第4話 俺の幼馴染と後輩との出会い

「2人は生徒会に入る前から、翔君とは知り合いなんだよね?」




お菓子とお茶で会話も弾み、いつの間にか俺と友人2人の関係の話になっていった。




「はい、俺はこいつと幼馴染です。幼稚園からの付き合いですね」




孝之との付き合いは長い。小中高と続く長い幼馴染だ。




「僕は2人よりは少し短いです。中学生になる少し前くらいなので、3年くらいです」




幸助はある日とある出来事がきっかけで知り合いになった。




「そういえば、いまさらなんですけど、九十九パイセンと翔って、どういう関係なんですかね?」




「あ、それは僕も思いました。翔君と元会長先輩って、ちょっと関係が近いですよね」




優希先輩との出会いもちょっと不思議である。俺の運命を変えた出会いでもあった。




「そうだね~。会長を中心に皆が知り合ってるんだったら、親交を深める意味もこめてみんなで話をしよっか?」




優希先輩の提案で、最後に親睦会となった。




なんか真理亜がいないと、話がスムーズだな。真理亜が突っ込みをしてるから、常識人枠に見えるが、あいつが意外と場をかき乱しているのではないか?






「俺は対してないですよ。ただの腐れ縁ってやつです」




「まぁ気づいたら一緒にいたって感じなので、エピソードは無いですね」




よくある付き合いが、ただ非常に長く続いただけのこと。仲良くなったのもなんとなく気があったからというだけで、本当に何もない。




「僕は結構いい出会いをしてますよ!」




「お? 聞かせて聞かせて」




孝之との話が早々に終わってしまい、ちょっとつまらなそうにしていた優希先輩が、幸助の挙手に少し興味ありげに身を乗り出す。




「えーとですね。翔先輩は僕のはじめての人なんです」




「それじゃ説明が足りないな。俺も話します」




「そ、そうお願いね」




いきなりの大胆発言に優希先輩が驚いていたが、俺の言葉で落ち着きを取り戻す。




「あれは3年前だったと思うんですけど」




俺が幸助と出会ったのは、中学生に上がった頃である。




幸助とは学区がわずかに異なり、小学校が一緒ではなかったのだが、中学が一緒になったためだ。




中学校1年生の始業式。特に何も考えずにゆっくり帰路につこうとしたときに、幸助と出会った。




その見た目は可憐で、当時は女性に縁があるとかないではなく、興味を持つ余裕が無かった俺にとっては、衝撃を受けた。




ただし、その着ている制服は、間違いなく男子生徒のものであった。




「あの……、僕の顔に何かついてます?」




間違いなく女子だと思った。だが、男子制服を着ているのはなぜか? 俺はふとそう思った。




「……男?」




俺は『男の制服?』と疑問に思ったのだが、ほんのわずかに言葉がこぼれてしまい、『男』の部分だけ口に出してしまった。




「……! はい! 分かりますか!?」




俺がそう言うと、喜んで手を握ってきた。いや、手もスベスベだし、いい香りがなぜかするし。それに、俺は分かってない。




「皆ひどいんですよ。男の子の制服を着てるのに、みんなで、僕のことを女子だって言ってきて、失礼ですよね」




「あ、ああひどい話だ」




いまさら間違えてました! とも言えず、話を合わせることになった。




その一件から、幸助は俺を慕ってくれるようになった。まさに偶然である。




幸助は、見た目が女子っぽいが、れっきとした男なので、男子人気も女子人気も高いのだが、誰一人として、男扱いをしてくることは無かったらしい。




見た目は本当に女なので、ちょっとした仕草が女の子に見えるため、男子の目の保養となる。女子としては、可愛い男の子で、無害に見えるし、男子のことで相談があるときに話しかけやすい。




幸助は普通に男なので、男子からそう言う目で見られるものイヤであり、女子から、気軽に相談を受けること事態もあまりよくは思っていないようだったので、俺のような相手との付き合いが新鮮だったらしく、学年は違うが、毎日のように会っていた。




孝之も、胸のない(あるわけがないが)幸助と女性として見ることは比較的少なかった(ないわけではない。俺もそうだし)ので、比較的友好関係を築くことができた。




ただ、幸助と孝之はそれでいいのだが、俺は一見女子に見える幸助に、時々ドキドキしてしまったりする。




間違いなく男ではあるのだろうが、小柄な体格で、上目遣いだったり、頬を染めている仕草には、よくやられそうになる。




そして、俺の家が貧乏であることを知って、よく差し入れをくれるようになったので、学校外でも付き合いが深くなり、高校にも着いてきてくれたというわけである。




俺のライフラインとして、幸助からの差し入れは大きいものである。




ただ、その俺に差し入れをくれるきっかけになったのは、俺が幸助を男として見たからであり、間違っても、幸助に時々どきどきしていることを悟られてはいけないという、微妙な生殺しを受けていた。




ちなみに、ある程度付き合いができてから、幸助に出会いのときに、勘違いをしていたことを謝罪したが、それはただのきっかけで、その後ちゃんと友好関係があるということで許してもらえた。本当に優しくていい後輩なのである。




優希先輩と出会っていなければ、本当に今頃危なかったかもしれない。




「堀田君、可愛いもんね」




「だから嬉しくないんですよ」




俺の時々思ってしまう幸助への、ドキドキは隠して、説明すると、優希先輩も顔を縦にふる。




「さてと、みんなのおかげで早く終わったし、今日はもう帰ろっか?」




「え、翔と九十九パイセンの話は?」




「え~、聞きたい?」




「聞きたいですね。ただ俺の予想では出会ったのは中学2年生の冬だと思いますが」




「なんでそう思うのかな~?」




「こいつが急に成績を上げたのがその後からだからですよ」




「ご名答かな。じゃあ私の話もしよっか」




そして優希先輩と俺の出会いを2人に話す。

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