他所の聖女と異界の勇者
教国からのお知らせ
今日は久しぶりの王城からのお呼び出し。
でも、結構頻繁にスゥ様とのお茶会やノートン達との訓練で王城へは訪れているからもう慣れっこ。
衣装もドレスじゃなくて普段着のローブで良いらしい。
呼び出したのがいつものスフィア様ではなく王様からなのが気掛かりだけど、話しやすい人だし少しは肩が軽く済む。
今回はもちろんロコルお姉ちゃんとトーラスさんもお留守番。
俺は毎度お馴染みの使者に連れられ王城へ。
もう慣れましたこのお出迎え。
メイドに執事に、アルフが羽交い締めで抑えているスゥ様。
「こ、こらスゥ。挨拶も無しにいきなり抱き着きに行こうとするな!お前王族、分かる?王族だぞ!」
「お兄様お離しくださいませ。愛は時として暴走がつきもの。愛とは止まってはならないのです。鉄は熱いうちに叩け、欲情は治まらぬうちに襲え、でしょう?」
「な、なにを訳分からんことを!」
アルフお疲れ様です。
使者の手を借りて降り、スゥ様に近付きデコピンを放つ。
本気でやるとこの小さな頭を陥没させてしまうので程々に。それでもそこそこの威力だったか涙目で額をさすりながら痛みに悶えている。
「こら、スゥ様。私と会うのを楽しみにしてくれてたのは嬉しい。でも、興奮しすぎ。」
「うぅ…お姉様申し訳ありません。」
「ほらアルフにもちゃんと謝ろうね。」
「はい…お兄様も申し訳ございません。」
「あ、あぁ俺はそんな気にしてないぞ。」
素直に謝る事ができるから偉い。
高い身分にありがちな高慢な態度が少ないこの王族達は好感が持てる。あの珍獣は別だけどね。
「スゥ様よく謝れましたね。私も今日もスゥ様とお会い出来て嬉しいです。」
治療と併せて頭を撫でつつ微笑む。
カッと目を見開き俺を黙って見つめるお姫様。
どうした?
「……たまらん。」
「ん?なにか言った?」
「いえ、なんでもありません。痛みは収まりました。ありがとうございます。」
うんうん、何を呟いたか聞き取れなかったけどちゃんと反省しているようだ。
いつものご挨拶は終わり、姫様に引っ張られる形で王様の待つところまで出発。
着いた場所は以前巡礼の打ち合わせの際に使用した部屋。
勢いよくスゥ様が扉をドバーンと開け飛ばし、中で待っていたのは呆れた目で娘を見つめる国王とまた扉が…と嘆く宰相さん。
あれ、さっきこの子反省していたよね?
「スゥよ、聖女殿に会えて嬉しいのは分かる。だが、毎回高揚して扉を壊すのは止めてくれ。これ以上は自分で修理してもらうぞ。」
今後、王城へはなるべく控えた方が良いかもしれない。流石に俺が来る度に何処かの扉が破壊されるのは申し訳が立たない。
「ちゃんと大工仕事を学んで参りますので任せてください。」
明後日の方向にやる気を出すお姫様。
王様が頭を抱えた。
謎の罪悪感に苛まれつつ、少し風通しの良くなった部屋で今日呼ばれた理由を聞くことに。
説明は宰相のロイドさん。
軽い咳払いを挟んで説明が始まる。
「本日、アリス様をお呼び致しましたのはオーロラル教国に勇者様が降臨されたからでございます。」
オーロラル教国?
勇者様?
村育ちの俺には他所の国の名前なんて正直よく分からん。
オーロラルが神様の名前ってのは分かる。
勇者ってのは物語に出てくるような奴だよな。
そんなよく分からんのと俺が何の関係があるんだろう?
とりあえず勇者ってのは強いのかな。
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