聖女の存在
朝を迎え、寝間着からローブへと変身。
今日は一日自由時間。
自由といってもお供に護衛が付くけれど。
軽く町を観光しつつ、聖女として治療活動でもしようかな。
念の為アルフに許可をもらうとしよう。
割とすんなりと許可を貰えた。
明日出発だから無理しないようにと忠告とノートンを俺のお守りにつけてくれた。
それといつ聞き耳を立ててたか不明なお姫様もとても自然な流れで加わった。その純真無垢で真っ直ぐな瞳は信者と同じく純粋。
溜息を吐いて出発。
町並みは王国で訪れた町と変わらない。
早速立ち並ぶ屋台に突撃。
肉肉肉肉肉。
朝飯はちゃんと食べたのに焼き肉の香ばしい香りが無限の食欲を生み出しやがる。
お腹がしっかりと膨らんだのでお淑やかな聖女になりますかね。
溢れ出そうなおゲップをなんとか抑えて小さな広場に到着。
王国と違い、俺が聖女と知っている者は身内以外でいない。
大きく息を吸って吐いて高々に宣言。
「教国の皆さんこんにちわ、私はシェアローズ王国からやって来た聖女のアリスって言います!怪我や病気でお困りの方がいらしたら是非治療をさせて下さい!」
いきなりの大声に何事かとぎょっと注目する教国の方々。
そして、少しざわめき出す。
「あの女の子が聖女様?」「お偉い聖女様が俺達なんかの治療をしてくれる訳ないだろ。」「どうせ高い金ぶん取られるに決まってる。」
ちらほらと聴こえる聖女の評判。
どれも悪い評価ばかりだ。
「お姉様、ちょっと私が聞いてまいります。なかなか他所様の聖女様はお金好きのようですね。」
そう言うと、スゥ様はトテトテと俺の大声に集まってきた野次馬に突っ込む。
ノートンとは別の護衛の人が慌てて追いかけていく。
しばらくの間、野次馬に突っ込んで行ったスゥ様を見守る。すると、色んな人に話し掛けてどんどんと会話が弾んでいくお姫様。
時折、笑い声も聴こえる。
とても一国の王女とは思えない行動力。最終的に野次馬を私の元まで引き連れて帰ってきた。
そして、男が一人野次馬代表として声を掛けてきた。
「おい、この嬢ちゃんから話を聞いた。あんたはその本当に聖女様なのか?」
「はい、そうですよ。怪我とか病気を患っているならすぐに治しますよ。」
「でもよ、治療代ってかなりするんだろう?」
どうやらこの国の聖女様は金を取っているみたい。有償が悪いとは思わんけど、手頃な値段にしないと誰も頼ることが出来ない。
「他の聖女様方の事情は分かりませんが私は無償で行なっております。さあ、治療しますよ。」
ニッコリと笑って早く怪我人を寄越せとやんわりと促す。
疑う気持ちも分かるけど俺が居るのは今日一日だけ。
一人でも多く治させてほしい。
しばらく静けさが漂う。
信じていいのか迷っているようだ。全くこの国の聖女は余計な印象をつけてくれたもんだ。
でも、一人の女の子が小さな男の子の肩を持って俺の前にやって来た。男の子は呼吸が荒く見た限りにも辛そう。
「聖女様、おねがいします。この子を弟の病気を治してください!」
「うん、任せて。」
ようやくお仕事じゃい。
額をピカリと光らせて聖女の力を行使した。
眩い光が女の子共々包んでいく。
それを見ていた人々は神秘的な光景に思わず息を飲む。
そして、目の前の少女が本物の聖女と認識を改めた。
「さすがお姉様です。」
目をトロンとさせたお姫様が視界に映ったけど無視しとこう。
光が収まり、治った衝撃に驚きを隠せない男の子と女の子の頭を撫でる。
「よく頑張ったね。」
その俺の一言を引き金に大喝采が生まれ、目の前で起きた奇跡に涙を流す者さえいる。
そして、次々と怪我人が雪崩込んで来た。
あれ、でもなんだか既視感が。
以前、王都でも似たような流れを経験した気がする。
確かこのあと最終的にどうなったっけ?
どんどん集まる民衆の中からニコリと微笑むエルドさんの姿を捉えた。
人々の怪我や病気が治ったけどまた新たな病気に掛かったようです。
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