第2話 部室に行こう

 入部届を出しに行く途中、吹奏楽の音が聞こえる。聞こえてくるのは何の曲か分からないが、とても華やかな曲である。新入生歓迎会でもやっているのであろうか。などと考えながら職員室を目指す。


 この学校、白天高校は総生徒役1000人のかなり大きな学校である。校舎は2つあり渡り廊下でつながっている。職員室や家庭科室、パソコン室などは違う校舎にあり、教室からは渡り廊下を渡らないといけないのが難点である。そして、部活動が沢山あり、文化祭や体育祭に関しては1週間前から準備の時間がとられるほどの力の入れようなのだが、進学校として名前が通っている。不思議なものである。


 渡り廊下を渡り目的地の職員室に着いた。とりあえず入部届を顧問である義理の姉こと渡辺先生に渡し、今日は終わりである。


「失礼します」


 職員室を見渡すと簡単に見付けることができた。そこまで連れだって歩いていくと声を掛けられた。


「よう!太一君!君が入部届を持ってくるのを待っていたよ!」


 この人こそがお義姉さんこと渡辺エリカ先生である。生徒からはえりちゃんなどとは呼ばれず、渡辺先生と呼ばれる所にもこの人の凄さがにじみ出ている。


 そして目線は後ろの慎吾へと移る。


「君が太一の数少ない友達くんか!」


 ここは我慢である。先生ではなかったらどうしてやろうか…と考えていると、慎吾と話していた渡辺先生が「あー!」と声をあげる。


「部の印が無いじゃないか!これだと受理できないから、部室に行ってサクッと押しておいでよ!」


「わかりました!」


 完璧な営業スマイルで慎吾が答える。さすが内申点で手堅く高校合格しただけの男だとついにやけてしまう。


「とりあえず部室には部長が居るはずだから…ってあれ?鍵があるじゃないか。部長帰ったのか?」


目線の先を追うと確かに社会科準備室の鍵が掛かっている。


「まあいいや、とりあえずはんこ押して戻ってきてね!部長の机の引き出しに入ってるから。」




 というわけで社会科準備室の鍵を手にいれ、またもや渡り廊下を戻り、4階まで上がった。そして社会科準備室を見つけ、試しに横に引いてみる。やはり鍵は掛かっている。そして鍵を使い扉を開けると、予想に反して先客の姿があった。


 夕日が差し込み、そよ風がたなびく中、その人は外をぼんやりと眺めていた。そして長い髪がゆっくりとたなびき、こちらへと顔を向ける。その優雅で上品な動きに対してつい足を止めてしまう。そして目が合う。男二人が入部するのには十分すぎる理由であった。

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