それはある日突然に
今日俺はブラッドさんとのお食事会。
お礼はいいってのについご飯に釣られちゃった。
俺よりも何倍も王都に詳しいだろうから美味しいお店期待しちゃう。
そういえば、昨日久しぶりにエルドさんが遊びに来たよ。
といっても報告しに来たが正しいかな。
今、エルドさんの知り合いの貴族から徐々に聖女の話を広めているらしい。
少しずつ貴族の間で真偽はともかく噂として広まりつつあるらしい。
エルドさん自分の身も省みず頑張るね。
ただそのうち司教の耳にも入る可能性が高いから十分に周囲を注意してくださいませと忠告を貰った。
うん、気をつけるよ。あの司教の俺を人とすら見てないような目は何するか分からない不気味さがあるもんね。
まあそれはそれ、これはこれ。
ロコルお姉ちゃんを連れていざご飯に会いに行こう。
いつも通り聖堂で掃除していたロコルお姉ちゃんに声をかける。
ん?
なんか元気がない?
「ロコルお姉ちゃん、どこか体調悪いんですか?」
寝不足気味なのか少し目が赤い。
最近はおどおどよりも笑顔が増えてきたのに大丈夫かな。
「大丈夫ですよ。少し寝つきが悪くて眠いだけですよ。」
フッと笑顔で言うロコルお姉ちゃん。
少し違和感を感じるけど俺は眠たいからかと納得してしまう。
ご飯をしっかり食べたら今晩はぐっすり寝れるはず。
だから、ロコルお姉ちゃんの為にもすぐにブラッドさんに会いに行きましょう!
この前訪れた商店付きの建物に到着。
すでにブラッドさんは建物前で待機していた。それと側にはなぜかアルフとノートンの2人組もいる。
なんか仲良く話をしている。
なんであいつらもいるんだ?
前みたいに面倒くさいこと言わないでよ。
ロコルお姉ちゃんが俺の嫌そうにしてる顔にふふっと笑ってる。
ちょっと安心。
「ブラッドさんこんにちわ!今日は御馳走になりますね」
「おう、嬢ちゃん。改めて治してくれてありがとうな。今日は俺の行きつけの店に招待するから、しっかり奢られな!」
「はい、あとアルフさんとノートンさんも本日はご一緒ですか?」
「おう、2人が嬢ちゃんと話したいことがあるみたいでな。まあ俺もあるし飯食いながらゆっくり話そうぜ。」
俺は無いけどなぁ。
絶対について行くという強い意志を感じるし仕方がない。
「はぁ、そうですか。分かりました、では行きましょう行きましょう!」
2人よりもご飯ご飯。
ブラッドさんの先導で到着。
普段食べ歩きする屋台と一緒だけど、大通りから外れた知る人ぞ知る名屋台らしい。
ブラッドさんが持ってくる食べ物はどれもまだ食したことがない。
一口サイズの肉塊をこれでもかと煮込んだ料理。フォークで少し突くだけでも崩れそうな柔らかさだ。
主人のこだわりを感じる。
パンの間に肉や新鮮な野菜、しかも焼いた卵も挟んだ料理。豪華すぎる。
思わずかぶりつくと、口に轟く革命の音。
この店は凄い。
そう言わざるをえない数々の料理。
恐れ入りやした。
ロコルお姉ちゃんが飲み物を買って来てくれた。
いつもこうやって細かいところまで気遣ってくれて本当に有難い。
ありがとう。
よし、新たな名店との出会いに乾杯だね!
そして、終わりが始まる。
俺の目の前で苦しそうに口から血を吐き出す。
止まらない血に俺の思考が珍しく追いつかない。
どうして?
何が起きたの?
なんでロコルお姉ちゃんは苦しんでいるの?
俺とロコルお姉ちゃんの視線が交差する。
酷く苦しそうなはずのお姉ちゃんは優しく微笑む。
その笑顔が遠く懐かしい記憶と嫌なほど重なる。
そして何かを口ずさむ。
それはほんの一瞬の出来事。
でも、俺にはひどく脳裏に焼き付いた。
さようなら
そう言ったのかもしれない。
問い返したくても、お姉ちゃんは支えを無くしたように崩れ落ちた。
いやだ、もうあんな思いは嫌だ!
そして、俺の額は想いに呼応するように眩く輝き始める。
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