教国からのお知らせ2
オーロラル教国。
神様が顕現した地とされ、オーロラル神を崇拝する宗教の総本山。各国に司教や司祭を派遣しオーロラル神の教えを説いているそうな。
そんでそこに勇者ってのが現れたのか。
「はい。伝承ではこの世界に災厄が訪れる時、異界の地から強き力を持つ勇者を神様が召喚するとされています。」
「災厄?」
「はい、実際に何十年も前に魔大陸から魔の王が大量の魔物を引き連れ侵略をしてきました。しかし、その際も勇者が現れ災厄を退いたのです。」
へぇー昔そんな事があったんだ。
そんな事よりも強き力を持つかぁ。
出来る事ならその勇者と殴り合いをしてみたい。
俺のニマニマした笑みから感じ取ったのかアルフが駄目だぞと目で訴えてきた、ケチ。
殴り合いはひとまず頭の片隅に置いといて、どうしてその勇者と聖女が関係あるんだろうか?
「それでその勇者様と私がどういう関係があるのでしょうか?」
「幾ら災厄と戦う力を持つ勇者でも一人では厳しいと思います。そこで同じくオーロラル神から選ばれた聖女様方が回復役として共に手を取り協力し合うのです。」
ふーん、要するに災厄っていう強いのと戦えるってことだね。
またまたニマニマしちゃう。
「もちろん例外を除いて本来なら戦う術を知らない聖女様達ですから、後方支援となりますがね。」
キラリと目を光らせ浮き足立つ俺に待ったを掛けてくる。
ぐすん、宰相さんひどい。
「それでですね。未だどんな災厄が訪れるか不明な状況ではありますが、早い内に聖女様同士そして勇者様と交流し信頼を深めておこうとなりました。」
なりましたってもう確定事項か。
「そこでアリス様には交流会の場所である教国へ向かって頂きたいと思っております。巡礼からまだ日は短く申し訳ありませんがどうかよろしくお願い致します。」
また旅行ね。
最近はまた特訓ばかりだったし丁度いい。
それにこれもまた聖女のお仕事の一つ。
決してあわよくば勇者と戯れるのを期待している訳ではないよ。
ちょっと首を鳴らしたけど違うからね。
「はい、もちろんお受けいたします。私の務めとして精一杯殴…ふふ頑張ってまいります。」
危ない、王様までジト目で俺を見てきたぜ。
「ありがとうございます。では、日程ですが交流会自体は二月後となっております。ここから教国までおよそ最短で一月とちょっと。出発は5日後を予定しております。」
そこそこ急だね、まあいいけど。
「はい、分かりました。しっかりと準備しておきます。」
と言っても、準備ってローブの換えと下着を何着かぐらいだよね。食料とかは王国持ちだろうし。
こうして、教国行きが決定。
出発まではのんびり治療したり冒険者でもやって時間を潰そう。
気楽に先を見通す俺に忍び寄る魔の手。
左側からは柔らかな感触が右側からは残念な感触が。
それは教会に帰ろうとする俺の両腕を掴む王族母娘、王妃のレオナ様に姫様のスゥ様。
こんな嫌な予感は村娘時代に魔物の群れに囲まれた以来だ。
「うふふ、アリスちゃん。まさか大事な交流会にローブだけで行こうなんて考えてないわよね。」
「え、いやあの…。」
「うふふ、お姉様。交流会何度かございます。ローブだけでなくドレス着用も必須ですわ。」
「え、いやあの…。」
「「うふふふふふ。」」
引き摺られるように連れて行かれる。
い、嫌だ。何度も何度も着せ替えされるのは嫌だ。
必死に今あるドレスで十分ですと抵抗するも虚しく少女はやけに力強い母娘と共に消えていく。
その一連を眺めていた男性陣は静かに黙祷を捧げた。
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