お茶会よりも戦闘を
はじめての王城
あの元豚司教との決着がつき、もう数日は経過した。
ここ二、三日は教会の前を常に人集りが出来ていたけど、ようやく落ち着いてきた。
ただ腑に落ちないのが、人集りを先導していたのがエルドさんとミーナちゃんだった。
いや、何してんの?
教会前でいきなりアリス教の心得とか訳分からん事を説き始めたから慌てて飛び蹴りを食らわしたけどさ。
勝手に変な宗教作らないでほしい。
そういえば、身近に少しだけ変化が起きた。あの司教がいた時は教会内で助祭の貴族と平民で妙な格差というか上下関係みたいなものが存在していた。
でも、それが和らぎを見せ始めた。トーラスさんが率先して教会内での意識改革を始めたのも要因だけれど、1番に大きく貢献したのは高圧シスターだと思う。
聖堂をロコルお姉ちゃん達と掃除をしていたら、あの高圧シスターが自ら歩み寄って来たのだ。
相変わらずツンと素っ気ない態度だけど私も手伝いますわといって掃除に参加。
それを見ていた他の貴族系助祭達もおずおずと箒を手に取り始めていた。
その光景を発見してしまったトーラスさんが涙ぐんだのは言うまでもない。
急激に変わることは無いけれど、少しずつ良い方向に進んでいる。
怒られたけどやって良かった。
気分上昇中の俺は、るんるん気分で今日の予定を考える。
俺が聖女と周知された事で教会にも治療を求めて訪れる人がちらほらと出始めている。
もし患者が来ていたら治療をしよう。
居なかったら、王都散策だね。
散策の可能性も考えてロコルお姉ちゃんに声をかける。
申し訳ないですが、付き添いお願いします。
一切の間を置かず了承してくれる。
あの日からより距離が縮まった気がする。
変わらず様付けだけどね。聖女様だから諦めてくださいって言われたよ。
それでも、ロコルお姉ちゃんと並んでお喋りしながら患者の有無を確認する。
お、いるいる。
20人いないくらいかな。
聖堂内で律儀に縦に一列で並んで待っている。
近くに高圧シスターが佇んでる。
もしかして、列整理してくれたの?
トコトコ歩いてくる俺に患者さん達が気づいたようで、歓声が上がる。
なんで来ただけでそんだけ盛り上がれるんだよ。
絶対、エルドさんの影響だ。
「お早うございます。アンジェリカさんが列の整理をしてくれたんですか?」
アンジェリカさんは高圧シスターの名前だよ。
「ふ、ふん、別に聖堂内がごちゃごちゃして気になっただけですわ。べ、別に聖女様の為じゃないですからね。」
「ふふ、アンジェリカさんありがとうございます。とても助かりました。」
両手をぎゅっと握ってお礼を告げると顔をボッと真っ赤にさせて、ホホホホホと高笑いしながら走り去っていった。
き、嫌われてはないよね?
と、とりあえず治療をしよう。
待機している患者達一人一人と向き合い、聖女の力を行使していく。
一気に全員治すことも出来るけど、可能な限り今まで怪我や病気に耐えて来た人達に頑張ったねと言ってあげたい。
ただ光輝く度に前方からおぉ‥と感嘆が漏れるから少し気恥ずかしい。
全員の治療を終えて、次々とお礼を言ってくる人達を見送る。
ふいーこれで終わりだね。
なんとなく腕で額の汗を拭う。
まだまだお昼前だし、散策に行っちゃおうかな。
トーラスさんに一言伝える為、書斎へ向かう。
でも、着く前にトーラスさんと出くわした。
隣にいる男性は誰だろう?見たことないな。
「おお、丁度良かったです。アリス様を探してたんです。」
「私を?」
どうも用事があるみたい。
隣の人が関係してる?
「はい。こちらは王城からの使いの方です。謁見についてお話があるそうです。」
トーラスさんの隣の男性がぺこりと頭を下げる。
王城からの使いで謁見かぁ。
あの司教のお陰でうやむやになってたけど、結局するんだね。
面倒くさそうだけど、断れる訳ないかぁ。
俺の芳しくない表情に焦った様子の使いの方は必死に説明してくれる。
顔に出てたみたい、ごめんね。
でも、説明してくれた内容は多少は面倒くささを緩和してくれる内容でした。
貴族が多く出席する謁見ではなく、必要最低限の少人数での対談になるとの事。
今回の騒ぎもあり、俺への配慮らしい。
非常に助かります。
貴族が全員あの司教みたいな貴族とは思わないけど、少なからず同類はいるだろうからね。
俺がいつでも良いよと告げると、事前にいくつか返事を用意してたのか対談の日が2日後とすぐに決まった。
対談の日程があっさりと決まり、使いの方はそのまま王城に帰って行った。
俺も何かしら準備しといた方が良いのかな?
特に敬語とか、主に敬語とか。
ロコルお姉ちゃんに聞くと、ニッコリ笑顔でアリス様はそのままで充分可愛いですと訳わからない回答を頂きました。
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