説明2割と豚の謀略8割
豚がお家に帰り、トーラスさんにこの王都での聖女としての過ごし方を教えてもらう。
ただ貴族との会合や王族との謁見が本来ならあるけど、なんと嬉しいことに平民だったおかげで接触禁止令が出ている。
それ以外だと、半年に一度だけ王都周辺の町村をまわって行き治療をする巡礼。およそ二月かけて行うとのこと。聖女への敬意や信仰心を高めるのが目的らしい。
でも、その巡礼は行うとしても一ヶ月先になってからである。
つまり現在、この教会内でやることはないらしい。
「ん?教会に治療しに来る人とかはいないのですか?」
「回復魔法を使えるのは王国内では貴方様お一人です。ここにはお祈りに来る人がほとんどです。」
「でしたら、私がここにいる事を王都全域に伝えれば治療に来るのでは?」
すると、トーラスさんが渋い顔をする。
「そうなんです。本来なら聖女様が現れた場合、ですが‥」
「もしかして、あの司教様がなにか?上に上手く伝えると仰られてましたけど‥」
「はい‥。聖女様は顔に酷い傷があり人前に出るのを強く拒んでいると伝える予定だそうです。」
ん?
俺にはなんでも治す回復魔法があるのに無理やりじゃない?
「あの、私には聖女の力である回復魔法があるのです。自分の顔の傷も治せると思いますが?」
「この国では何十年も聖女様が誕生なされなかったのです。ですから、その聖女様の御力がどれほどのものか把握出来てないのです。」
エルドさんが横から口を挟む。
そっか、聖女の力が回復魔法と分かっててもどれくらいの規模まで治せるか分からない。
それで本人は顔に傷があって人と会いたくないと。
色々無理のある計画だけど、しばらくは気楽にやれると思えばいいか。
「分かりました。ですが、一ヶ月先にある各地をまわる巡礼はどうなさるつもりですか?」
また暗い顔をするトーラスさん。
「その、ピグオッグ司教は巡礼をさせたら嘘がばれてしまうから行かせるなと。」
「はあ!?」
エルドさんが半ばキレたように声を荒げる。
「なんと愚かなことを‥。私がすぐにでもその馬鹿な嘘を伝えてきましょう。」
「エルド殿、あの方は貴族の中でも上流貴族の侯爵です。貴方の主張は揉み消されるでしょう。以前の司教様と同じように‥」
「なっ‥」
エルドさんは呆気にとられ肩を落とす。
貴族には嫌な奴が多いって爺ちゃんが言ってたけど、あの豚は典型的な嫌な貴族か。
「では、私が直接王城に出向きましょうか?」
なら聖女本人が出向けば良いだけじゃん。
「聖女様それも無理だと思います。王族や貴族の方々はまだ貴方様の御尊顔を知りません。門前払いをくらうか、拘束される可能性もあります。」
「そうですね、下手したらあの男が門番に手を回しているかもしれませんね。」
これは現状打つ手がないと。
「今は様子を見るしか出来ないですね。私も知り合いの貴族に相談してみようと思います。」
エルドさんはフンスと鼻息荒く決意を述べる。
俺は暇になるな。
「私はこの教会内で引きこもっていた方がよろしいのでしょうか?初めての王都で少し散策もしたいのですが‥」
「あの方の考えではなるべく部屋に篭って頂きたいでしょうが、助祭を1人付ける形でなら問題ないかと。」
よし、保護者の許可が貰えた!
「共に付ける助祭は準備しておきましょう。」
「トーラスさん、ありがとうございます。」
こうして、説明会は終了。
トーラスさんの最後まで疲れ切った申し訳なさそうな表情が印象的でした。
嫌な上司を持つと大変だね。
俺は与えられた部屋で運ばれてきた食事を済ませて、今日はもうお休み。
明日は散策の御共になる助祭の紹介。
そしていよいよ王都散策だ。
ちなみにエルドさんは憤慨しきった状態で教会を飛び出していきました。
多分、知り合いという貴族に突撃しに行くんでしょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます