珍獣捕獲大作戦
私の愛しき大切なお姉様が聖女様として巡礼に向かって早二月を経とうとしています。
出立した日から次の日にはお姉様成分欠乏症で過呼吸に陥って少しの間寝込んだわ。王都の至るところで同様の症状が発症したと聞きました。
みんな寂しいのね。
私はお姉様がお泊まりした際に使用した枕を使うことでなんとかなりましたが、他の同士達も無事であることを願っております。
でも、もうすぐ帰って来ます。
巡礼期間通りであればまもなくお帰りになられる。
はぁ、早くお姉様に抱きついてくんかくんかしたいです。
枕に染みつくお姉様も薄らいできましたわ。
私は憂いを帯びた表情で溜息を吐き窓からお姉様のご帰還を想う。
近くでアルフお兄様が呆れた眼差しで見ていましたがどうしてでしょうか?
そんな憂鬱の続く日々。
しかし、そこへ早馬が私のお姉様魂に火をつけました。
何事も無ければ巡礼中のお姉様達から早馬は届かない。
あれはアムネスのロンベルト様の兵士ね。
何かあったようだわ。
お父様の所へ行く伝令の兵士の後ろをこっそりと尾行する。
お兄様、お兄様もご一緒致しましょう。
アルフお兄様の首根っこを掴んで兄妹仲良く尾行。
お父様の書斎へと入っていく。
ちっ…ここは防音を施されていて扉越しでは聴こえない。
これはお姉様愛を試されています。
研ぎ澄ませ私の聴覚!
私は目を閉じて全ての意識を扉に当てた耳へと集中する。
もうドン引きするお兄様の姿すら私には映らない。
愛は常識を越える。
聴こえる…聴こえるわ!
「……で、巡礼中に何が起きたのだ?」
「はっ、ご報告させて頂きます!聖女様が巡礼中幾度も命を狙われました。またその実行犯がフリード殿下の私兵によるものであります!」
「なに!?それは真か?」
「はい、更にヤルタ及びアムネスを巻き込むような形で襲っております。」
「詳しく話せ。」
そこからはかくかくしかじかなんじゃらほいと詳細な説明が続きました。
兵士の方が全てを伝え終わる頃には私の頭の血管のいくつかから血が吹き出しておりました。
大丈夫です、お姉様と抱擁するまでは決して倒れません。
更にドン引きする隣のお兄様。
そんなお兄様に私が聴いた内容をこそこそと教えます。
呆れて引いた顔から一変、怒りを滲ませた表情に。お兄様もなんだかんだでお姉様が大好きですものね、渡しませんが。
またお父様達が話し始めた。
「至急、馬鹿息…フリードを捕らえよ。ロイドよ、首謀者である可能性が極めて高い。捕らえ次第尋問せよ。またあいつの自室を調べる許可を与える。」
「はっ、かしこまりました。」
あら宰相のロイド様もいらしたの。
どうやらあのゴミ屑下衆糞豚馬鹿愚者野郎を捕獲することが決定したみたい。
よし、私が先に捕まえちゃうだからね。
「いや、危ないからここはロイド達に任せて…お、おういってらっしゃいませ。」
やだ、つい獰猛な笑みをお兄様にぶつけちゃった。
乙女の矜持に邪魔をしてはいけませんよ、ね?
しっかりと頭をぶんぶんと振るアルフお兄様を残して私は走る。
といっても、私一人で行くのは流石に危険。それは分かっております。
なので、自室のベランダから狼煙を上げます。
赤色は緊急の合図。
さて捕獲の準備準備。
拳に鉄の鎖を巻いて靴は専用の鉄板が仕込まれたものを履いてと。
王城への門には集いし精鋭部隊の二人。
一人はアリス教創始者の一人で信者達の前でお姉様の為なら地獄の業火にも抗おうぞと宣言した私の同士ミーナちゃん。
もう一人はお姉様が最も慕い私達の間ではアリス教栄誉顧問の称号を持つ羨ましい立ち位置のロコルさん。
いつ二人と出会ったかはまた今度お話しましょうね。
ゆっくりと互いに近づく。
そして、3人の女傑が握った拳を合わせ合う。
さあ、殺りましょう。
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