背後に迫る絶望
変態筋肉と化した残念私兵との激闘は終わった。
激闘といっても俺は泣きながら治療をしていただけなんだけど。
この人達の亡骸は領主様が後処理をしておいてもらえる事となった。ついでに今回の一連の事件も早馬を出して王城に伝えるそうな。
流石に今回の一件は簡単に看過出来ない。ノートン曰く、やり過ぎた珍獣は捕獲されるだろうとのこと。
関与していたかはともかく町一つ壊滅したかもしれなかったこの大事件。自分の私兵が行なった責任は確実に取らされる。
これでもう無事に終わってくれるといいな。
俺の命を狙うためだけに多くの人が巻き込まれるのは勘弁してほしいよ。
こんなちっこい命が欲しいなら直接挑んで来たら良いのに…だからずっと俺らを見ているそこのお前いい加減姿を見せてもらえる?
ずっと感じた嫌な予感は貴方達でしょ。
俺はノートンから説明を受けてる最中、気配の感じる方へガバッと振り向く。後で説教を頂く覚悟で後ろの建物の上でこそこそしている奴へと距離を詰める。
弾みをつけてタンタンターンとほい着地からのこんにちわ。
真っ黒な服装で身を包む怪しい人物。
顔も黒い布を巻いてて分からない。
他にも似たような気配を薄っすらとあちこちから感じる。
驚いているとこ悪いけど、気づかないと思った?
これでも鍛えてるんだからね。
「お兄さんでいいですかね?改めましてこんにちわ。さてさて、ずっと私を見てましたがどなたでしょうか?」
「………」
「信者の方々の熱烈な視線とは違って、なかなかねちっこい視線でしたが私に御用でしょうか?」
「………いつ気づいた?」
ちゃんと声を発せれるようだ。
でも、少し声に覇気がなく淡々。そんなんじゃあ女の子にモテないぞ。
「いつかって言われると結構序盤からですね。最初は魔物がこちらの様子を伺っているのかと思いましたが、こう色々と問題が起きますと他を思い浮かべますよ盗賊やら暗殺者やらね。ましてやここは町中ですから魔物は違うでしょう。」
「……ただの戦闘狂娘ではないか。」
表情は読めないけど苦笑でもしているのかな。
「まぁ戦闘狂だなんて失礼です。私はちょこっとだけお転婆なレディーです。ところで貴方方がどんな御用なのか知りたいので大人しく捕まって頂けませんか?」
俺は握る拳をベキバキと鳴らす。
「………ふ、怖い怖い。申し訳ないが我々も捕まる訳にはいかないのでね、これで失礼させてもらおう。」
「はいそうですかと逃がすかよ!」
真っ黒な男に詰め寄る。
手が届く距離まで迫った時、男の真っ黒な服の至る場所から煙が噴出してきた。
目くらまし?
あ、違う毒だこれ。
思いっきり吸っちゃったから目や鼻、穴という穴から血が物凄く滲み出てくるもん。
これはやべぇ。
でも、一発だけ当てれて良かった。手応えは微妙だったけどね。
意識が飛ぶ前にはい自己治療。
あーあ白いローブが血塗れだ。
……はっローブの汚れに意識がいってた、あいつらはどこ行った?
辺りをキョロキョロ見渡す。
左、右、前一応上と下もあと後ろ…あ、ノートン追いついちゃったね。
怪しい人達いないねー、女の子だから自分の服の汚れを気にしてしまった、女の子だから。
あーあ最悪、逃しちゃったよ。
何が最悪ってもう俺の後ろで青筋をびっきびきにしたノートンが説教の準備を万端にしていることだよ。
え、なに正座?
はい、分かりました。
物凄く心配されてえげつなくお叱りを頂きました。
あいつら覚えてろよ。
はいちゃんと聞いてます、はいごめんなさい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます