這い寄る異変



リートンの町を抜けて三日ほど経過した。

次の町ヤルタまであと八日、先は長い。


ここでの道程も最初と変わらずいくつかの村を経由して行く予定。

明日には名無しの村に着くはず。

馬車での移動はお尻への負担がそこそこやって来るけど、今までの村娘生活と違って色んな新しい景色を目撃出来るから苦にならない。

今も窓から覗くのどかな風景にほっこりしているところ。



それでも、こんな風景の中でも魔物はぞくぞくと登場している。

俺は悔しいけどちっこい図体だから馬車で眠っていたけど、昨晩も見張りをしていた護衛によってゴブリンを数匹倒されていた。う、うらやましい。


この巡礼が始まってからまだ全く戦闘を行なえていない。全部ノートン率いる護衛部隊が片付けちゃう。

お陰で俺はかなり欲求不満。

溜まりに溜まって我慢するのが辛い。

ノートンやシーナさんに何気なくお願いしても駄目の一言。

リスみたいに頬をパンパンにするくらい拗ねてやる。



そして、今日も魔物が現れた。

代わり映えのしないゴブリンとウルフ。でも、徒党を組んで襲ってきている。

それでも、ムカつくほど優秀なノートン達があっさりと討伐しちゃう。あの馬鹿私兵達みたいにとは言わないけど、もう少し加減をして俺に任せても良いんだよ。

チラチラっと流し目でアピールするも無視された。



ブゥブゥと口から不満の息が洩れる。そんな中ふと物思いにふけるノートン隊長。


「どうしたの?」


「いえ、どうも気になることがございまして…」


もうそこそこの付き合い多少言葉も崩れてきた。

ノートンは変わらず堅い口調だけど。


「気になること?」


「魔物との遭遇率がやけに高い気がします。ほぼ毎日に近いように思えます。」


「確かにノートン達が優秀なせいですぐに倒しちゃうけど、頻繁に現れてるね。でも、こんなものじゃないの?」


俺の今までの行動範囲は人里離れた村と王都と狭い。

普段を知らない。

住んでいた村の方が強いしもっと出て来ていたように思える。


「今回の巡礼は初回ですので比較的安全な道を重視して候補地を選びました。2,3日に一回出るかどうかです。なのに、こう何度も出ますと…。」


「うーん、でも今のところは問題なく対処出来ているし、そこまで気にかけなくて良いんじゃない。それにいざとなれば私も参戦します!」


「ふふ、そうですね。少し気にしすぎかもしれませんね。アリス様のお力を借りる事が無いよう我々は頑張ります。」


「いや、そこはがんがん借りてほ…あ。」


いつもの苦笑を浮かべて仲間の方に行っちゃった。

あいつ絶対借りる気ないな。


それにしても魔物か。

俺にしたら弱いし数も少ないから一切気にも止めていなかった。

どちらかと言えば、馬鹿王子の私兵達が気になる。

護衛と言いつつ後方を守るからと俺達の馬車から距離を置いている。

魔物が現れても駆けつけるのが遅く、大抵ノートン達が対処し終わった後だ。

本当に何の為に同行しているのか不明すぎる。

シーナさんにはニヤニヤと鬱陶しい視線を浴びせているし、俺には冷めた目を向ける。

気づいてないとでも思っているのか、とても護るべき存在に向ける目つきじゃないぞ。


察し上手なノートンはもちろん察して、俺達の目になるべく触れないようにしてくれるから本当に頼もしい奴だぜ。




些か不穏な気配が漂うも一夜の野宿を越えて、小さな村へと辿り着いた。



第二の町ヤルタまでの成果。


4つの村全てが俺の信者になりました。

エルド野郎の事前布教と実際に目にした聖女の力が合わさったせいです。



どうしてこうなった?



ミーナちゃんやスゥ様と同じ表情になった子も居たけど、どうかまともに育つよう願ってます。


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