豚司教に教育を

トーテル発お家行き



12の年に、洗礼式で聖女に認定された。


俺に拝み倒してた司祭のおっさんは、洗礼式の後に奥の部屋まで案内してくれる。

どうやら今後のことについて説明してくれるらしい。

聖女になったら、今まで通りとは行かないわな。

ソファに座り、出された高そうな紅茶を飲む。うん、美味い。

さてさて説明を聞くか。


「それではこれからの流れを説明させて頂きます。私は司祭のエルドです。」


うーん、堅っ苦しい。

てか、俺も敬語を使った方がいいよね。

爺ちゃんから教わってないよ。


「えーと、よろしく‥願います。」


我ながら下手くそな敬語もどき。

『です、ます』を使えばなんとかなるの精神で押し切ろう。



「ふふ、敬語は不慣れなようですね。はい、ではまずご家族の方に説明も兼ねて一度帰宅して下さいませ。そして、聖女としての生活はこの教会ではなく、王都の教会にて過ごして頂きます。」


王都かぁ。

爺ちゃんにも連れて行ってもらったことがない。

結構楽しみ。爺ちゃんみたいに強い奴とか居るかな。


「分かったです。」


「では、ご両親は今どちらに?一人で来られたならお送りさせて頂きます。」


「え、いいよ‥あ、いいです。遠くの村から一人で来たんで‥。」


「え?12歳の子供を1人で?町の外は魔物がうろついて危険なのに?」


思わず素の口調になるエルドさん。


「あの、お‥私の両親はもういないので今は一人で暮らしているです。」


「そ、それは失礼いたしました。しかし、よくご無事にここまで辿り着きましたね。」


「ここらへんに大した魔物は居ないから全然平気だよ‥です。来る時も倒しながら来たし。」


あれ?

なんかエルドさんが目を見開いて驚いている。


「倒しながらですか‥。俄かには信じられませんね。やはりお送りさせて下さい。もし聖女様の身に何かあってはいけませんので。」


あんまり信じてもらえていない?

この町の子供は魔物と戦わないのか?


これ以上断ってもしつこそうだし、素直にお願いしよう。



エルドさんから明日の朝、村まで送ってもらうことになった。

結局、今後についての細かな説明も村に着くまでの間に教えてもらうことに。



宿屋まで送るという御誘いは断り、宿屋に到着。

せっかく3日分支払ったのに1日だけ。

でも、宿屋の主人に事情を伝えたら2日分のお金を返して貰った。

ただその分浮いたお金で食事を注文しまくったから、結局その2日分の代金は溶けて無くなった。

村での生活と違ってお金がかかる。主に食費で。



お腹が満たされて、良い感じに眠気も来ている。

もう部屋で寝るか。

ここの宿屋に風呂は無いので、布を水で濡らして身体を拭く。

少しさっぱりして床についた。



明日は馬車で村に帰る。


初めての馬車。

ちょっとわくわくする。

それでも容赦ない眠気が夢の中へと引き摺り込んで行った。



朝、宿屋の主人に別れを告げて教会へ。


教会の門の前には馬車と数人の人影が。

もっと近くになると、馬車の周りの人達が鮮明に見え出した。

1人は昨日の司祭のエルドさん。残りの5人は全身を甲冑や軽鎧などで武装している。騎士かな?



「これは聖女様おはようございます。」


「おはよう‥でございます。」


エルドさんは真っ先に俺に気づき、声をかけてきた。

騎士達も声に反応して全員がこっちを向く。


「あの、この人達は?」


「聖女様、この者達はトーテルの領主様が派遣して下さった騎士の方々です。道中、聖女様を守って下さいます。」


別に自衛は出来るけど‥。

昨日今日で護衛を用意するってそれだけ聖女様ってのは重要なんだな。

甲冑を纏った騎士の1人が近づいて来た。

無精ひげを蓄えたこの人がリーダー格かな。他の騎士より明らかに見た目年齢高めだし。



「これは稀代の聖女様。お目にかかれて誠に光栄でございます。私はサイルと申します。道中、魔物達に指一本触れさせませんのでご安心を」


「あ、ありがとう‥ございます。」


娘か孫を見るような目で優しく告げるサイルさん。

聖女でしかも子供が1人で遠い村に帰らせるのは余程心配のようだ。

騎士同士での打ち合わせに余念がない。



そして、初めての馬車に乗車。

同乗するエルドさんが手を差し伸べてくる。

俺はその手を握り無事乗車。


以外に狭い。

俺とエルドさん、そして念の為にと女騎士のカーラさんの3人だけでもう座れる場所がいっぱいだ。

エルドさんは申し訳なさそうに小型の馬車しか無かったと教えてくれる。


問題ないよ。

俺ちっちゃいから窮屈じゃないよ。


少しでも大丈夫と伝えるため、笑顔を振りまく。

ただ馬車が揺れるたびにお尻に来る衝撃が凄い。隣に座るカーラさんも若干辛そう。

これに普段から乗っている貴族って凄いな、もしかしたらお尻が鉄で出来ているのかもしれない。



そんな馬鹿なことを考えながら、馬車は俺の住む村に向かうのでした。









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