お茶のお供にトラブルを3
俺は普段では滅多に味わえない紅茶や果物をフォークで摘みつつ、スゥ様と会話を弾ませる。
スゥ様はやたら聖女というか俺の素晴らしさをひたすら語ってきた。フンフンとやや興奮気味に絶え間なく続く。その勢いがちょっと怖いし照れ臭い。
聖女になってから恥ずかしく思うことが増えた気がするよ。
なんとか姫様の王城での日常話や俺が王都散策中に出会った人達との面白話で話題転換に成功出来た。
変えてなかったら永遠に俺本人へずっと語りそうだったもの。
一応、盛り上がり始めた俺とスゥ様。
でも、そこに水を差してくる悪意達。
また口に手を当ててほほほと笑いながら加工令嬢とお供達が歩み寄ってきた。
ほらスゥ様が露骨に嫌そうな顔しているよ、気づいてる?
「レーネア、どうかされましたか?」
「いえ畏れながら、スフィア様に少し苦言を呈させて頂こうかと思いまして‥ほほほ。」
「苦言‥ですか?」
「ほほ、そうでございますわ。」
またさっきの挨拶時と同様に、俺を小馬鹿にしたように見下ろしてくる。
「ほほほ、スフィア様、いくらその者が聖女といえど平民です。王女様であらせられるスフィア様がこのような平民と同じテーブルに着きあまつさえ会話をされるなど、姫様の品格を堕としかねませんわ。」
「‥‥‥」
「フリード様も嘆いておられましたわ。大切な妹様が平民風情に騙されていると。あぁ、お可哀想に‥ほほほ‥」
「‥‥‥」
この人、スゥ様の様子が分かってないのか?
微笑みを保ったまま加工令嬢の言葉を聞いている。
ただ貴方が喋る度にこめかみから血管がどんどん浮き出ているよ。
明らかにイラついている。
これだとまた殴り掛かろうとしかねない。
幾ら何でも身内の珍獣を殴るのとは訳が違う。
一応姫様の心配している体だから、いきなり殴ればスゥ様が悪くなる。
これぐらい俺は全然平気だからじっと落ち着いてね。
念のため、スゥ様の突撃を警戒しておこう。
俺が姫様の方を気にかけて見ていたのが目についてしまったのか、いよいよ加工令嬢が口撃を繰り出してくる。
「ほほほ、そこの平民。聖女となられたからって貴方は所詮平民でしょう。たかが平民が姫様に気安く接するなんて恥を知りなさい。」
「それは失‥」
俺の返事を待たずに、近くまで寄ってきていた加工令嬢の取り巻きの一人がテーブルに置かれたカップを倒してしまう。
もちろんまだ中身の紅茶は残ったまま。
幸か不幸か、それか偶然か必然か。
溢れた紅茶の残りは、俺の真っ白なドレスに注がれた。紅茶で出来た染みがドレスに新たな柄を生み出している。
寄ってきてニヤリと笑っていた取り巻きが俺に何かしてくるかと思って意識にはいれてたけど、これは予測出来なかった。殴る蹴る以外にもこういう攻撃があるんだね。
これは一本取られた。俺もまだまだ修練が甘い。
「ほほほ、まあ随分とお似合いな格好となりましたわね。平民な聖女様には素敵な姿となりましてよ。おーほっほっほ。」
加工令嬢は取り巻き達と一緒にほほほと笑い合っている。
ビシビシとぐるぐる巻き髪が相変わらず取り巻きに当たるのも構わずに。
いや俺はこれくらいはなんて事ないよ。
この汚れもちゃんと洗えば落ちるだろうし、むしろ元司教とかに比べれば可愛いもんだ。
でも、隣の姫様が微笑みのままゴゴゴゴと幻聴が背景から聴こえそうなほど怒っている。
これは不味い。
いつでも爆発準備完了の状態。
もうそのまま去ってくれよ。
触らぬ神に祟りなし、そのぐらい分かるだろう?
されど俺の思いはぐるぐる巻きには届かない。
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