突っ込む立てこもり犯と説得刑事さん

@shingo1878

第1話

ここは都心にほぼ近い駅前のビルのファミリーレストラン。一人の男が刃物を持って立てこもっているという通報を受け早30分。現場では立てこもり犯と刑事が話し続けていた。




「はものを捨てて投降しなさい!」


「刑事に言われて投降する馬鹿がどこにいるんだよ!」


さあこっちには人質もいるんだ。とりあえず金と車かな・・・と考えていると、刑事がハッとした顔をする。


「冬に白菜が1000円とかしたのはお前が立てこもってたからだな!!許さんぞ!」


「漢字違いじゃねえかよ!刃物だよ!!なんの通報聞いてきてるんだよ!」




なぜ俺が突っ込まねばならぬ。イラついてガラスを破り上から提灯やらお酒やら食べ物やら落としてやる。これで俺の怖さが分かったはず・・・


「あ!あれは有名な魔王じゃないか!こっちにも森伊蔵が落ちてるぞ!拾うなよ!証拠品だからな!」


ウキウキ顔で刑事が酒を集めている。いやなんでやねん!もっと驚けや。




「山田君・・・ちょーっと中に毒が入っているかもしれないねえ。署に帰ったら味見をしないとねえ・・・」


「分かってますとも・・・おつまみ買っておきますね」グフフフフフ・・・


「さあ犯人!!さっさと署に帰らなければならぬ!その辺でやめにしよう!!あ、お酒あったら落としてね」


完全に酒盛りする気じゃねえかよ!状況分かってんのかこやつら!




「車と金だ!人質殺すぞ!」


人質に刃物を突き付ける・・・あれこの女どこかで?


「やっと気が付いたのね元彼さん」


この声。この状況でも冷静な感じ。間違いなく元カノであった。最悪うううう!気まずい!!!!


「ほらもっと首筋ぎりぎりに包丁立てないと!ここよここ!!」


いやもうそれどころじゃないんだけど・・・様々な別れまでの思い出が蘇って・・・もう立てこもるの辞めよっかな。うんそうしよ。そうしよう。


「あー!!!もう!!!!昔からあんたは大事な所で怖気づく!!!貸して!」


えっと思った時には包丁が突き付けられていた。いやなんで?




「ほらあ!!!この男の命は私のものよ!!!3億と逃走用の車用意しなさい!!30分以内ね!!!」


えーー入れ替わってる?前前前世から僕は~♪って違うわ!私危機!こっちは犯人になった元カノ!ってやかましいわ!


「お!30分なら2次会までできちゃうじゃーん!山田君!おつまみ追加で!」


いや説得頑張れよ!こっちは命の危機だよ!元カノに脅されてるんやぞ!




「魔王はあげるけど森伊蔵は返しなさい。私も飲みたいもの」


途端に刑事の眼に炎が宿る。いやいや最初から頑張れよ


「出来ない!!3億は用意している!!落ち着いて話し合おう!!!」


「話し合いなんでもうしたでしょ!!本当にこの男やっちまうわよ!!」


指先が切られ、赤く滲む。


「痛い!痛い!痛い!刑事さん助けて!!!森伊蔵は諦めて!!ね!」




「いやだー!いやだーいやだー!」


子どものように駄々をこねる刑事さん。いや誰この役立たず連れてきたの。交渉向いて無くね?マジで。


「じゃあ金持ってこいや!!!6億よ!!5分以内よ!!!!」


めちゃめちゃ跳ねあがてるやん・・・完璧な立てこもり犯や・・・


「分かった」キリッ




キリッじゃねえよ!俺を早く助けてくれーーーーー!!!


元立てこもり犯の願いは届くのか。そして元カノと再び付き合うことになるのか。


真実はいつも1つ!(違う)

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