第4話 なぜ部室に鍵が?2
「何を言ってるんだい太一。」
と驚いたような、焦った顔で慎吾が言う。だが、こいつは本当に気が付いていないのか。
「掃除が終わって、社会科室から入るとするだろ。そうして部室に入っていちいち鍵を閉めるか?」
確かに…という顔で考える慎吾。今社会科室の鍵しかないので、出入りは社会科室に通じるあの扉だけであったはずだ。それなのにその扉が閉まっていたのはおかしいのではないか。
そして俺は部長に尋ねる。
「芳香剤良い匂いですね。」
「去年から使っているんだ。もうほとんど匂いがしないけど。部室に匂いがしみ込んだのかな?」
と言い、にっこりと笑う。笑ってはいるが目の奥が笑っていないような、そんな表情を浮かべながら。慎吾がなぜ今芳香剤の話を・・・?と不思議に思ったところで俺は部長にこう尋ねる。
「密室は体に悪いですよ。」
部長は驚いたような顔をした。そのあと目を細め、口元が三日月型になる。今までの芝居がかった笑みとは違う、本当の表情だった。
「もう辞めたさ。しかし癖でね。」
「金曜日からよろしくお願いしますよ。部長。」
こちらから視線を外し、外を見る部長。そして小さな声で呟いた。
「君のように察しが良い、新入部員は嫌いだね。」
その表情は今までの大人びた表情とは違い、明日遠足に行くような、そんな少女のような可憐でキラキラした笑みだった。
慎吾の肩を押しながら部室を出ていく。
「ほら行くぞ。失礼しました。」
そしてこちらには振り向かずに手を振る部長。そして社会科準備室の鍵を閉めたところで慎吾が興味津々という顔でこちらを向く。歩きながら今回の結末を話す事にしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます