が聖女と知ってからかチラホラと悪意が含まれた不快な視線を感じる。
目の前のドワノフっていうお爺さんは特に分かりやすい。
懐かしき豚司教を思い出させる雰囲気だ。
そう思って見ちゃったら目が合った。
「ふん、貴様は仮にも聖女様だ。身分不相応な場に来たとはいえ無様を晒すでないぞ。」
うわ、この人駄目な人だ。いきなり初対面に貴様呼ばわりだし見下してる感満載だ。
それでいいのか教国よ。
オーロラル教の本拠地だからって他所様を下に見る理由にはならないぞ。
「ご助言ありがとうございます。聖女の名にふさわしいよう努めてまいります。」
俺はこれくらいで怒らない。
後ろで殺気をがんがん放つ姫様のお陰で落ち着いている。シーナさん頑張って押さえてね。
「これドワノフ。まだ聖女の身となって日が浅い。寛大な心を持ちなさい。」
「はっ、申し訳ありません。」
苦笑いを浮かべる教皇様が窘めてくれた。
もう挨拶はこれで終わった方がお互いに良さそう。
スゥ様もいつ爆発するか分からない。
教皇様もなんとなく察してくれたのか挨拶が終わる流れに。
ドン
不吉な音色。
後ろを振り向けば先程入って来た扉が開いていた。
そこからゆっくりとやって来たのは黒髪の男。やんちゃそうにニヤリと笑っている。
うん、また面倒臭そうなのがやって来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます