最初の町 リートン



俺たちはシェアローズ王国王都を出て、3つ向かう町の1つ目であるリートンを目指している。

一週間の道のりの先にある。

でも、その道程の間には小さな村がいくつか存在するのでそこでも治療を行なっていく。



平原の続く道はそこそこに魔物が出る。

戦えるかなと馬車の扉に手を掛けるが、シーナさんが首を横に振り止めてくる。


「えっと、シーナさん。私も戦おうかなって…。」


「なりませんよアリス様。護衛を任された方々の仕事を取ってはいけません。」


「うぐっ…。」


「はいはい、大人しく見守りましょうね。…アルフ様にも歯止めとなるよう仰せつかっておりますしね。」


「ん、何か言いましたか?」


「いえ、さあちゃんとお座りくださいませ。」


何かボソッと言った気がするけど仕方ない。

確かに騎士としての仕事をノートン達から奪うのは申し訳ない。

言われた通り大人しく静観しとこう。



相手はウルフと格下。数的にも問題ない。

あのガルム団長の下で鍛えてるだけあって良い動き。この馬車を主軸にちゃんと上手く連携が取れている。

それに比べてあの珍獣の私兵達はなんとも…。

腕前はまあそこそこっぽいけど、あれらは護衛というより自分達を護るための戦い方だね。

馬車に集まっているウルフ達から離れて、偶にあぶれてやって来た少数のウルフを痛ぶるだけ。

ノートン達の補助にまわればいいのに。



一応、特に怪我人も無く出てくる魔物は処理出来ている。

疲労が溜まったので聖女の力を行使してくれと訴えてきた馬鹿共が鬱陶しかったけどね。

ノートン達の方を念入りに力を込めたのは内緒だよ。



一日目の夕方、名もない小さな村へと到着。

遠くからすでに俺達が見えていたのか村の入口には村人総出で出迎えてくれた。

事前にお触れでも出していたのか俺が聖女だと分かっていた。

もう遅いので治療は明日ってことで今日は歓迎の宴会を催すことになった。

幸いにもこの村に重篤な人はいないようだ。

宴会をしなくていいと断りを入れてもどうかさせて欲しいと逆にせがまれてしまった。高貴な御方が来て何も振る舞わないのは失礼だからだって俺にはいいのに。


宴会で次々食事を勧められる中、ふとある一角が目に入る。

あの兵士達だ。

お酒をガンガン飲んでどんちゃん騒ぎしている。

うん、もう放っておこう。

ノートン達が謝ることじゃないよ。元々頭数に入れてないから、うん皆もご飯食べよう。



次の朝、酔い潰れて未だにぐーすか眠る人達を放置して村人達の治療を行なっていく。うんうん昨日の宴会のお礼だから感謝はいらないよ。

はいはい、お次の方どうぞ。違う違う女神じゃなくて聖女だから。はい、そこ祈らないで並んでね。



人数は王都に比べれば少ない。昼前には治療完了。

終わる頃には村人達の目が来た時よりも変わっていた。

凄く見覚えのあるきらきらとした目になっていた。

アリス教なんて無いんだからね!



ようやく目を覚ました酔っ払い達を連れて村を出る。

ノートンがもの凄い剣幕で怒鳴っているのに大して懲りてなさそう。

珍獣部隊の名は伊達じゃない。



そんなこんなでその後ももう2つほど村を訪れたのち、1つ目の町であるリートンに到着した。



ここでも今までの村同様、馬車に乗る俺に沢山声援をかけてくる。

町なだけあり何倍もの人の数。


そんな中を割って入るように進み、おそらく町長の屋敷だろう大きなお家の前で馬車の動きが止まった。




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