はじめての王城2
いよいよ王城に行く日がやってきた。
本当にこれといった準備は無かった。強いて言えば、新しくローブを仕立てたくらいだ。新調したといっても、服屋で自分の体格に合う奴を買ってきただけ。
俺よりかは明らかに詳しいロコルお姉ちゃんの助言により清潔感のある真っ白なローブを購入した。
今まで古着を使い回しで着てたから、ローブとはいえ服選びは楽しかったな。
今度またロコルお姉ちゃんと一緒に来たい。
新しく買ったローブを着て、一応王城に訪問だし姿見でくるっと回って確認。
寝癖直しに協力してくれたロコルお姉ちゃんが俺の姿に拍手を送る。
真っ直ぐに褒めてくれるのは嬉しいけど、恥ずかしいよ。
もじもじとらしくない態度をとってしまう。
そんな俺の所に高圧シスターがやってきた。王城からの使者がもうすでに教会の前で馬車を停めて待機しているらしい。
高圧シスターの伝言を受け、早速向かう。
でも、その前に。
「アンジェリカさん、王族との対談にこの格好で大丈夫でしょうか?」
「ふ、ふん、別に良いんじゃないかしら。あ、貴方は普段通りでも充分か、かわ、可愛あぁぁ!!」
何かを言い切る前に、顔をいつものように真っ赤にさせて何処かへ走り去って行った。
念の為に貴族であるアンジェリカさんに確認してもらおうと思ったのに。
ちょっと不安になったけど、ロコルお姉ちゃんの大丈夫ですよを信じよう。
教会の外に出ると、以前エルドさんと乗ったものより大きめの馬車が待機していた。
そのすぐ近くにはトーラスさんと王城からの使者が。そして、その馬車から一定の距離を置いた所で群衆が。
俺が来るのを待ちわびていたのか、みんな目がキラキラと輝いて眩しい。
というか、群衆の先頭にまたエルドさんとミーナちゃんがいる。
あの2人がこの群衆を創り出した元凶か。
アリス教とか変な事を広めてないでさっさとトーテルの教会に帰りなさいエルドさん。
ミーナちゃんは‥‥とりあえずそのトロンとした表情は同性の女の子に向ける顔じゃないからやめて。
群衆から発せられる熱量を気にしないようにトーラスさん達に意識を集中する。
「おはようございます、トーラスさん。使者の方もわざわざお出迎え頂きありがとうございます。」
「い、いえ聖女様の送迎を拝命されて大変光栄に思っております。」
使者の人なんか緊張してるっぽい。
もしかして、元司教をぶん殴った話って結構広まっているのかも知れない。
貴族をぶん殴るような暴力女は怖がられて当然か。
「ご迷惑お掛けしないようにしますので、王城までよろしくお願い致します。」
せめてちゃんと感謝の意を示さないとね。一礼する俺にまだ慌てた様子の使者。
出来れば、馬車の間で恐怖が緩和してくれることを願おう。
俺は使者の手を借り馬車に乗り込む。
今回の王城訪問には、残念ながらトーラスさんもロコルお姉ちゃんも参加しない。いつもお出掛けは一緒の人がいないとやっぱり寂しいよ。
「アリス様はいつも通りのアリス様でいれば大丈夫ですよ。私は教会でアリス様のお帰りを祈りながら待ってますね。」
ロコルお姉ちゃんは俺の分かりやすい表情をすぐに読み取った。窓越しにいつも言ってくれる心強い励ましを送ってくれる。
その安心させる微笑みがとても有り難い。
「それでは行って参ります。」
トーラスさん達が手を振ってくれる。
エルドさん達は、うおおおと雄叫びを上げる。
し、仕方ないので、ぎこちない笑みで手を振っておこう。
教会から王城まであまり時間はかからなかった。馬車の効果か通行人も避けてくれるのですんなりと到着出来た。
おお、ここが王城かぁ。
貴族街を通った先にあるから、来たことないけど壮大な感じ。
広場からだと城がちょこっと顔を出してるくらい遠くて分からなかったけど、こう近くまで来ると大きい。
申し訳ないけど俺の持つ語彙力では、でかいや大きいが限界です。
王城の正門を馬車のまま通る。
ここからは歩いた方が良いのではと思ったけど、使者の方は聖女様にそのようなことはとやんわりと断られた。
聖女でも庶民派だから気にしないよ。
そして、馬車を降りる時がやってきた。
窓からチラッと見えた待機しているメイドや執事達の数に少し降りることへの躊躇いが生まれました。
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