暇を持て余した聖女様2日目


思わぬ突発的な聖女活動をした1日目が終わり、本日2日目。

今日の夜には人口たった俺一人の村に着くだろう。


昨日お世話になった村を出る。

結局、最後まで感謝の言葉を貰い続けた。

村の人達は姿が見えなくなるまでずっと手を振ってくれた。

それだけ喜んでもらえたならやった甲斐があったもんだ。


馬車の旅は続く。

エルドさんが昨日の俺の治療姿を熱く語る。真の聖女の御姿を見れた、私は後世に語り継ごうとか訳が分からない。隣のカーラさんもなんか頷いてるし。


ただの恩返しに何を見たんだろう?



聖女の力は本当に万能だった。使用後の疲れもない。強いて言えば額が光って目立つぐらいだ。

この世界には聖女の力以外で回復魔法はない。傷は布を巻くか、糸で縫う。病気は薬草を煎じて飲ますぐらいだ。

だから、エルドさんはこれほどまでに聖女を信仰しているのかもしれない。


朝方出発して今はお昼。


馬車を止めて昼食中。パンと干し肉と果実水。


「このような物しかお出し出来ず申し訳ございません。」


ん?

俺が普段食べてるのと遜色ないけど。

むしろ、パンはこっちの方が美味しいくらい。

なんで毎回申し訳なさそうにしているの?


「えっ、美味しいよ!」


感想を伝えても恐縮してる。

俺は貴族じゃなくてただの村娘だよ。不満なんて全くないよ。

言葉では伝わらなさそうなので、笑顔でバクバク美味しそうに食べてやる。

なんで感極まったような顔してんだよ。意味わかんないよ。



もういい出発。



馬車移動を始めて俺の村まであと1、2時間。

そんな時に馬車は急停止。

突然のことにエルドさんは困惑してる。

カーラさんはすぐに状況を把握したのか腰に携えた剣に手を添える。


うん、魔物に囲まれてるね。

こちらはカーラさんを含む騎士5人に対してあっちは気配から感じるのはおよそ30体くらいかな。

すぐにでも飛び出そうとしているな。


「エルド様と聖女様は中でお待ちくださいませ。我々がすぐに対処いたしますので。」


カーラさんはそのまま馬車から降りて行く。

いいな、俺も降りて戦いたい。でも、騎士の仕事を奪ったら不味いよな。

やばくなったら、参戦しよ。


それまで観戦するか。


「せ、聖女様はお落ち着いてらっしゃいますね。」


「ん、ええ、以前も言ったですけど村では魔物との戦闘は日常茶飯事だから。」


「そ、そうですか‥。」


エルドさん顔を青いなあ。

しゃーない元気づけてやるか。

震えるエルドさんの手をそっと触れ励ます。


「大丈夫。お‥私が必ず守るです。なんたって聖女は助けを求める人の味方だからね。」


片目を閉じて戯けたように笑ってみせる。

一瞬呆けた顔をするエルドさんは目を閉じて祈りを捧げ始めた。何故か俺に。

ま、まあ落ち着いたんだろう。


さて、戦闘はどうなったかな。


騎士一人にオークとゴブリン5、6体が相手ね。

うーん、攻撃を防ぐのが精一杯って感じかぁ。攻め手に欠けてるね。いずれ均衡は崩れるぞ。

しかも、奥に他の緑色のオークとは違う赤色のオークがいる。強さも持っている得物も他のオークよりも優れている。


うん、これは参加するか。文句は後で聞こう。

死人が出るよりかはマシだろう。


俺は馬車のドアに手をかける。

「聖女様、外は危険です。」


「うん、でもね。このままじゃ負けるよ。見て、徐々に騎士達も捌き切れなくて怪我をし始めてる。だから、行く。」


「で、ですが‥」


最後までは言わせない。


「大丈夫。俺は強いからさ。」



馬車から降りるとまずは近くのカーラさん。

俺が降りたことに気づいたカーラさん驚いている。

他の騎士達も気付いたね。


「どうして降りてきたんですか!危険です!すぐにお戻りください!」


オークとゴブリンの追撃をかわしながら、必死に怒鳴るように声を上げる。

文句は後々。

とりあえずカーラさんに微笑みかけて、すぐそばの魔物達に急接近。


近付いた俺に反応し棍棒を振り下ろすオーク。

躱して振り下ろされた腕を折ったついでに踏み台に背後へ。そのままオークの首に両腕をまわしてポキっとへし折る。

動揺しながらも剣を振り回してくるゴブリン達。死体を投げ当てて、近付いてその鼻っ面を容赦なく蹴り折る。


残り10体くらいまで減らしたら、お楽しみの赤色オークに行こうっと。



よしよし、減った減った。

驚きに満ち溢れているサイルさん達にここは任せよう。


「サイルさん、残りのオーク達はよろしくです。お‥私はあそこの赤いのやってきます!では。」


「え?え?あ、はい。」


そして、さっきまでニタニタと余裕そうだったのに焦っているね、赤いの。

そんなガチガチじゃ俺の相手は務まらないよ。




「こんにちは、赤色さん。さあ、楽しもうぜ。」




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