お茶のお供にトラブルを2



スゥ様とのお茶会。

姫様から教えられた不幸なお知らせ。


そして、現れたぐるぐる加工令嬢と不愉快そうな仲間達。


これはなんとも楽しくなさそうなお茶会が始まってしまいました。

多分、こっちまで来たのは挨拶のためだと思うけど、俺への目つきがあからさまな嫌悪に満ちている。

スゥ様が珍獣を見た時と同じようだ。


普通の挨拶で済むよね?



「これはこれはスフィア様、本日はお招き頂きありがとうございますわ、ほほほ。」


「‥‥私は招いてませんけどね。」


姫様がボソッと呟く。

俺には聞こえたけど、目の前のほほほを常備した加工令嬢には全く耳を通過していないみたい。


「ほほほ、あら、スフィア様なにかおっしゃいましたか?」


「いえレーネア、何も言っておりませんよ。本日はようこそお越しくださいました。ごゆっくりお茶会をお楽しみくださいな。」


「ほほほ、はい楽しませて頂きますわ。」


加工令嬢ことレーネアが俺をチラリと見る。

お、いよいよ俺に来るか?


特に何も言ってこない。

ただフンっと鼻で笑って去って行く。

取り巻き陣も加工令嬢の後を付いて行く最中で俺を律儀に嘲笑している。


なんだ挨拶無しか。俺を無視する方向性かな。

良かった、むしろそっちの方が助かる。



「‥‥あいつら殺る。」


横から聴こえる腹の底から唸るように出した死の宣告。

スゥ様がほほほと笑うその後ろ姿に、今にも突撃しようとしている。


はい、落ち着いて。


俺は、そんな突発性猪の姫様を羽交い締めで止める。

尚も殴りに行こうともがいている。

とんだお転婆姫だね。


「スゥ様落ち着いて。」


「むーなんで止めるのですか?あの変てこ髪の愚図令嬢共はお姉様に挨拶してないのですよ。無礼過ぎます!」


「まあまあ私は気にしてませんから。むしろ無視してくれるなら相手しなくて済みますから。」


「でも、ムカつきます。あのほほほと笑う生意気な顔を原型が無くなるまで殴り削りたいです。」


なんて恐ろしい子。

俺でも年上とはいえ女の子に手を出していいか少しだけ思う所があるのに、姫様からは何の躊躇いも無い様子。


これは羽交い締めして正解だな。


「絶対、駄目だからね。先も言ったけど私は大丈夫だから。」


「ですが、ですが‥」


うーん、どうこの場を収めようか。


「えーと、そんなことよりもお茶会しましょう。私はスゥ様と沢山お話したいです。こうやって話す機会があるのです、楽しみましょう。」


「お姉様ぁ‥。そう‥ですね、あんな塵達よりもお話が優先事項。時間が勿体ないです。あちらの席で心ゆくまでいっぱいお喋りしましょう。」


ようやく興奮が治まってくれた。

まだあれくらいなら平気。

それよりも王族組の手の早さが心配になったよ。

今度はスゥ様に手を引かれて近くのテーブルまで案内してもらう。



このテーブルは姫様が気を利かせたらしくスゥ様と俺以外にいない。


側に控えているメイドに椅子を引いてもらい、そのままスゥ様と仲良く肩を並べる形となった。

テーブルには間違いなく高級品の紅茶を注がれたカップが置かれ、見た事あるものから無いものまで色んな果物がカットされた状態で大皿に盛られている。



これがお茶会の形式なのかな。

庶民思考の俺は姫様が果物に手を伸ばすまで、ずっと紅茶を飲んで果物を食べる時機を伺っていた。




最初のあの加工令嬢達との軽い一悶着があったけれど、ここからは楽しめそう。

たまに俺とスゥ様が会話を弾ませている際に、ちょこちょこと色んな方面から嫌らしい視線を感じるけどそれだけだ。



思ったよりも面倒事は少なそうで安心しました。






なんて言う訳にはいかない。

それが俺の運命でした。



もう一度、奴はやってきた。


ぐるぐると髪を巻き上げたあいつが群れをなしてやって来た。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る