出会いは最悪



馬車から王城への入り口までメイドや執事が通り道を作るように並んでいる。

聖女だからってのは分かってても庶民心の俺には堅っ苦しい。

考えても仕方がない。

早速、降りて入城しよう。

馬車の扉を使者の方が開けると、2人組みの男性が。

1人は知っているノートンだ。


もう1人は眼鏡をかけた壮年としたおじさん。知性を感じさせる雰囲気が醸し出されている。


誰だろう?

高価そうな服装からして偉い人だと思うけど‥。


「初めまして、聖女様。私は宰相を務めておりますロイドと申します。以後お見知り置きを。」


おお、本当に偉い人だ。でも、元司教みたいに権力を盾にするような態度じゃない。まともな人で安心。


「わざわざお出迎え頂きありがとうございます。私は聖女の証を承りましたアリスと申します。どうぞよろしくお願い致します。」


思ったよりも礼儀正しく挨拶した俺に感心しているようだ。ただの暴力女ではございませんことよ、ほほほ。


「これはご丁寧にありがとうございます。陛下の居られる御部屋まで私が案内させて頂きます。後ろの彼ノートンはご存知ですね?彼に御部屋までの護衛をさせます。」


なるほど散策中に見たノートンの身のこなしなら安心して任せられる。


「ありがとうございます。ノートンさん、よろしくお願い致しますね。」


ニコリとノートンを見ると、自分の必要性があるか分からないと目で言ってきた。

ノートンは俺が聖女の力だけじゃないってことをしっかりと目の当たりにしているからそう思うわな。

実際要らないだろうけど、一応俺は聖女だし。


使者の方とはここでお別れ。

結局最後まで緊張した様子だったけどありがとう。


さて、メイドと執事の道を通り入城。

ジロジロ見られてる訳でも無いけど、居心地の悪く通りづらい道でした。

読み取り人ノートンはすぐに察して苦笑してた。



王城が大きければ廊下も広い。

おまけに高そうな絵画や彫刻が至る所に展示されている。

俺の場違い感が否めない。

幸い貴族と出くわすことなく、王様のいる部屋まで着いた。

もしかしたら、今日のために配慮して人払いを済ましておいてくれたのかも。

俺が貴族を殴ったのは知ってるから、貴族達の安全のために。



ノートンが扉をノックし、どうぞと返事が返ってきた。そのままノートンが扉を開けてくれる。何から何まですまないね、ノートンさんや。



中に入ると、一つのテーブルを囲む形にソファが四つ配置されて、入った俺から見て正面におそらく王様が座っている。


王様っぽい人の隣にいる綺麗な女性。

奥さんというか王妃様かな?

なんか大人な色気ってやつ?を漂わせて微笑む姿が様になっている。いつかは王妃様みたいに大人な女性になれると良いな。


右の席には仲良く美男美少女が座っている。

1人は、あの面倒くさい事で有名なアルフだ。お前王子だったのかよ。通りで少し偉そうだと思った。

王子なら頷ける。


そしてその隣の少女。王妃様と同じ白銀色の髪をしているし、王女様かな。

俺と同い年くらいで王妃様似で将来が楽しみになる可愛い女の子。

でも、なんでそんなキラキラと目を輝かせて見つめてくるの?


聖女ってのに憧れでもあるのかも知れないね。


そして、左の席にはアルフと同じ金髪だけどアルフより少し年上に見える。

はっきりと分かるのは、こいつがアルフよりも面倒くさそうな事。

つまらなそうな顔で俺を上から下までじっくりと観察している。


俺は観賞用の置物じゃない。というか、口元がニヤリと笑って気持ち悪い。


なるべく関わらないよう無視してよう。



俺は王様と対面する形でソファに座る。隣にはロイドさんが座る。

よく考えたら、平民がこんな普通に座って良いのかと疑念が過ったけど、何も言ってないし良いよね。


いや、左から平民のくせにって俺にギリギリ聞こえる程度に呟きが。


確定。

間違いなく左の奴は俺が聖女なのを快く思っていない。


頼むから、この話し合いが済むまで突っかかってくんなよ。




今日は簡単な挨拶で済むらしいから、早く終わってと願う。

俺の心情を察した訳でもないだろうけど、王様が早速口を開いた。




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