そして繁殖する
今日は散々だ。
戦いには参加出来ないし、足が痺れるほど地面と膝が仲良くなったり、2回も泣いたりろくな目にしか遭っていない。
唯一良かったのは一発でも敵対するものに拳を振れたこと。
結局、あの人はいやあの人達は何者だったのだろうか?
あれからは気配を感じない。俺でも判断出来ないくらい気配を殺しているのかは不明。
多分逃げたんだろう。
悪魔ノートンに叱られついでに伝えたら、少し考え込んだ後に説教を再開した。お、終わっても良かったんだけどなぁ。
でも、これで巡礼が終わるまでは魔物以外での問題は起きないと思う。あの真っ黒な奴らが戻ってきたら別だけどさ。
領主様から今日のこの筋肉事件があったからもうお屋敷でゆっくりお休み下さいと言われた。
けれど、俺は治療以外は説教されただけで他は特に何もしていない。元々無駄に多い体力がまだまだしっかりと残したまま。
なので、変態達が暴れて生じた被害の後片付けを手伝おう。
建物が破壊されてあちらこちらに瓦礫だらけ。
兵士や住民の人達が一丸となって撤去に勤しんでいる。
すぐに向かおうと思ったけど学習した俺は一味違う、ちゃんとノートンに許可を頂いて来たぜ。
聖女様にさせるなど申し訳ないとオロオロする領主様やハイドンさんを気にせず住人達に混ざりに行く。
後ろでノートンがロンベルト様達にこれ以上我慢させると拗ねちゃうのでと説明していた。
むー、す、拗ねないもん。
許可をもぎ取った俺がトタタタと近づくとギョッとされた。
こんな小さい子供が崩壊した建物に近寄って危ないとか邪魔とか思われたかな。
とりあえずお手伝い前のご挨拶。
「こんにちわ、私もお手伝いさせて下さい。」
「し、しかし…。」
「私は私が出来ることをしたいのです。それが私の務めです。」
有無を言わさないようニッコリと宣言。
それを何も言わず呆然としたように見つめている住民。
て、手伝っても大丈夫かなぁ。
埒が明かないので返事がなく立ち尽くす彼らを横目に瓦礫を拾い始める。
ハッと我に返ったのか慌てたように俺に倣って作業を再開してくれた。
ただどうして俺から一定の距離を開けて囲うように動いているのだろうか。
ただどうして俺が瓦礫を持ってく場所を聞いたらいちいち片膝をついて頭を垂れるのだろうか。
ただどうして俺の呼び名が女神様に変更していたのだろうか。住民達は聖女が亡くなったと思っているはずでは?
え、我々がしっかりと説明してくれた?
どんな説明をしたらこうなるの。
いつの間にか領主様やハイドンさんとそのお仲間達が聖女が生きていた事を懇切丁寧に伝えてたようです。どんな懇切丁寧な説明かとても気になるの。
まだ信者になっていないそう願う。
まだ大丈夫だよね、ノートン?
「明日からの治療で完全に手遅れになるかと…。」
俺が膝から崩れ落ちたのは言うまでもない。
そして、数日後にはアムネスにも町の代表者を筆頭に俺の信者が出来やがってしまいました。
おかしい、俺は治療ぐらいしかしていないよ。
どうして、どうしてこうなった?
もう王都に帰ろう。
ロコルお姉ちゃんに思いっきり抱きつくんだ。
聖女様万歳と両手を上下させる狂わせてしまった信者達を背に帰還を目指す。
アリス教の増殖は止まらない。
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